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皆様ごきげんいかがでしょうか。

3月18日(土)の19:00に東京・調布の味の素スタジアムで、明治安田生命J1リーグ第4節、FC東京と川崎フロンターレの「多摩川クラシコ」が行われます。

数えて29回目となる今年の多摩川クラシコは、特に川崎Fのファン、サポーターにとっては特別なのではないか思います。

2013年から昨シーズンまで川崎Fに所属し、2013年から2015年までに掛けて3年連続単独得点王という、クラブ史上、Jリーグ史上に残る大偉業を達成し、現在J1リーグ通算最多得点保持者(171得点)である大久保嘉人が、FC東京のプレーヤーとして川崎Fのプレーヤーの前に立ちはだかるからです。

今回は大久保嘉人にフォーカスした記事を書いてみたいと思います。

◯「終わった選手」から「川崎Fのレジェンド」に

大久保が川崎Fに加入したのは2013年、それまで所属していたヴィッセル神戸での4シーズンで2桁得点を挙げられず(最前線で起用されなかったり、怪我で出場機会を伸ばせなかったという要素もありました)、フロンターレのファンやサポーターの間でも「昔は点取ってたけど今全然じゃん。そんな奴獲ってどうすんのよ?」など、「終わった選手」という声が多かった中での加入でした。

加入当初こそ当時の指揮官風間八宏監督の独特の指導を持ち前のフットボールIQとボールスキルの高さで素早く理解しながらも、中盤や左サイドに配置されるなど、大久保起用の最適解をチームで探していた中で1得点しか挙げられなかった状況でしたが、ベガルタ仙台戦で最前線に起用されてからは得点を量産。最終的には26得点を挙げ、自身初のJ1リーグ得点王に輝きました。

更に2014年には18得点を挙げ史上初のJ1リーグ2年連続単独得点王に、2015年には23得点を挙げ、前人未踏の3年連続J1リーグ得点王という大偉業を成し遂げました。

昨年こそ4年連続得点王獲得は逃しましたが、それでもチームトップタイの15得点を挙げ、川崎Fの攻撃の軸として君臨してきました。

そして川崎F在籍時に、ブラジルワールドカップに出場する日本代表のメンバーに選出され3試合中2試合にスタメンフル出場。
更にはJ1通算得点数を171まで伸ばし、三浦知良や中山雅史を超えるJ1最多得点記録保持者となりました。

また、記録だけでなく記憶に残るゴールも多く挙げて来ました。
亡くなった父親に捧げた2013年5月のセレッソ大阪戦の2ゴール。
大熱狂の等々力劇場を生み出した2013年10月のジュビロ磐田戦、2014年5月のガンバ大阪戦、2016年4月のサガン鳥栖戦。
リーグ戦未勝利の嫌な流れを払拭する2ゴールを挙げた2014年3月のFC東京戦。
複数本パスを繋いでゴールに結びつけた2014年3月、2015年9月の名古屋グランパス戦。
2014年9月、出場停止明けの大宮アルディージャ戦で挙げたハットトリック。2015年5月、J1通算得点で三浦知良を超える140得点を挙げカズダンスを披露したFC東京戦。
あり得ない曲がり方のミドルシュートを突き刺した2015年10月のサンフレッチェ広島戦。
前人未踏の3年連続得点王を確定させた2015年11月のベガルタ仙台戦でのミドルシュート。

挙げだしたらキリがないくらい、思い出に残るゴールを多く決め、川崎フロンターレのファン、サポーターを熱狂させてきました。

Jリーグ史上に残り記録を残し、ファン、サポーターの記憶に残るゴールを決めてきた大久保は、まさに川崎Fの「レジェンド」と言っても過言ではありません。

◯「フリーの定義」の違いに苦しんでいる最中

今年、大久保は川崎フロンターレからFC東京に移籍しました。

「もう終わった選手」と言われながら加入した川崎F時代とは違い、3年連続得点王、J1通算最多得点記録保持者という大きな実績を引っさげての加入です。

ただ、3月11日(土)に吹田スタジアムで行われたJ1リーグ第3節のガンバ大阪戦を見た印象だと、大久保が欲しいタイミングでボールが貰えてないなというのを強く感じました。

その根本的な要因としては大久保と他の選手達の「フリーの定義」の違いだと個人的には思います。

以前、川崎Fの小林悠と大島僚太が日本代表のメンバーに選出された時に、川崎Fの「フリーの定義」について触れた記事を書きました。

改めて説明すると、一般的な「フリー」というのは周りに敵がいない状況を指します。
確かに間違いではありません。
ただ川崎Fの中での「フリー」というのは相手のマークが付いていても重心移動の逆側、もっと分かりやすく言えば「矢印の逆側」を取ってしまえば相手のマークを外して「フリー」になります(ちなみに風間八宏監督が就任したばかりの名古屋グランパスの「フリーの定義」も川崎Fと同じです)。

風間前監督が叩き込んで浸透した川崎Fの「フリーの定義」の中でサッカーをしてきた大久保にとって、自分が一瞬の動きで相手の矢印の逆を突いているのに、ボールが出て来ない現状にフラストレーションが溜まるのは無理もありません。

更にFC東京の選手達は「遠くが見えていない」のもまた問題で、近くの味方を探してサッカーをしているので、大久保の一瞬の動き出しが見えていません。
あとFC東京の選手達の殆どがワントラップで次に蹴りやすい場所にボールを置けていないので無駄なボールタッチが入ってしまう分パスを出すまでに時間が掛かり、大久保が絶好のタイミングで動き出しても欲しいタイミングでボールが出て来ません。

まだシーズンは始まったばかりなので全員が大久保の「常識」を理解して合わせる事と、ボールスキルを高める努力をすれば解決する可能性はあると思いますが(むしろFC東京の選手全員が大久保の基準に合わせてサッカーが出来れば手が付けられなくなると思います)、大久保自身も想像した以上の噛み合わなさだったのではないのかなと思います。


◯「暴走」した次の試合の大久保嘉人は「結果」を出す。

前述の要素、そして自身のPK失敗、好機逸もあってか、試合後に整列してサポーターに挨拶した直後、ユニフォームをピッチに脱ぎ捨て、脱ぎ捨てたユニフォームを足蹴にしてしまいました。

この行為にはFC東京のファン、サポーターは当然の事ながら、他チームのサポーター、そして古巣の川崎Fのファン、サポーターから多くの非難の声が上がりました。

ただ川崎F時代の大久保を見て来た人間から言わせれば「暴走」した次の試合の大久保嘉人は「結果」を出します。

2014年8月の名古屋戦でピッチサイドの広告看板を蹴り壊して2試合出場停止してからの復帰となった2014年9月の大宮戦ではハットトリックを達成し、横浜F・マリノス戦で退場による出場停止明けの2015年11月のベガルタ仙台戦では自身の3年連続得点王を決めるミドルシュートを突き刺し、昨年9月には大宮戦で相手に頭突きして退場した次のゲームとなった天皇杯のジェフ千葉戦で2ゴールを決めてきました。

それを見ているだけに愚行を「結果」で払拭してきた大久保は川崎Fからすれば最も怖い存在だというのを誰もが分かっています。

更に大久保は古巣戦でゴールを決める事が多い選手ですし、川崎F自体が伝統的に恩返し弾を喰らいやすいチームなので、やはり大久保は最も警戒しなければいけない選手である事に変わりはありません。


以上です。
勿論川崎Fには勝って欲しいですが、正直言えば大久保にゴールを決められたら勝敗や試合展開がどうあれ、僕はスタジアムで拍手を贈ろうと決めています。
かつてペルージャやローマのティフォージ(サポーター)が、それぞれ自チームに所属していた時に、記憶に残るゴールを決めてきた中田英寿に対して大きな拍手を贈ってきたように…。