校庭カメラガール「Leningrad Loud Girlz」 | Rotten Apple

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[Japan,Electronic/HipHop/Other]

01.iuM
02.Star flat Wonder Last
03.Trip with Mr.Sadness
04.TOKYO Terror
05.Last Glasgow
06.Post office Crusher
07.Tomorrow girl Secret
08.Lough Ma Fleur
09.Lost in Sequence


やっぱり校庭カメラガールの登場は事件だった。メンバー2人を加えて新体制となったコウテカ今年2枚目のアルバム「Leningrad Loud Girlz」が凄まじすぎる。前作「Ghost Cat」のレビューで "これまでのアイドルラップをすべて過去に変える" 存在だと書いたけれど、なんとかアイドルでカテゴライズされる今のシーンをすべて過去にしてしまう勢いすら感じる。こんなアルバムをリアルタイムで聞けていることがうれしくてしょうがない。

まるで物語のプロローグのように歌とポエトリーで静かに始まり、終盤には轟音で満たされる「iuM」。ギターループが耳に残る「Star flat Wonder Last」は、雑多なカテゴライズを蹴散らす彼女たちの勝利宣言とも感じ取れるセルフボースト (Puppet Rapper路線かなと)。ライブでは新たなアンセムと化しているアニソン的ドラマティックな打ち曲「Trip with Mr.Sadness」など、序盤はバンドサウンドを大きくフィーチャー。

そしてクラブミュージック的サウンドを強めた中盤が本当に素晴らしい。前作のテーマが新しいアイドルラップの提示ならば、今回の標的はエレクトロ系アイドルなのかもしれない。
フューチャーハウス×ヒップホップな「TOKYO Terror」がとにかくやばすぎる。歌サビとドロップの2段構成ヒップホップなんて今まで聞いたことない。大ネタだらけの歌詞をあえて最先端のビートに乗せるセンスにも脱帽 ("誰のせい? 君のせいよ ハマっちゃってる フェイクなフェイト 毎日磨くスニーカーと自撮り 平日もヒロインよりどりみどり 眠らない トーキョー トーキョー")。
ドラムンベースに掛け合いファストラップを乗せる「Last Glasgow」、くらっしゃーで踏み続けるテクニカルさを押し出したと思えば中盤の茶番で台無しにする「Post office Crusher」、PC Music周辺で盛り上がっているバブルガムベースを取り入れた「Tomorrow girl Secret」の中盤4曲で、本当にこれまでのエレクトロ系アイドルを過去のものにしてしまった。
フューチャーハウスに関してはStereo Tokyoが先に取り入れていたけれど、やはりどこかオマージュ的な面が強い。EDMアイドルを挑発しつつ、トレンドを取り入れてさらに次を提示するコウテカの底知れなさが恐ろしい ("EDMピンキリ サイズ間違えたピンキーリング ~ まとめてお仕置きするこのバース 勘繰っちゃうの自信ない証拠 言いたいことある? はいどーぞ")。

終盤は序盤とのリンクでエピローグな雰囲気。冬の情緒溢れるバラード「Lough Ma Fleur」と、少しの憂いを感じながら前に進むような「Lost in Sequence」でアルバムを締める。
メンバーの個性まではあまり把握できていないけれど、しゅがしゅ ららの甘い逆スパイスがガチガチに完成されたビートを良い意味でゆるめてくれるし、ライブでのましゅり どますてぃの暴れ馬っぷりが期待できるアッパーチューンも多い。このアルバムにおいて唯一残念なところがあるとすれば彼女の脱退が決まってしまっているということくらいだ。

ざっと書いたので思ったよりも長くなってしまった。「Leningrad Loud Girlz」は最先端のサウンドを提示しポップスとしての完成度も保たれた、2015年でもっとも素晴らしいアルバムだ。2015年のベストアルバム候補でもあった前作ですらこのアルバムのあとでは古く感じてしまう。もうアイドルラップ云々でコウテカを語る人はいなくなるのかもしれない。コウテカはヒップホップでもクラブミュージックでもアイドルでもない。カテゴライズされることを拒み形を変え続ける、新しい、何かだ。

「Leningrad Loud Girlz」Trailer
「Leningrad Loud Girlz」 Lyrics
Marunouchi Muzik Magazine「DISC REVIEW + INTERVIEW」