Suchmos「THE BAY」 | Rotten Apple

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[Japan,Rock/Soul/Jazz]

01.YMM
02.GAGA
03.Miree
04.GIRL feat. 呂布
05.Get Lady
06.Burn
07.S.G.S
08.Armstrong
09.Alright
10.Fallin'
11.Pacific
12.Miree (BAY Ver.)


時代の音と呼ばれるものがあるとするなら、神奈川の6人組Suchmos(サチモス)の1stアルバム「THE BAY」はまさに2015年という時代に求められた音だ。メディアで特集が組まれるほど大きな波となった "20代がつくる新しい音楽" の中でもっともアルバムが待たれていた存在といっても過言ではない。D'AngeloJamiroquaiJ Dillaに心奪われ、アーバンソウルやアシッドジャズを開かれたポップスとして落とし込んだこのアルバムはあまりにも素晴らしい。

彼らの素晴らしさを知るには先行公開されていた「YMM」や、デビューEP「Essence」収録の「Miree」「Fallin'」を聞いてもらうのが早いだろう。Yonceの華のある艶やかでクールな歌声、グルーヴィーなサウンドにスパイス的に入ってくるスクラッチは極上だ。
バンド名の由来となったLouis Armstrongをタイトルに冠したアッパーな「Armstrong」や、ズットズレテルズの呂布をフィーチャーしたメロウな「GIRL」、ディストーションギターとスクラッチの応酬が印象的な「Burn」のミクスチャー感などサウンド面で非の打ちどころがない。

という感じでどうしてもサウンド面をフィーチャーしたくなるけれど、バッドボーイ的反骨精神が表に出ているところが彼らの持ち味でもある。
"金は全能か? 無職はゴミか?" "戦争は儲かるか?平和はゴミか?" という痛烈な歌詞が印象的な「Alright」。そして茅ヶ崎を歌ったラストチューン「Pacific」での、"SNSよりBeachで 愛の言霊をささやいて" "CityなんかよりTownだろ 日に焼けた肌で歌うんだろ" なんて歌詞は、ある種の東京コンプレックスや郊外ならではの仲間意識、なんちゃらシティポップだなんて訳のわからないカテゴライズに対する思いもあるのかもしれない。

確かに、自分たちが良いと思っているサウンドを作っているだけなのに、世代やトレンドで括られてしまうのは不本意だろう。ただ残念なことに本人たちが望もうが望むまいが、もう時代の行く末は彼らの手に握られてしまった。Awesome City ClubCICADAnever young beachD.A.N.Lucky Tapes…そしてSuchmos。2015年デビュー組だけでもこれだけの才能が現れた。もしこれらのバンドを聞いていないとしたら、その入口としてSuchmosのアルバムは最適だ。"20代がつくる新しい音楽" が日本のヒットチャートになだれ込むのもそう遠い話ではない。