同じクラスのカズマくんは、教室に入るのが難しいときがあります。どうしたらいいか分からなくなると石像のごとく硬直します。
その日の5時間目の前、掃除の時間の後、カズマくんは1階の保健室の前の廊下でゴミ箱を抱えて座り込んでいました。ごみ捨て場とも教室とも正反対の場所です。保健室の横の角には誰でもトイレがあるので、私はマナちゃんとそこへ行っていた帰りです。
カズマくんは大きな体なので、ゴミ箱が小さく見えてしまいます。1年生は2人でごみ捨て場まで持っていくのに、こんなに大きくなったんだな、と思う気持ちと、特大テディベアみたいに愛らしい感じがしました。
「ほら、ごみ捨て場あっちやろ。
次の授業も始まってしまうよ。急いで急いで!」
と、私が声をかけた後、カズマくん硬直。
「…ゴミ捨てに行くのが嫌なの?」
とマナちゃんがたずねます。
カズマくん、横に首を振る。
しまった、なんて私はいかにも「オトナ」らしい声掛けをしてしまったんだろうか!
マナちゃんは続けます。
「じゃあ、とりあえず一緒に、ごみ捨てに行こう。ハイ、それかして。」
とゴミ箱を手に取ると
「ハイ、カズマくん、押して。」
え、私、置いてきぼり?笑
カズマくんはゆっくりのんびり車椅子を押します。ゆっくりのんびり2人でゴミ捨てに行って、ゆっくりのんびり教室に戻っていきました。
うーん、やられたなぁ。笑
「急いで急いで」だなんて!
なんてオトナなコトバだったのかしら!と反省。