先輩たちの言葉 ~1~ | らくだくらぶ -下山吉光Official blog-

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僕がデビューしてから一年後の1998年。
22歳くらいの時だったと思う。
その頃僕は養成所時代からお世話になっていた中尾隆聖さん主催の
劇団のお手伝いをしていた。
稽古場での雑用や大道具小道具を作るお手伝い、会場整理やチケットもぎり、黒子として暗転時の転換作業等・・・
裏方のお手伝いをしていた。

ある日の稽古帰り。
客演として参加されていた辻親八さんと偶然帰りの電車が一緒になった。
大先輩と2人きりのチャンス。
色々と聞きたい事がいっぱいあったけれど、ど緊張でなかなか話せず・・・
ふと、親八さんが鞄を開け中から今度収録するという長尺台本を取り出した。
長尺とは総尺が90分120分それ以上の長さになるアニメ・外画作品のこと。
そして中身を僕に見せながら
「下山、これ見てみぃ。自分のしゃべる場所には枠をつけたりしてチェックしておくんだよ。そんで左のページにある矢印←は次のページもしゃべっているから気をつけろってことだよ。ト書きにいろいろメモったりな。こうやって人それぞれ工夫して台本に書いとくんだよ。気がついたことや自分が調べた用語なんかも書いとくといいぞ」
僕は台本に釘付けになった。

親八さんの荒っぽいけれど逞しい大きな字や線が鉛筆でいくつも書いてあった。
普段我々は他人に台本をあまり見せたりしない。
仲間内にも見せることはほとんどない。
それを見せてくれながら親八さんは
「まあ。こういった風に書けってわけじゃないけれどさ、あくまでも参考にな。
これから仕事していく中でどういう風にすればやり易くなっていくかいろいろ考えてみな。がんばれよ。」
そう言って電車を降りていかれた。
15年たったけれど今でも忘れない。
嬉しかったなぁ・・・
そしてもっと嬉しいのはその親八さんと今一緒にお仕事させていただけていることだ。
未だによく相談事にのってくださる。
あの時見た親八さんの台本に書いてあった事。
僕はそれに自分なりのアレンジを加えつつ基本親八スタイルで仕事に臨んでいる。