他の先生も集まってきて、生徒も増えている。「とにかく中に入れよう」ということになり皆を靴下のまま教室へ押し込んだ。
先生達は講師室へ。塾長に電話したが、使われていなかった。家は誰も知らない。
「全部、持って行かれたってことか」
誰かが言った。その通りだ。給料は十日払いだから先月分の給料を貰っていない。生徒達の塾費は月末までに来月分の支払いだから払い込まれているはず。
「どうしちゃったんだろう」
僕が言うと、女子大生は壁を握り拳でこつこつ殴りながら言った。
「お金が欲しかったんでしょ。どうしてくれるのよ。年末にお金使い過ぎちゃって、給料がないと、生きてけない」
「それよりも、生徒だよ」
理科担当の、後輩が言った。
そうなんだ。何もない部屋で待機している彼らをどうするか。
その時だ。階段を駆け上る音がする。そしてドアが開く。近所に住む生徒の母親だった。
「家に、今、年賀状、来ました」
「年賀状?」
「ここの塾長、から」
母親の差し出す葉書をみんなでのぞき込んだ。
「あけましておめでとうございます。この度『行進ゼミナール』を閉めることになりましたこと、深くお詫び申し上げます。他塾への転塾をお勧めします」
その後、近所の塾や大手予備校の住所と電話番号が書いてあった。
「どうなってんだよ」
そう言った後輩は、葉書を見ながら続けた。
「ちょっと待って。この年賀状が生徒の家に今日届くとなると、パニックに、ならないか」
「えー、困る。親に責められても、私分からないから」
先生達は講師室へ。塾長に電話したが、使われていなかった。家は誰も知らない。
「全部、持って行かれたってことか」
誰かが言った。その通りだ。給料は十日払いだから先月分の給料を貰っていない。生徒達の塾費は月末までに来月分の支払いだから払い込まれているはず。
「どうしちゃったんだろう」
僕が言うと、女子大生は壁を握り拳でこつこつ殴りながら言った。
「お金が欲しかったんでしょ。どうしてくれるのよ。年末にお金使い過ぎちゃって、給料がないと、生きてけない」
「それよりも、生徒だよ」
理科担当の、後輩が言った。
そうなんだ。何もない部屋で待機している彼らをどうするか。
その時だ。階段を駆け上る音がする。そしてドアが開く。近所に住む生徒の母親だった。
「家に、今、年賀状、来ました」
「年賀状?」
「ここの塾長、から」
母親の差し出す葉書をみんなでのぞき込んだ。
「あけましておめでとうございます。この度『行進ゼミナール』を閉めることになりましたこと、深くお詫び申し上げます。他塾への転塾をお勧めします」
その後、近所の塾や大手予備校の住所と電話番号が書いてあった。
「どうなってんだよ」
そう言った後輩は、葉書を見ながら続けた。
「ちょっと待って。この年賀状が生徒の家に今日届くとなると、パニックに、ならないか」
「えー、困る。親に責められても、私分からないから」