大宮ヶ丘に陽は落ちて 16 | 妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

妄想を文字に変えて〜嵐 大宮小説〜

嵐のニノちゃん、大野さんをイケナイ目で愛でる妄想小説ブログです。

残念ながら、ちょっと腐な感じです。

あくまでも妄想なので、生温かく見守ってくださいませ。






Side N





「えっと…」


目の前にいるのがマルで、俺は混乱した。


俺、マルとキス…してた?



……大野さんじゃなかった……



手を唇に持っていって触れる。

さっきの唇の感触がちゃんと甦ってきて、血の気がひく。


どうしよ…俺…マルに抱きついちゃったってこと?


ってか、それよりも…


キスを受け入れたばかりか、俺からも深く…


どうしよう…寝ぼけてたとはいえ、大野さんとマルを間違えるなんて…


「ごめん、ニノ」


マルが真面目な顔になって呟いた。


「忘我の境地やってん」


「え?何…ぼ…?」


意味がわからなくて俺が訝しげな声を出すと、マルがふっと笑った。


「ニノにわっかるかな~この表現!わっかんねぇだろ~な~」


おどけて言うから思わず吹き出してしまう。


「古いよ」


「ニノかて知ってるやん」


再び、沈黙が襲ってきたけど、さっきより空気が柔らかくなっていた。


「俺も…ゴメン…そんで、ありがと」


「ニノは謝らんでもえぇよ…。ありがと…って何でなん?」


「えっと…その……水、とか…」


「ふ、水かいな。ええねん、そんなん」


俺が傍らの水をちらっと見ながら言うと、マルはにこっと笑った。


ホントは…


マル、おどけてくれて、ありがと…なんだけどね…


「身体大丈夫?」


マルは心配そうな顔つきになった。


「大丈夫。マルが俺運んでくれた?ありがと」


その瞬間、マルがふっと眉を寄せて何か言おうとしたけれど、部屋の襖が大きく開いて差し込んだ光に制された。


「ニノ…大丈夫?」


心配そうな顔をした、大野さんが現れて、俺は思わず一瞬目を伏せた。


大野さんの顔が見られない…


「おーちゃん…」


「マル、ニノ運んでくれた?こいつ、重かったんじゃない?」


大野さんが、作ったような明るい声を出してマルの方を見る。


「重なんか…あらへんよ…」


気の抜けたようなマルがぼそりと呟く。


「ニノ、部屋戻れる?」


大野さんは俺の傍らにしゃがみ込んで、顔に触れた。


その瞳が痛いくらいまっすぐ俺を見る。


なんか答えなきゃ、って思うけどうまく声が出てこない。


「ほな、俺先に戻ってるわ。ニノ、無理せんようにな」


マルが立ち上がった。薄暗くて、表情は見えない。

マルが廊下へ出て行ったのを見届けて、大野さんは俺に向き直った。


「あいつと…何かあった?」


俺は咄嗟にかぶりを振って否定する。


この人には、知られたくない…



「じゃあ、帰ろ?」


大野さんがにこっと笑って、俺の手をぎゅっと握る。


大野さんだって…


たぶん、俺とマルの間の空気に何か感じてはいるんだろうけど…


何も気づいてなんかいないみたいに笑ってくれるから、胸がちくりとした。