家賃収入で夢の早期リタイア。
そう考えて不動産を購入し、大家業に乗り出す人がいる。
私も20歳代後半から30歳代前半で複数物件を持ち、大家業に積極的に取り組んだ時期があった。
銀行もどんどん融資してくれた。もうこのくらいでおなか一杯。
銀行も「新規融資はちょっと・・・・」と渋っていた時期があって、このあたりで手を広げるのはやめておこうと思っていたところ、道で融資担当者と偶然会い、立ち話の際に「実はあれ、融資できるから」と言われて、買ってもいいかなとみていた物件を購入できたこともあった。
そうこうしているうちに経済環境が変わり、変動金利で借りていた融資残高に高額の利息が付くようになった。
入居者の質も変遷。
当初は医師の娘、テレビ局の単身赴任者、タレント事務所の法人契約など賃料支払いに安心感のある入居者が多かったが、自由業者、フリーの芸能関係、日本人以外の入居者などに変化し、二軒で家賃不払い、滞納、一軒で変則払いなどが発生。さらにもう一軒も支払いが怪しくなった。
仲介業者もたびたびの督促になると、面倒くさがって、「連絡が付きません」などと頼りない返事をよこすようになる。
最終的にはこちらから保証人に連絡したり、段階を踏んで法的手続きに乗り出さざるを得なくなる。
A物件には家賃支払いの督促を文書、電話などで実施したが電話は留守電。手紙にも返事がなくらちが明かない。困り果てて保証人(親)に連絡する。最終的には親が残金支払いをし、退去にこぎつけられたが物件には残置物の山、そして部屋は目も当てられないくらいの汚れ放題で原形をとどめず、高額なリフォーム費用が発生。
原状復帰費用について、今ではかなりな比率で大家が負担する傾向が強まっている。
もう一軒では共働き夫婦と息子という借り手だったが、定職についていたはずの夫は行方不明に。看護師の妻と交渉したが、月額2000円しか払えないというため家賃滞納分は、延々とその条件で回収することになった。それでもなんとか払ってもらえたため、良しとしなければならないだろう。
問題はこちらも室内のひどさだった。
息子が家庭内暴力で開けた壁穴。
これらはリフォーム業者さんの工夫で何とかしてもらえたが、やはり高額の費用はこちら側で負担することになった。
1720日(≒5年)、ちょろちょろと家賃の一部を支払って結果的に占拠し続けた高齢夫婦とはさすがに更新はせず、保証人の息子さんに連絡した結果、息子さんが家賃を清算し退去にこぎつけだが、しばらくして夫婦の夫が過去の更新料返却と不払い家賃の一部に充当した敷金を求めて裁判を起こしてきた。
更新できないんなら、過去の更新料を返せ? 無茶苦茶な論理だが、相手は恥もなくそう主張する。
息子に連絡され、メンツが丸つぶれだともいわれた。
馬鹿言ってんじゃないよ!
家賃は長らく支払わない上、大量の残置物、ベランダに置きっぱなしの大きな植木鉢の類などリフォーム時に業者に処分してもらったがそうしたことへの謝罪もなく、どういうこと?
怒髪天をつくというより、相手の人間性の出来具合に「ここまでとは・・・」と脱力を覚えた。
が、客観的資料を用意し、裁判所に「こちらが被った被害」として敷金を家賃に充当したり過去の更新料受領の正当性を証明しなければならない。
そのための資料の準備をし、証人の手配もした。
証人には家賃督促に何度か付き合ってくれた不動産仲介業者にお願いしたが、日常業務を投げ出して時間を作ってもらうわけだから、それはちゃんと気を使ったし商道徳に基ずいてご依頼をした。
その時の裁判長は弱者の味方みたいな人だった。女だてらに大家をして、と見ているのがありありと態度に出て、証拠類もばっちりそろえ正論を主張すると、「まあまあ、まあ」とかいう。
「裁判長、1720日の滞納ですよ。こちらがどれほど困ったか」と続けると「そこまで言うことないです」と制止する。
原告の家賃不払いの男性は「高齢夫婦の夫」というのは誰の事? というようなアタッシュケースを持ち、白髪多めとはいえ前髪をパーマで盛り上げ、リーゼント、スーツ姿で体もまっすぐで姿勢がよかった。
人は見かけによらぬもの。実際の金払いと異性関係にほぼ品性本性は現れるというのが私の持論だが、この時もそう思った。
まったくなあ。金払いもその姿勢、外見に合うようにしゃんとせい!
どの面下げて、敷金等、返せといえるのか?
調停になり、「一銭も払わないと本裁判になり、時間や弁護士費用も掛かる。仮に勝っても費用を支払える相手ではない」と考え、更新料は手数料分、不動産業者と折半していたが直近一回分の私のもらった分だけ、原告に返すと返事し、あとはびた一文払わないと突っぱねた。
結果、原告は印紙代はかかったが、多少の金にはなったと思ったのであろう、しぶしぶ承諾。
B物件では家賃不払いの挙句、連絡が付かないため保証人(父親)に督促状を送付したがすでに死亡してしまっており、「督促状を受け取った後妻がショックで寝込んでいる!」とのクレームが滞納者の兄から入った。
この時も「通常であれば、家計は別とはいえ兄弟が迷惑をかけてすみません」くらい言わないかな、と感じたが、不払い者もこの兄も、人に迷惑をかけてなんとも思わないんだな、と類友の法則に妙に感心した。
家賃が払えない。荷物は放置して逃げてしまう。部屋の中は汚部屋。そして迷惑かけました、という謝罪がない。同じパターンだ。
こういう人は定期収入を得ていくために必要な人としての常識に欠けている。だからすぐ仕事をなくしてしまう。そして収入がなくなり家賃が支払えなくなるという悪循環に陥る。
不動産も出会い。これぞといういい物件があり、買えるなら買えたに越したことはない。
しかし、賃貸に出す場合、賃貸管理はなかなか大変だ。
大家業に向いている人は
①こまめにいろんなことに対応できる人
そして、こまめな対応によって自分の生活の質が低下したと感じない人がいい。
時間をとられたことに嫌気がささない人であればなおよい。
②ポートフォリオの管理が上手な人
③リスクヘッジができる人
④不動産管理会社、リフォーム業者、弁護士などのサポート役の確保ができる人
などがあげられる。
商取引するなら、そもそも相手を選ばなくてはならない。
付き合うならまともな人としか付き合ってはだめだ。
だから、賃貸人を選べる不動産運用をすることが大切なのだ。
しかし、融資返済があり、空室リスクにおびえ、物件管理に時間を割いていられない本業を抱えていたりすると、賃貸人をよく選ばないで妥協してしまいがちだ。
人生に行き詰まり、他人に迷惑をかけてやりっぱなしを恥とも思わず逃げる人のとばっちりを受けることもあるのが大家業だ。
対応を誤ると、退去を求めた弁護士文書に腹を立てた家賃滞納者によって湘南資産家サラリーマンのように命をとられてしまうリスクすらある。
家賃が支払えなくなった店子に対し、民生委員、保護司のように親身になって相談に乗ってあげ、公的団地などの入居に尽力するくらいのケアが必要だと思う。
減価償却費が計上できたり、本業収入が多く、所得税などの節税効果を期待したり、将来、益出し売却が期待できるかもしれないとか、月々の家賃収入でいろんな投資も有利になるなどもあり、不動産投資には期待できる面もある。
しかし、私は家賃不払い者の狼藉の火の粉を被って振り払う手間などに人生時間を費やすのは嫌だ。
節税を眉間にしわ寄せ考えなければならないほど高額報酬を得ているわけでもないし、
事業家として修業し、大成したいわけでもない。
ここまで振り回されてでも、家賃収入を増やしたいとは思わない。
総合的に考えて私は大家に向いていない。
そう思って、不動産賃貸業はすっぱりやめることにした。
ということでインカムを増やすにはJリートや株式投資がいいと考える。
Jリートも選ぶ必要があるが、人と同じで、人の道に外れない対象に投資することを心がけていけば大やけどはしない。第一、相手は法人なのだ。
例えば
平和不動産リート 137700円(価格は経済状況で変動する)
半年ごとに≒3180円の分配金(決算毎に多少、変動する)
現時点では年間≒6360円
≒4.62%の運用利回りになる
さらに考え方を変化させて
100万円で同リートを購入したとして年間≒49818円が得られる勘定
1000万円で同リートを購入すると49万8180円が得られる勘定で月に直すと4万1515円になる。
リートの値下がりリスク、半年毎の分配金減少リスクなどがあり課税口座で購入すると、20.315%の源泉税が引かれるため手取り金額は
≒39万6975円となり月額では3万3081円程度になってしまうが、来年からの非課税・新NISAを活用し上手にインカムを増やしていけばいい。
それでも大家業に関心がある場合はまず、裁判所などで実際の裁判をよく傍聴してどんなことが起こりえるか、よく研究してからにしても遅くない。
バラ色だけをいわれて乗り出してからしまった、では遅いから。