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皆様ご機嫌いかがでしょうか。
7月11日(土)に開幕したサッカー明治安田生命J1リーグ2ndステージ開幕戦。
その中で、等々力競技場で行われた川崎フロンターレとFC東京の「多摩川クラシコ」は川崎Fが後半、エウシーニョとレナトのブラジル人コンビがそれぞれ得点を挙げ、さらに攻守の切り替えと球際でFC東京を圧倒し、終わってみれば2-0で川崎Fが完勝。
5月、アウェーの味の素スタジアムで1-2で敗れたリベンジを達成しました。

◯上手く守られた前半

前半はFC東京ペースでした。
石川直宏と前田遼一の2トップが川崎Fの最終ラインにプレスを掛けて、中盤から後ろは相手からのボールを中に入れさせないように距離感を保ちながら、特に3ボランチの羽生直剛、梶山陽平、米本拓司は上手くスライドして徹底的に川崎Fに中への侵入を許さない構えで来たので、川崎Fは横と後ろにボールを動かさざるを得ない展開となり、横パスやバックパスの乱れからボールを奪われてピンチを招く場面を多く招きました。

個人的には正直前半の内に川崎Fは先制されるのではないか。それくらいFC東京に上手く守られて速攻に繋げられ、川崎Fは攻めあぐねている印象でした。
川崎Fのシュートも前半は全てミドルシュートで、ペナルティエリア内を崩してフィニッシュという形すら許してくれませんでした。


◯横の揺さぶりと中盤の数的優位でFC東京の守備網を破壊

後半になると様相は一変します。
上手く距離感を保ちながらスライドしてくるFC東京に対して川崎Fは焦れずに横を広く使いながら相手を揺さぶって相手の距離感を少しずつ広げていきます。

ただでさえ中盤に負荷が掛かる守り方で且つ、ボールを動かすのが上手い川崎F相手に、FC東京の中盤3人の、スタミナ低下も影響したか正しい距離感が保てなくなり、スライドも遅くなってきました。

前半、谷口彰悟と横並びになっていた大島僚太が位置取りを高くした事で、相手の3枚の中盤に対してエウシーニョ、大島、中村憲剛、レナトの4枚で対抗でき、数的優位になったのも要因でした(こういう時に谷口が中盤の底で余ってくれるのは攻守両面で助かるんだよなあ…)。

そうなると前半に殆ど入れられなかった縦パスが何本も入り始め、川崎Fの一方的なペースになります。
そして生まれたエウシーニョの先制点。

小宮山尊信の左サイドからの低いクロスを、自身の右側に重心が掛かっていたキーパー権田修一の左側にアウトサイドでボールを浮かせてのエウシーニョのフィニッシュも技ありで素晴らしかったのですが、フィニッシュに至るまで自陣からキーパーを除いた選手全員がボール回しに、柏レイソルの吉田達磨監督の言葉を拝借するなら「参加」して外中横縦と自在にボールを動かしながら相手を動かしてゴールまで迫る形は川崎Fらしかったなと思います。

◯カウンターが生んだレナトのFK弾

FC東京は東慶悟→バーンズへのスイッチで前を3枚にし、前掛かりの姿勢を取り始めました。但し、FC東京は得点を欲しがって全体が前に掛かった時、1stステージの浦和レッズ戦や昨シーズン味スタで行われた多摩川クラシコを思い起こして頂きたいのですが、立て続けに失点を重ねてしまいます。

それは何故かと言うとボールを持った時に「味方しか見ていない」からです。
味方しか見ていない、見えていないから不用意に目の前の味方に出したボールが相手に引っかかってカウンターを許すのです(ポポヴィッチ監督時代に一体選手達は何を学んだのでしょうか…)。

更に現在はFC東京の絶対エースで「困った時の預けどころ」だった武藤嘉紀が海外移籍でチームを離れてしまった為、やはりボールを持った時に「どうしよう?」と選手達は迷いながらプレーしているようにも見えたので、いくら前掛かりになっても、川崎Fが切り替えの早さと球際の強さで圧倒したのも要因でしたが全く怖さを感じませんでした。
「危ない!」と感じたのは川崎Fのミスによるものだけでした。

ですから川崎Fはカウンターで幾度もチャンスを作る事が出来ました。
74分のレナトのFKによる追加点は自陣でのボールカットから始まり、レナト得意のドリブルで相手のDF吉本一謙のファールを誘った事で生まれたものでした。
正直、カウンターからもう2、3点は取れたと思います。カウンターで決定機を多く作りながら「2-0で終わってしまった」ので、前掛かりになったFC東京の「息の根を止められなかった」のは個人的には残念でした。もっと速さと正確性を求めていかなければいけないなと思います。

◯切り替えの早さと球際の強さでも圧倒

川崎Fはボールを持った時も相手を圧倒しましたが、FC東京ボールになった時も相手を圧倒しました。

まず、奪われた時の切り替えの早さ。
インターナショナルマッチウィークによるリーグ戦中断以前は相手ボールになった時には自陣で1度ブロックを作る守り方でしたが、中断以降は奪われた瞬間にボール保持者を対してアプローチし高い位置でボールを奪う守り方に変わりました。
更に球際も激しく行くようになり、ファールを恐れず相手にガツンと行くようになりました。

早くなった切り替えと激しくなった球際は、ドルトムント戦の大敗を経て更に早さと強度が増し、それを試合終了まで持続出来たのは多摩川クラシコ勝利の要因として欠かせない部分ではあります。
僕は2点目を奪って以降も切り替えの早さと球際の強度が持続出来てるなと感じた時、川崎Fの勝利を9分9厘確信しました。

◯武岡、圧巻の対人守備

川崎Fの守備の強度を語る上では、やはり武岡優斗の存在は外せないなと思います。

昨シーズンの終盤からスタメンに定着した武岡の武器は何と言っても1対1の守備の強さです。
とは言っても、守備時の1対1の強さが元々の武器だった訳ではありません。サガン鳥栖や横浜FCに所属していた時は右のサイドハーフが主戦場でしたので、どちらかというと武岡は「攻撃の選手」でした。

それが昨年川崎Fに加入し、なかなか試合に出られなかった状況の中、紅白戦でレナトと沢山対峙した中で1対1の対人守備が鍛えられ、昨シーズン終盤の鹿島アントラーズ戦にスタメン起用されてからは完全に3バックの右として不動のスタメンとなり(今回は4バックの右サイドバックでしたが)、8月に中国で行われる東アジアカップの日本代表予備登録メンバーに選出されるまで評価を高めてきました。

武岡の対人守備で上手いのは相手が仕掛けた瞬間にスッと身体を入れたり足を出すタイミングの良さでしょう。
タイミングが良いからこそノーファールで相手を封殺する事が出来ます。
あとボールに対する出足も早いですし身体も強いです。
今回の多摩川クラシコでも前田や東、太田宏介に殆ど何もさせませんでしたし、途中投入されたテクニックのあるU-22日本代表の中島翔哉にも何もさせませんでした。
そんな彼のディフェンスを見て僕は思わず「凄えな…」とつぶやいてしまいました。

1対1のディフェンスを「凄い!」と感じさせてくれる日本人は浦和レッズの槙野智章と、そして武岡の2人だけだと個人的には思います。
あと武岡は対人守備以外、例えばクロスの対応だったりカバーリングといった所が更にレベルアップすれば、「日本代表候補」ではなく「日本代表の正式メンバー」として選出される日も遠くないでしょう。


以上です。
川崎Fは特に後半、攻守においてFC東京を圧倒し、1stステージのリベンジを果たしました。
しかし選手達もコメントしていたように「ドルトムント相手だったら仕留められていた」シーンがあったのも事実です。
選手達のコメントを見ると、ドルトムント戦の大敗がポジティブな意味でチームに大きな影響が出ているなというのが分かります。
風間八宏監督は常に「『これでいい』というものはない」と仰っていますが、選手達はもちろんサポーターも含めた我々観戦者も目の前の勝利だけに満足して「これでいい」と思うのではなく、常に「ドルトムントの残像」を意識して高いものを求めていきたいですね。

次節のサガン鳥栖戦はタイプ的にはドルトムント同様「ボールを持たないで相手を攻撃する」チームなので、ドルトムント戦で体感した事を活かすには絶好の相手だと思います。
ドルトムントの早く且つ連動したプレスを体感したのですから鳥栖のプレスに簡単に捕まるようではお話になりません。簡単に外して貰わなければ困ります。

一方のFC東京は、武藤が抜けた穴はたった数週間では埋まりません。
そもそも武藤云々というよりは「想定外」が起きた時に、マッシモ・フィッカデンティ監督の「指示待ち」ではなく選手達自身で対処する事が出来ないのと、ボールを持った時に味方しか見ていないのが根本的なチームの問題だと思うので、自分達で状況に合わせる事、そして相手を見てボールを動かす事が出来れば良い方向に変わるとは思うのですが、バーンズやサンダサを入れたって事は結局「中を固めて攻撃は個人頼みのサッカー」になっちゃうんだろうなあ…。それでチームの成長に繋がるのでしょうか…。

次節はホーム味の素スタジアムにアルビレックス新潟を迎えますが、中3日で劇的に変化する事はないと思いますので今いる戦力で「どう点を取るか」「相手を見ながら」「選手達で最適解を見つけて欲しい」と思います。

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