ヤメテエエェェェェエエエエ!!



硬いベッドで医者、ナース部隊で押し付けられる。


ほんま無理やって、そんなん入るわけないって!!


途端に、鋭利な痛みがアソコを駆け巡った。



ギャアアアアアアア!!!



うーわ、痛っそ、みたいな顔で見守る親父。


そして間髪入れず二発目。



ヒギイイイイイイイイイイイ!!


念入りに角度を変えて一物にバッスバッス麻酔は刺されていく。


痛くないようにする為、超絶痛い箇所に、超絶痛い太い針が刺される。


あぁ、なんという矛盾だろう。




もう、どうにでもしてくれ・・・・


もはや、まな板の上の鯉。


そして、何発刺されただろうか・・・・・。


すべての抵抗をやめ、放心状態で寝そべる自分に医者が声をかけた。



『ほら、見てみカラス君。』



死んだ魚のような目で医者を眺める。



『ほらほら、海坊主みたいになってるやろw』


『・・・・何が?』



早速麻酔が効いてきたのか、顔を少しでも上げるのもダルい。



『あんま見れるもんじゃないから、ほらw』



なんなんだ、この医者のテンション。


面倒くさそうに、上半身を起こすと、本当にそこに海坊主がいた。


え?・・・・・


いつも見慣れていた【たけのこの里】のような息子は、

パッツンパッツンに腫れすぎて、もはや別人になっていた。



本当にこれが俺の息子か?



なんと表現するのが一番妥当なのか、




男の中心でアイを叫ぶ


例えるなら、ウナコーワのこのキャラクターがしっくりくる。


ウナちゃんは悲しそうに泣いていた。


麻酔針で刺した箇所が二つ、まるで目のように血の涙を流していた。


パンパンでありながら、それでも入り口からソレは出てきていない。



『はは、ホントですね。

海坊主みたいや・・・・。』



思わず、愛しくなって、そのウナちゃんを指でツンツンとつついてみたら、

いきなりバッチン!!と手をナースに叩き落された。



『コラ!!!消毒してない手で!!!!』


『なにしてるんだ!!勝手に触るな!!』



さっきまで笑顔だった先生達は目の色を変え、いきなり怒ってきた。



もうヤダ。


ゴロンと横になった。


ジンジンと痛んだアソコは、もうあんまり感触がなかった。


眩しい蜂の巣みたいな照明が。目の上で自己主張していた。


頭がボーっとする。


医者がメスのような物を持って、自分の下半身に近づけているのを見ていたら、



『すぐに終わるから目をつぶっていなさい。』



と、言われ素直に目を閉じた。


すると寝てしまったのか、本当に一瞬で手術は終わっていた。





病院を出て、おぼつかない足で階段を降りる。


一歩一歩降りるたびに、なにか重い違和感を感じた。


ただ、あれ程切られた割には、思ったよりは余裕だ。


痺れているような感覚はあるが、特に痛みはない。


だが、帰りの車内で重い違和感は、その内ジンジンと正体を現し始めた。



『なんか、痛くなってきた。』



まるでソコにもう一つ心臓があるような鼓動を感じる。



『あぁ、麻酔が切れてきたんやろな・・・。』


『麻酔??』


まだ、切れてなかったんだ。

気づいてしまったからか途端に痛みは鋭いものへと変貌した。

『ちょ、おとん、めっちゃ痛くなってきた。』



痛みは、時間が経つにつれ大声を叫び始め、

着いた頃には車から自宅までも歩いていられない程だった。


その場で座り込み、きつく目を閉じて我慢した。


ボタボタと変な汗が流れてくる。



明日どうやって学校行こうか・・・・。


いや、そもそもこの状態で学校行けるのか・・・・・。



ごまかすように、そんな事を考えていたが、

やがて、何も考えることもできないほど、脳内を痛みが支配していった。



『おい、カラス大丈夫か?』


親父が声をかけ続けていたと思うが、ほとんど耳に入らない。


本当に、死んだほうがマシだと思えるほどの痛みだった。





つづく

車窓から流れている風景はいつも買い物などを付き合う時とは違う。


見たこともない街並み。


今にも雨が振り出しそうな、怪しい雲行きだったことをよく覚えている。



登校をサボってまでの病院。


運転中、終始無言の親父。


その時、父が何を考えてたかまでは知らない。


ただ、オレはといえば「まぁ、診てもらうだけ診てもらうか。」ぐらいの軽い気持ちだった。




着いた先のビル三階程に、その病院はあった。


小さい病院だったので、多分泌尿器科限定だったのだろうと思う。


医者は、


『こうしたら痛い?ならこれは?』


と、しばらくオレの一物を触診しながら、反応を伺った後、



『間違いありませんね。』



と、親父の方を向きながら、確信したように頷いた。



『やっぱり、そうですか・・・。』



父は飄々とした様子で答えながら、空いている丸椅子に座った。



『まだ小さいうちでよかったですね。』


『そうなんですかね?』


『成長してしまってからではトラウマになりやすいですから。』


『しかし、まさか自分の息子がこうなるとは・・・・・』



なんなんだ、この重い会話。


だんだんと自分の置かれている立場が、あまりよろしくない事を自覚していく。



『なんか、僕ヤバいん?』



不安を抑えきれず、思わず聞いたら、医者はニッコリと微笑んだ。



『大丈夫やで。今からちょっと手術したら治るから。』


『うん・・・・・・・・・・・。』







・・・・・・・。





『え?』



今から!?




そんな即行するの!!!?



『どれぐらい切りますか?』



親父は息子の息子、いや息子の一物を指さしながら、医者を見た。


え?切るの?


ねぇ、そこ切るの?



『これからの成長を考えて、こっからここまでぐらいの皮を切ります。』



赤いペンで躊躇なく一物に線を書く医者。


なんかゴッソリと取ろうとしてることだけはわかった。



待ってくれ!!待ってくれ!!

そんなとこ切ったら死んじゃうよ!!



今日は触診で終わると舐めきっていた男は超焦った。


焦りまくった。


目が泳ぎまくった。



『いいいいやいやいやでも、お父さん。

僕明日も学校あるしfjdfdsjfsどjsふぃsfjふぃおsdjふぃsdjふぃお』


『カラス・・・。』



肩に置かれる手。


親父の大きな手。



『・・・・こういうのは早い方がいいんや、カラス。』



そう言って、ポンポンと肩を叩く。


とても、おだやかな笑顔。


本当に父はとてもおだやかな笑顔をした。



『・・・ほんまに?』



思わず、医者を見る。



『カラス君、ほんまやで。

お父さんの言う通りや・・・・・・。』



彼もとても穏やかな笑顔だった。


すべてを諦めて、ガックリと頭を垂れた。



『大丈夫。痛くならないように麻酔してあげるから。』



そう言って、出された注射は考えられないぐらい針が太かった。


待て!!!

正気の沙汰!!!?

マジでそれココ刺すの!!?

そんなブットいの入るわけ無いよ!!!



ギラリと針の先端が光る。


地獄か、天国か、よくわからないものが手招きしていた。





③につづく






それは忘れもしない。


小学四年生の夜だった。



『お兄ちゃん、これ剥いたり出したりしてるとなんか気持ちいいで。』


風呂場で自分の一物を見せびらかし、ニタニタしながら弄ぶ愚弟。


実に楽しそうにいじくりまわしている。


そのパフォーマンスは今考えれば本当に狂ってるとしか思えない。


しかし、彼には当時エロいという感情はもちろん無かった。


本当に無邪気な感想だったんだろう。


オレも、へぇ、そうなんだ、ぐらいの気持ちで見ていた。


湯船には、腕を組みながら、すべてを悟りきった表情で眺めている親父がいた。



『お兄ちゃんもやってみ。

マジで気持ちいいでw』


『いや、いいわ。』



実はそれなら試したことがあった。


なおも、弟は行為をやめようとしない。



『ほらほら、なんかおっきくなるねん!!凄くない!!?』



少しだけ大きく真っ直ぐになったソレが確認できた。


おお、ほんまや・・・。


これには驚いた。


こんなこともコイツには可能なんだと悔しさが込みあげていた。


それを見た親父がいきなりバシャ!!と立ち上がった。



『・・・・・カラス、お前もやってみろ。』



謎にド真剣な顔で問い詰める親父。



『え?なんで?』


『いいから、やってみなさい。』



その姿に圧倒され、思わず自分の男の中心を眺めてみる。



『あぁ、なんでやろな!!なんで気持ちいいんやろこれ!!』



隣では、更に行為を加速させる弟。


まさしくカオスとしか言いようがない、この状況。


オレはおずおずと自分の一物を持ってみた。



『さぁ、やってみなさい!』


『嫌や!』



そう、試したことはあった。



『痛いから無理。』



だが、少しでも剥こうとすると激痛が走り、

とてもじゃないが愚弟のような行為が行えそうにないのをオレは知っていた。



『どうしてもか?』


『いや・・・・・。』


このままでいいのか?と思った。



『やってみる!!』


兄というものは、いつだって弟の前に立っていなきゃいけない。


全てにおいて、勝利しないといけない。


弟のほうが成長が早いわけがないのだ。



『弟、見とけ。

これがお兄ちゃんの・・・・・・。


オレは勢い良く、一物を剥き上げた。


『めっちゃイテェエエエエェ!!』


それはとてもとても過保護に中身を見せようとはしない。


風呂場の床を転がりまわりながら、泣き叫んだ。


激痛に耐えながら、これはまるで栗だと思った。


針で包まれたソレを取ると、更に甲殻が身を守っている。


これを落とすのはそうたやすくない。


やはり無理なのだ。


もう少し成長を待つしか無いのか・・・・。




親父はため息をつきながら、湯船に浸かり直す。


その顔は深刻そのものだった。


オレはそんなことより、弟に負けたことのくやしさで呆然としていた。


弟も一体何をしていいのかわからずオロオロしている。


しばらく謎の沈黙が続いた後、親父はつぶやいた。



『カラス・・・・・


明日病院に行こか。』


『え?・・・・』

『お父さんと一緒に病院行くぞ。』



もちろん明日は学校でもあり、親父は仕事でもあった。


ただ、当時の自分は事の深刻さを何もわかってはいなかった。


え?何?オレけっこうやばいん?・・・・




次の日、彼は人生で一番の地獄を見る日が訪れる。




今だから、言える。




弟、見たか・・・・・・・。


これがお兄ちゃんの、真性包茎だ・・・・。




続く