そもそも、シェリー酒って何なの?? | シェリー酒・ワイン 元ソムリエのひとりごと

シェリー酒・ワイン 元ソムリエのひとりごと

高級ホテルで8年間ソムリエをしていました。
飲食のうんちく、ノウハウをつぶやいています。

こんにちは!
木村 聡仁です。



今日は、シェリー酒って何なの?
というお話をさせて頂きます^^


シェリー酒、、、、

名前くらいは、一度は耳にされたことが
あるのではないでしょうか?



食前酒にはドライシェリー
魚料理には白ワイン
肉料理には赤ワイン

戦後、洋食文化の流入の際、
このような公式が伝わったのですね。



今では、

「食前酒といえばシャンパン」のほうが
メジャーでしょうか^^


でも、

当時この法則にのっとって、
レストランを利用されていた
ご年配のお客様などは、

今でも食前酒には、
シェリーを注文される方が多いですね。


食前酒として有名なお酒が、
シェリー酒というわけです。



さて、話を戻します^^

シェリー酒とは一言で言いますと、

「ワイン」です。

リキュールやスピリッツ(=蒸留酒)
と思われていることも多いみたいですが、

れっきとしたワインなのです。



ただ、ワインの中でも、
特殊なカテゴリーのものになります。


酒精強化ワイン
(またはフォーティファイドワイン)


というものです^^



あまり聞き慣れない言葉ですね。



これは、ワインの発酵途中、
もしくは発酵後に、

高アルコール度の蒸留酒を加えて、
少しアルコール度を高めたワインのことです。



つまり、シェリー酒というワインは
普通のワインに比べて、
アルコール度数が高いワインなのです^^



通常のワインはだいたい、
12~15度くらいのものが多いですが、
シェリー酒は15~22度くらいになります。




シェリー酒は

スペインのアンダルシア地方
(フラメンコも有名ですね^^)
で作られるワインです。

シェリー=ワインということは、

原料は??


そう、ブドウですね^^



使用が認められているのは、
3種類の白ブドウです。


①パロミノ
②モスカテル
③ペドロ ヒメネス


①は辛口専用、
②③は主に甘口専用です。



ここでまた一つ疑問が出てきます。

「シェリー酒って辛口じゃないの??」

そうですよね^^



この疑問を持たれた方は、
最初に私が話したことを、
よく覚えてらっしゃる、

素晴らしい記憶力の方です^^


『シェリーは食前酒』


食前酒に飲むくらいですので、
辛口のイメージですよね。


でも、実は辛口~極甘口まで、
とてもたくさんの種類があります。



シェリー酒の種類としては
以下のようなものがあります。



<辛口>
フィノ
マンサニーリャ(マンサニージャ)
アモンティリャード(アモンティジャード)
オロロソ
パロ コルタド

<半甘口~甘口>
ミディアム
ペイル クリーム
クリーム

<極甘口>
モスカテル
ペドロ ヒメネス



これらの種類を、
たくさんのシェリーメーカーが造っており、

メーカーごとに味わいも違うので、
実に多種多様なシェリーが
存在することになります。

それだけ多くあると、
自分好みの1本を探し出す
楽しみがありますよね^^


ここまでお読み頂いた方、
勘の鋭い方は次のような疑問も
わいてらっしゃるかもしれませんね。


「スペインのワインなのに、
シェリーって英語やん??」

はい、その通りです!!
素晴らしい!!



シェリーは英語で、
表記は「sherry」です。

シェリーはスペイン語では、
ヘレス(Jerez)といいます。

フランス語ではケレス(Xérès)です。

でも、シェリーという名前は
聞いたことがあっても、

ヘレスやケレスなんて呼び名、
あまり聞かないですよね。




これには理由があります。

3つの名前は全て、
ある一つの言葉から派生したものです。


それは「シェリシュ」。

シェリーを生産する地域は、
ヘレスというところなのですが、

14世紀頃、この地域は、
シェリシュと呼ばれていました。

そして、そこで作られたワインも、
当然、呼び名は「シェリシュ」


それがヨーロッパ各国に
広まっていく時(輸入された際)に、

それぞれの国の呼び名に
変化していったのです。



イギリスではシェリシュ→シェリー
スペインではシェリシュ→へレス
フランスではシェリシュ→ケレス

つまり、3つの呼び名で、
ヨーロッパに広まったんですね。




では、なぜシェリーという呼び名だけが
圧倒的に有名なのでしょうか?

それは、

シェリーをこよなく愛したイギリス人が、
世界中どこへ行くのにも、
シェリーを持って行ったからです。

シェリーがヨーロッパを出て
世界中に広まったのは、

イギリス人の功績が大きいと
言えるかもしれませんね。


皮肉にも、自国のワインが
ヘレスという名前ではなく、

シェリーという名前で
世界に広まってしまった現実は、
スペインも無視できないものでした。



あるブランドを守るためには、

この「名前=呼称」というのは
非常に大きな意味を持ちます。



例えば、シャンパーニュ。

フランスのシャンパーニュ地方で
造られたスパークリングワインは、

そう呼ばなければならないことが
法律で決められています。

日本語のシャンパンですとか、
英語のシャンペンという呼び名は
正式に認められていない呼び名になります。

そうすることで、
シャンパーニュというブランドを
保護しているのですね。


同じように、スペインも
この自国の文化である
「ヘレス」のワインブランドを、

ヘレスという名前で
保護したかったのですが、

さきほど話しましたように、

イギリス人のおかげで、
あまりにもシェリーという名前で
世界中で広まってしまったため、

もうええわ、

ヘレス、ケレス、シェリーという
3つの名前で呼んでええわ

ってことに、しちゃったんですね^^



でも実は、
その方が都合が良かったんですね。


だって、あまり広まってない
「ヘレス」の名前だけよりは、

既に有名になっている
「シェリー」という名前も使った方が、
世界中で売れるんですから^^


ただし、これはスペインの
ヘレスの酒精強化ワインについて
認められている名前であって、

その他の国や地域で
同じような味のワインを造ったからといって、

シェリーという名前で販売すると、
これはアウトです。

あくまで、スペインのこのワインの呼び名が
3種類認められているという話ですね。


長々と書いてきましたが、

①シェリー酒はスペインの酒精強化ワイン
②辛口から甘口まで多種多様
③へレス、ケレス、シェリーという3つの呼び名がある


この3つを知って頂ければ幸いです。

次回はシェリー酒の造り方を
お話したいと思います。


最後まで読んでくださって
本当にありがとうございました。