冷凍庫には沢山の方から届けられる佃煮やお新香が並んでいる。
その中に漬物大安の、小さな小分けにした一口分のお新香に壬生なお茶漬け用がある。
壬生菜は大好きな野菜だが、お茶漬け用だからして少し塩辛く、
塩分控えめの私には当然手は出せないのだが、
どうにかして頂きたいので、思い出したのが、
30代に良く行った大阪玉出にある、ピエロという名物喫茶店で、
その二階には昨年逝ったギタリスト、石田長生君が住み、
私は良く泊まらせてもらった。
そのピエロの奥さんのさち子さんの炊く茶粥はとても美味しく
大好きだった事を真夜中に起きて思いだし、
あの茶粥に壬生菜はきっと合うだろうと、記憶に住む味が刺激的だ。
それと同時に、ピエロと言えば、名人西岡恭蔵、大塚まさじ君、
後ろに暖かく控える我らの師匠とも言える
音楽評論家の重鎮、田川律さん、鮮明な思いでだ。
まさじ君は今では大阪を代表するフォークシンガーであり、
個性的な歌声は未だバリバリ現役だ。
田川さんは料理家でもある。その生き方を見て、多くのシンガーが後ろを歩く。
最近のびのびと活動する有山じゅんじ君もその1人だろう。
恭蔵さんの書いた名曲を愛し、個性的にそれぞれの歌を探り、
道に迷いながらもたどり着きたい岸辺を見つけ、
自分の小舟に乗り、暖かい夕陽を小さな手のひらで暖め歌い続ける。
そんな素朴な生き方をただしたいだけなのだろう。
そういう私も同じように、幸子さんのような美味しく茶粥が炊け、
大安の壬生菜漬けを美味しく頂ける様に心がけたい。
歌の道しるべは時に一杯の茶粥にもある。