17歳とベルリンの壁「Aspect」 | Rotten Apple

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[Japan,Shoegaze/DreamPop]

01.千日
02.話す卵
03.27時
04.ライラック
05.六月
06.終日


じわじわと盛り上がり始めているように感じる国内シューゲイズシーン。がっつりマイブラなシューゲイズという訳ではなくて、他ジャンルとのクロスオーバーによってポップネスを獲得したバンドが増えていて、さらに女性ボーカル (混声ボーカル) というのもキーになっている。特にCattle溶けない名前me in grasshopper辺りの名前はよく目にするし、スプリットやイベントなど交流もあるようなのでもしかしたらもう "ジャパン・シューゲイザー第三世代" のようなシーンになりつつあるのかもしれない。
その背景にはここ数年のトレンドだったチルウェイヴ以降のドリームポップや、先駆けだったきのこ帝国SUPERCARへの再評価など様々な要素が絡んでくるのかもしれない。ただそういったバンドが表に出てきたのは、シューゲイズ×ポップというコンセプトでリリースを続けていたきいろれこーずや、ディストロサイトHOLIDAY! RECORDSの影響も少なからずありそうだ。

そのきいろれこーずHOLIDAY! RECORDSと縁もある17歳とベルリンの壁は混声ボーカルのシューゲイズ/ドリームポップバンド。彼らの1stミニアルバム「Aspect」は、とても冷たいアルバムだなと感じた。低体温なボーカルが乗るキャッチーなメロディとそれを包むような轟音サウンド。何もかも拒絶するような歌詞といつの間にか包まれてしまう音の波は、本当に聞いていると寒気がしてきて感傷的な気分になってくる。
me in grasshopperとのスプリットにも収録されていた「千日」や、タイトルからしてインディポップな「ライラック」など、曲の始まりから徐々に音の波に包まれていく感覚は何とも言えない。その中でも「六月」は終盤に向かうにつれ加速していく音と少し温度を持ち始めた歌が印象的。続く「終日」のキャッチーさからは感傷に浸ることを諦めたかのような清々しさを感じる。

冷たいアルバムだとは感じつつも、ポップスとしての完成度が非常に高く、驚くほど聞きやすい。シューゲイズとポップスの真ん中に位置する絶妙なバランスは安易なカテゴライズを拒むような雰囲気すらある。シューゲイズ云々ではなく邦楽ロックのスタンダードを目指しているのかもしれない。
といった感じで様々な一面 (Aspect) を見つけ出したくなる素晴らしいアルバムだ。何にせよこの手のバンドは生で轟音を浴びてこそなので早いところ福岡に来て欲しい…。