閃輝暗点とストレートネックの関係は????? 2014/01/29 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 これまでOCNのブログ「頭医者のつぶやき」に掲載していたものです。
 アクセス数の多かったものを、ここに再度掲載させて頂きます。


 最近、65歳の女性の方で、閃輝暗点の後に鈍い頭痛を訴えて来院されました。
 この方は、20歳頃から、年に1、2回程度、閃輝暗点が20~30分間あった後に激しい拍動性の頭痛、嘔吐の発作が6時間前後繰り返されておられました。
 ところが、ここ半年間は、1週間に2,3回の頻度で、閃輝暗点が20~30分間あった後、今度はごく軽度の鈍痛程度の頭痛が30分ばかり続くため来院されました。
 頭部CTでは、とくに異常は見られず、、とくに血流の低下を示唆するような所見はありませんでした。型通り頸椎レントゲン検査では、ストレートネックを確認しました。
 このため、ミグシスは使用せずに、ストレートネックを改善させるべく、背骨伸ばしのストレッチを朝夕の2回、1回3分間行い、日常生活を送る上、前屈みの姿勢を30分間以上とらないように注意して頂き、連日、頸部にレーザー照射を繰り返して、頸部の筋緊張の緩和に努めました。そうすることにより、1カ月後には、この閃輝暗点は全く消失しました。
 これまでも、60歳以上の方で、若い頃、片頭痛の既往のない方で「閃輝暗点」を訴えて来院された方々を15例経験していますが、これらの方々全例にストレートネックを認め、同様に「ストレートネックの改善」のみで、「閃輝暗点」は消失しています。

 これとは別に、若い世代の「閃輝暗点」を伴う片頭痛の場合も、当然「ストレートネック」を伴っておられる方々に「ストレートネックの改善」を行わせますと、前兆である
「閃輝暗点」がまず消失してから片頭痛が改善されていくという経過をとっています。

 こうしたことから、「閃輝暗点」とストレートネックは何らかの因果関係があるのではないかと疑ってしまいます。ミグシスは一切使用しておりません。
 
 こうした点が存在するため、これまでの 「閃輝暗点」に関する考え方を考察します。

 まず、最初に、 エーザイ ホームページ
http://www.eisai.jp/medical/useful/consult/vol54/no560/16.html
に掲載されている、現在の日本頭痛学会の坂井文彦先生の見解です。以下のようです。


閃輝暗点の本態は


【質問】


 片頭痛の前症状として尖輝暗点を訴える患者がいますが、頭痛症状はなく、短時間(数分~20分位)暗点のみ訴える方がいます。患者には不快ですので相談されるのですが、(1)発生の機序(血圧は関係ないように思えます)(2)加齢と関係するか(3)頻繁に起こる場合、検査を必要とするか(何科を紹介すべきか)(4)治療についてお教えください。(東京都・内科)


【回答】


 北里大学医学部 神経内科学教授 坂井 文彦


 国際頭痛分類第2版の日本頭痛学会訳(2007)では、「閃輝暗点」と訳している。閃輝暗点(図1)は片頭痛の前兆として訴えられる特徴的な症状である。視野の中心あたりに小さな光って見えにくい部分が現れ、徐々に波紋状に拡がる。半円状に辺線がジグザグ模様に輝いて拡大する(陽性徴候)が、そのあとを追うように見えにくい部分(陰性徴候)が続く。

 通常、20~30分かけて片側の視野の辺縁まで拡大して視野の外に消える。その後に、視野の対側に拍動性の頭痛が始まるのが典型例である。

 閃輝(輝く部分)暗点(見えにくい部分)が連続して拡大する現象は脳皮質に起こるcortical spreading depression(皮質拡延性抑制)が原因と考えられている。大脳皮質の一部の神経細胞に始まる興奮と抑制が、周囲に伝播する現象が実験動物のみでなく片頭痛患者の前兆期にMRIなどで画像化されている。

 片頭痛患者で前兆のあるものは約3割である。これらの患者は、前兆のない片頭痛発作も体験する。片頭痛は前兆を起こす神経系と頭痛を起こす血管系との連結した病態によると考えられている。前兆のない片頭痛を経験する人が多いが、前兆のみを経験する人もいる。若年期には前兆と頭痛のあった人が、加齢とともに頭痛が減少し、前兆のみとなることも少なくない。閃輝暗点のような前兆は片頭痛の部分症状であり、他の疾患が原因となる可能性はない。しかし高齢者で今まで片頭痛を経験したことのない人が、初めて前兆らしき症状を訴えた場合には脳疾患を鑑別するためにMRI、脳波、脳血管SPECT検査を行う必要があり、神経内科に紹介する。

 片頭痛の予防薬は、前兆と頭痛のいずれか、あるいは両者を予防することになる。前兆を予防する薬剤のメカニズムは皮質拡延性抑制を減少させると考えられる。本邦では塩酸ロメリジン(商品名 テラナス®、ミグシス®)が片頭痛予防薬として保険適用が承認されている。前兆のみの片頭痛、すなわち閃輝暗点のみの治療も塩酸ロメリジン(5㎎)を1日2~4錠(朝夕に分服)が第一選択である。3カ月継続し、発作が減少すれば漸減中止する。片頭痛の前兆である閃輝暗点は予後良好な疾患と考えられている。


文献


1)日本頭痛学会編「慢性頭痛の診療ガイドライン」、医学書院、2006年
2)日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳「国際頭痛分類第2版新訂増補日本語版」、医学書院、2007



 さらに、寺本純:「こうして治す片頭痛 薬物乱用頭痛といわれたら」講談社 では、寺本先生は、以下のような見解を示されます。以下・・


前兆だけの片頭痛


典型的な片頭痛の症状のところで、片頭痛の人のうち約20パーセントの人は「前兆のあ
る片頭痛」であると述べましたが、なかには、前兆がけがあらわれて頭痛が出ないという
人がいます。
 若い時には、視覚性の前兆があらわれ、これが消えるとともに激しい頭痛がおこってき
ていたのが、年齢とともに、前兆だけはあらわれるのに、それにつづく頭痛がおこらなく
なってしまうのです。
 ところが日本人では、このようなケースよりも、若い時には片頭痛はなかったのに、中
年以降に視覚性の前兆だけがあらわれるようになった、という人のほうが多いのです。若
い時には前兆と頭痛があったが、あとで前兆だけになったというのなら理解できます。し
かし、中年以降に前兆だけがあらわれるようになった場合には、ぽんとうにこれも片頭痛
の『仲間』といえるのでしょうか?
 本心では私も、疑わしいと思うことがあります。発症年齢が高いだけでなく、通常の
「前兆のある片頭痛」の前兆と比べて、前兆のつづく時間がかなり短く、10秒前後のことが多いからです。
 このような患者さんに対する検討は以前よりときどき報告されており、片頭痛であると
いう説以外に、脳虚血によるものではないか、あるいは、てんかんと類似の現象ではない
か、といった説などが唱えられています。しかし、原因はこれだという決め手がないため
に、『前兆だけで頭痛を伴わない片頭痛』という病名で呼ぶしかないのが実情です。


 こうしたように、症状の上からのみ述べられるだけで、その本質論にまで言及されません。そこで、私は、以下のように考察致しました。

 片頭痛の前兆として、患者さんが述懐されることとして、片頭痛が起こる前は、こりが首と肩の接点の辺り(C3)から首の後ろ側を伝わって、頭に這い上がってくる感じがします。そして、頭と首の接点のくぼんだ所(天柱、C2)にものすごい圧迫感を感じます。その後、こめかみがズキン、ガンガン 吐き気もして、寝込んでしまいます。この頭痛経過は、三叉・頚神経複合体(cTNC)が賦活される様子を如実に表しています。
 こうしたことは、ストレートネックが存在する以上、常時、このようなことが存在するものと考えるべきです。ということは「三叉・頚神経複合体(cTNC)」という経路は、通常、問題とならない”解剖学的な”経路でしかないはずです。
 しかし、このようなストレートネックが常時・存在する以上、このような”経路”がメインルートになる可能性を想定すべきではないでしょうか? こうした状況が”前兆とされる「閃輝暗点」”の準備状態を作っているのではないでしょうか?
 いまだ、症例数が16例前後しかなく、何とも言えませんが・・・

 こういった意味で、一刻も早く「頭痛と”体の歪み(ストレートネック)”」のエビデンスを確立すべきです。
Candy の機能性頭痛一元論でも示されるように”前兆のみで頭痛を伴わないもの”の存在が指摘されている点から、ストレートネックが片頭痛の”準備状態”を形成しているものと推論すべきと思っております。