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11月3日(木)、全試合13:30に一斉キックオフされた明治安田生命J1リーグ2ndステージの最終節、等々力競技場で行われた年間2位の川崎フロンターレと年間5位のガンバ大阪のゲームは、立ち上がりから川崎F期待の若手コンビ、長谷川竜也と、先日U-19アジア選手権を制した日本代表メンバーの三好康児のゴールで立て続けに2点を奪うも3点目がなかなか奪えず。そんな中で後半守り方を立ち位置を修正したガンバが藤春廣輝と井手口陽介の立て続けのゴールで追いつき、残り14分にアデミウソンがミドルを突き刺してガンバが逆転。
結局2-3でガンバが逆転勝ちを収め、川崎Fの年間首位フィニッシュの可能性は潰えました。


◯長谷川竜也、三好康児という「可能性」

川崎Fとガンバのゲームは60分、つまり後半15分あたりまでは川崎Fの一方的なペースでした。縦横中外と自由自在にボールを動かしてガンバの守備陣に全く的を絞らせず、幾度もビッグチャンスを作り続けました。
守備でも高い位置でボールを回収して再び押し込む。相手にゴールに迫られても谷口彰悟が的確なコース切りとチャレンジのタイミングでピンチを防ぐなど、やることなす事全てが上手くいきました。
おそらく今シーズンで一番の出来ではなかったかと思います。

その中で特に光ったのが先制点となるリーグ戦初ゴールを挙げた長谷川竜也と、追加点を挙げたバーレーン帰りの三好康児でしょう。
ガンバの守備陣に臆する事無く持ち前のボールスキルで相手を手玉に取り、ゴール前に侵入し続ける彼らのプレーは実に爽快でした。

シーズン当初から彼らのプレーから「遠慮」という2文字は存在していませんでしたが、どこか空回りしていた印象が否めませんでした。
しかし年間首位フィニッシュが掛かった大一番で終始強気なプレーを披露し、得点という分かりやすい結果を叩き出した事は、この後のチャンピオンシップに向けて、そして今後の川崎Fのチームとしての、間違いなく大きな「可能性」となるでしょう。
この先の天皇杯、そしてチャンピオンシップでこの若武者2人がどんなプレーを見せてくれるか、今から楽しみです。


◯久々に輝きを放った大久保嘉人

ガンバ戦でもう1人輝きを放ったのは大久保嘉人でした。

相手ディフェンスの間で縦パスを受けてキープしてはたいて前に走り出すという大久保が得意とするパターンが多く見られ、オーバーヘッドキック、ミドルシュートと、久々に何度も決定機に絡むプレーが見られました。

今シーズン、大久保は4年連続の得点王こそ逃したもののチームトップタイの15得点を挙げました。
ただ大久保としては今シーズンは不満を募らせながらプレーをしていた事が多かったシーズンでした。

その要因としては、簡単に言えば縦方向のパスが少なくなった事です。

先述の通り、大久保は下がって相手ディフェンスの間でボールを受けてからキープしてはたいて前に走り出す、あるいはキープして相手を剥がしてミドルシュートを放つというプレースタイルの選手です。且つ彼はボールを奪われない自信があり、実際にキープ力が高いのでマークされていても「俺に出せ‼︎」と要求します。

実際昨シーズンまではボールを持ったらまず大久保を見て、大久保にボールを当てていました。
ただ今シーズンはチーム全体のボールスキルが高まったのと見える景色が広くなった影響か、大久保が欲しいタイミングでボールが出てこない。つまり横方向のパスが1本余計に出る事が多くなりました。
マッチデープログラムのインタビューでも「パスを繋げるようになった分、中盤はボールにたくさん触れますけど、自分としては引いて組み立ててDFを置き去りにして出て行くプレーが得意なので、もっとリスクを負って前に出して欲しいなというのはあります」と話していましたが、これはシーズン中、大久保自身がずっと言い続けて来た事です。

自分が欲しいタイミングでボールが出て来ない。ゴールパターンもワンタッチゴールが多い。それでもチームは勝てている。チームの躍進と自分自身のパフォーマンスが一致しない、川崎F加入以降1番もどかしいシーズンを大久保は送って来たと思います。

しかしガンバ戦、否、その前の鹿島戦あたりから大久保にボールがよく集まるようになり、それによって大久保のパフォーマンスも上がり、決定機に絡むシーンが増えて来ました。

今後天皇杯やチャンピオンシップで大久保にどれだけボールが集まるか、やはりそれが大久保が得点を挙げる為の鍵になってくる筈です。


◯ズバリとハマった長谷川采配

この試合、前述の通りガンバが2-3で逆転勝利を収めましたが、この試合では長谷川健太監督の采配が冴えました。

まず、序盤で2失点を喫してから、トップ下の遠藤保仁をアンカーに置いて大久保を監視する役割を与えつつ、ボールを持った時には中盤でゲームを落ち着かせる役割を与え、今野泰幸と井手口陽介を中村憲剛とエドゥアルド・ネットにマンマーク気味に付かせました。

次に、負傷の影響もあったのかもしれませんが、最終ラインで長谷川や三好の対応に後手に回っていた岩下敬輔を前半終了間際にベンチに下げて阿部浩之を投入し、今野をセンターバック、ボランチを遠藤と井手口、トップ下に倉田秋、両サイドに阿部、大森晃太郎という配置に変更し、今野の巧妙なラインコントロールと、ポジションをカバーしてくれる遠藤と、運動量豊富な倉田が真ん中に配置された事で前からボールを奪いに行く長所が生き始めた井手口の中盤での潰しで徐々に川崎Fの光を消していきました。

更に負傷の大森をベンチに下げて、呉屋大翔を投入。呉屋を最前線に置いてファーストディフェンダーとしてフォワチェックを仕掛けさせると共に、相手の背中を狙う動きの連続で川崎Fの最終ラインを攻撃する事で川崎Fと最終ラインと中盤の距離間を広げ、そのギャップにアデミウソンが顔を出すという形を作り出した事、そしてトップ下の倉田を左に配置し、倉田と藤春廣輝という攻撃色の強い2人を左サイドから攻めさせる事で、川崎Fの田坂祐介とエウシーニョの右サイドコンビを自陣に張り付けにさせた事で形勢を逆転し、立て続けに3点を奪う事に成功しました。

確かに川崎Fが3点目を取れるチャンスを幾度も逃した事も痛かったのですが、人と配置の変更で川崎Fの光を徐々に消し、形勢を逆転させた長谷川監督の采配、そしてその采配に応えたガンバの選手達は見事だったと思います。

◯悩めるドリブラー・中野嘉大

一方、川崎Fの風間八宏監督は流れを変えようと森谷賢太郎、中野嘉大、森本貴幸の3人を投入しましたが、3人ともうまくゲームに入れず、むしろ川崎Fのサッカーのテンポを遅くさせてしまいました。

特にスタジアムで観ていて、中野はかなり深刻だなと感じました。
前節の鹿島アントラーズ戦、前々節のサンフレッチェ広島戦では相手に引っかかっても勝負しようという意思が見えたのですが、ガンバ戦での中野はボールを受けるのを怖がっていて、ボールを受ける時も、次のプレーイメージを持ちながら受けるのではなく、受けたくないと思いながら受けて、受けてから次のプレーを考えていたのでガンバのディフェンス陣に何度も引っかかってはカウンターを許してしまいました。

自分もサッカーをやっていた時に経験がありますが、自分自身の心理状態がマイナスの時はミスを怖がってボールを受けたがらなくなるものです。
その中でボールを受けても、「受けたくない」と思いながらボールを受ける形になり、受けてから次のプレーを考える為、次のプレーへの移行が遅くなり、その間に相手ディフェンスにボールを奪われてしまいます。
そういった経験が自分にもあるので中野が消極的なミス、風間監督が言う所の「頭のミス」を繰り返す時の心理状態が理解出来ます。
ですが、川崎Fのサッカーは1人が試合を怖がるとサッカーが成立しません。すぐに自信を取り戻すのは正直難しいのは身に染みて分かる事ではありますが、まずは中野にはプレーの積極性を取り戻す為にも「挑む」という姿勢だけは最後まで持ってもらいたいなと思います。


◯目的は年間1位になる事ではなくチャンピオンシップを制する事

という事で川崎Fは年間勝点72というクラブ史上最高の勝点を挙げながら年間1位でチャンピオンシップに臨む事は叶いませんでした。

確かにリーグ戦全34節でリーグ優勝を決める形式であれば、内容がどうあれ、最終節の結果は受け入れ難いものです。

しかし2ステージ制で、1stステージ王者、2ndステージ王者、年間1位から3位までがチャンピオンシップに出場出来るというレギュレーションにおいて川崎Fは年間2位でチャンピオンシップ進出を決めているのです。

要はチャンピオンシップで優勝するのが真の目的ではありませんか。

個人的には2ステージ制+チャンピオンシップという地上波テレビ向けのレギュレーションは嫌いです。全34節を終えて1番上に立っているチームがチャンピオンだという考えは変わりません。
ですけれども現状そのレギュレーションの中でチャンピオンシップに進出しているのですから、その恩恵を最大限に活かして、1番上に立てば良いだけなのです。

この最大のチャンスを生かすか殺すかは川崎Fの手の中にあります。
まずは11月23日(水)、鹿島アントラーズ戦での勝利を期待したいです。

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