もうしばらく前になってしまうが、縁があってエコピックなるもののサンプルをありがたいことに各種頂いた。
ギターって楽器はこだわる部分が多くて、それがエレキギターともなるとピックアップ、アッセンブリ、エフェクター、ケーブル、電源、アンプまでにわたる。
中でも弦やピックは直接手で触れる部分だ。
「全くこだわってない」という事が、あたかも歴史上の偉大な海外大物ギタリストのようなワイルドさと天賦の才がなす豪快かつ繊細な妙技を俺も持ってるぜと言わんばかりのカッコつけでもない限り、大抵の人は程度や時期にもよるがこだわってきた(こだわっている)はず。
誰かの真似して1セントコインで弾こうものならこりゃあもうクロだね。
かくいう僕もピックは気にする。
ギターを始めたときからトライアングルやオニギリはあからさまに弾きにくかった。
ティアドロップのそれも先の尖ったポールギルバートモデルがあからさまに弾きやすかった。
ここで言う弾きやすい、とは個人によっても異なるが、演奏スタイルにもよるだろう。
僕が10代の頃は、フルピッキングでの速弾きに挑戦したガキどもが多い。
もちろん前述のポールさんの影響も大きい。
その少し後にはジョンペトルーシの影響でジャズ型のピック(彼はジム・ダンロップのJazzⅢという小さくて分厚いモデル)を使う人間も増えた。
僕も未だにレコーディングでとりわけ速くて複雑なパッセージを録るときはこのピックを使う事もある。
イングヴェイの真似して分厚くて先が丸い、少し大きめのティアドロップを使った人はみんな弾きづらい、と言ってた気がする。これは手の小さな日本人には合っていないんだろう。
イングヴェイの場合、ストラトのきらびやかなトーンを残しつつ、ヴァイオリンのような滑らかな音の輪郭を狙ってのこともあるだろうが。
つまり、このようなスタイルのテクニカルなジャンルを弾く日本人の人口が、日本のピックのマーケットのラインナップにもたらした影響は大きいと思う。
そんな中、僕はと言えばあるこだわりを持ってピックを選んでいる。
上述のような細かな速いパッセージをオーバードライブに満たないクランチで弾くことや、中指、薬指を使ったカントリーでよく使われるチキンピッキング、全指を軽く畳んで(裏券を繰り出す前のような)のカッティング。
この3種類のプレイにバランスよく対応するピックを常に選んで使っている。
だいたいいつも「少し大きめなジャズ型のナイロンの0.88mm」になる。
大きすぎると速いパッセージでダイナミクスをつけにくい。
小さすぎるとカッティングで指が弦にあたるし、アコギ弾くときはうっかり弦の張力に負けてサウンドホールの中へピックが消えてしまう。
プラスチックは手になじむし音もいいが、1曲も弾けば毛羽立ってゴミ箱行き。
やむなく手になじみにくいしアタックも多少ぼやけるが、減りにくいナイロンを。
それらを少しでも和らげるために1.0mmではなく0.88mmを。
こんな感じである種妥協しながら十数年使ってきた。
そこでエコピックを試してみた。
数ヶ月にわたり、色んな場所で色んなギター(ロック、アコースティック、ゴスペル、レギュラー、ダウンチューニング、etc)で弾いてきた。
とても良い。
JAZZの0.88mmはラインナップにはないとの事だが、発注も出来るとの事。
ただ、僕はJAZZの1.0mmでベストだった。
今まで探しても無かったちょうどいい大きさ。
素材にはペットボトルと同じものが使われているらしいが、
厚みがあってもプラスチックやナイロンと違い、人間的に?音楽的に?とにかく絶妙なしなりがあるので、弦をヒットしたときの音のレスポンスと薄っぺらくないアタックの両立ができる。
これは今までに無い一番の功績のような気がする。
もちろん波形解析した訳ではないので想像の話だが、アタックの音が聴き手の人間的に気持ちいい奇数倍音が豊富に出ている気がする。ギタリスト的な間隔で言うと、おおよそ2~3kHz以降に規則的な山があって、音に艶と輪郭が出て、抜けの良い音に聴こえる。
それでいて水っぽい感じは無く、乾いた音のまま艶と輪郭が出る。
僕は地球規模で見ても少数派で、偶数倍音の出ている音が好みだし、艶のある音は好きじゃないが、このピックを使うと単純に弾いてても聴いてても気持ちいい。
持ちの良さは
ナイロン>>エコピック>>>>>>>>プラスチック
って感じ。
十分。
あくまでピックという製品の性能の良さで海外での評価も高いこのエコピック。
ピック選びで「ある程度の妥協」という、長年の十字架をおろせたのは僕も同じです。