ill.bell「教育現場」 | Rotten Apple

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[Japan,HipHop]

01.Ring a bell
02.ありがとうPTA
03.ロウガイ延命措置 (extended)
04.Audience Unplugged
05.welcome 2 my room (おいでませ視聴覚準備室)
06.Run and Gun
07.interlude (センター試験2015英語筆記 第1問 発音・アクセント)
08.教育現場
09.レトリドール・ラブラバー
10.ユーユアユーユアーズ feat.Sarahpyon
11.Now thinking [K's×bell Cover]
12.るる溢るる
13.outro
14.私立ネップ高校3年2組 feat.トップハムハット狂、ytr、タイツォン、ブルスコファー薺、アリレム、Romonosov?、司芭扶、雨天決行、あるきょー、らっぷびと、妖狐、抹


ネットラップ初期より活動するill.bell (イルベル) が2ndアルバムをリリース。彼は現役の高校教師として働いていることでも知られている。公務員は副業が禁止されているため、廃盤となっていた1stアルバム「bellz monologue」の再販も出来なかったがそれをどうにかクリアし、1stアルバムの再販そして2ndアルバムのリリースが実現した。いかにもネットラップらしく、夏コミでの販売、そしてメロンブックスとらのあなの委託販売でリリース。
英語教師という職を活かしたバイリンガルで押韻主義なファストラップは健在。恐らく日本初 (?) の現役教師によるヒップホップアルバムということで、タイトル通り "教育現場" そして "ネットラップ現場" がテーマとなっている。

"教育現場" な曲から聞いていくと、「くたばれPTA」のアンサー「ありがとうPTA」なんて曲はそちら側にいるからこそ書ける曲だ。前作に引き続き起用のNovoiskiによる「教育現場」や「welcome 2 my room」ではまるで生徒を "ネットラップ現場" へと誘い出すようなメッセージを込める。ネットラップに限らず若い子の夢や才能をサポートするというメッセージは進路指導的なコンセプトだったりするのかもしれない。
"ネットラップ現場" では最古参となったことを自覚して若手とリスナーを煽る「ロウガイ延命措置」、「Run and Gun」は「Ki-SS」を彷彿とさせる爽快なロックチューンで初期ファンをくすぐる。そして雨天決行含め活動が止まってしまった仲間たちへのエールを込めた「Now thinking」には涙腺を刺激される ("「遊び」だったのかい 「たかがRAP」かい お前の居る世界 「リアル優先」かい?" "叶うことの無かったお前の夢まで含めて叫んでるよ")。語尾を統一して美しいピアノへ乗せた「るる溢るる」を経て、ネットラップ初期オールスターな「私立ネットラップ高校3年2組」でアルバムを締める。ネットラップという狭いシーンにとってフィジカルのリリースは祭りのようなものだ。

日付を見てびっくりしたんだけど「bellz monologue」は2010年リリースだった。そうかもうネットラップを聞き始めて5年以上経っているのか。ただの聞き手ながらシーンに少し愛着のようなものが生まれてきた。当時フィジカルリリースしていたのはらっぷびとぐらいだったけれど、ネットラップ発で重要な存在となったラッパーが多数生まれたのは本当にうれしいことだ。以前から数々の才能を目にした身としては評価されて当たり前だという気持ちもある。
ただ今やその最前線にいる彼らがレペゼンどこでもないと言ったのは少なからずショックを受けた。出来ればそこはレペゼンネットラップと大手メディアで言って欲しかったのが正直なところ (彼らがそういうキャラではないのを踏まえても)。
しかしill.bellならネットラップ現場をレペゼンしてくれるはずだ。本業との兼ね合いからクラブでの活動や頻繁なリリースは出来ない。だからこそネットラップという現場が成り立つし、現場主義の文化からはこんなアルバム出てこないだろう。現場に出てこないワックなやつらだと切り捨てたがったネットラップはまだくたばらない。