Side O
恋を自覚した日に、恋を失うって、ひどすぎやしないだろうか。
おいらは、部屋で一人、八乙女くんから来たLINEに添付されてた画像を呆然と眺めた。
眺めたといっても、一瞬ちらっと見て、長くは見ていられないと思ったから視線は文面の方に戻す。
八乙女くんとたまにするブルースリーの話の後に、彼からのメッセージにはこう書いてあった。
『知念達が、偶然二宮くんと丸山くんのラブ現場に出くわしたらしいですよ。証拠写真まで(笑)』
おいらは、見たくない気持ちを押さえ込みながらなんとかもう一度画像を見ようとした。
1枚目は、どこかうす暗い店内で、マルがニノに寄りかかるのをソファの後ろの方から撮った画像。
2枚目は、マルがニノを抱きしめているのをさっきのよりもう少し、寄りで撮った画像。ニノの表情はマルの腕と胸に挟まれて、かろうじて見える。
ニノは目を閉じていた。
何よりも俺を打ちのめしたのは、ニノが、マルを拒否していなくて、むしろ…
2枚目なんか、マルの胸に自分から顔を埋めて…
目を閉じて安心しきって、マルに体を預けているように見えた。
はあ…
俺は、もう見続けるのは辛くなって、スマホを放り出した。
一枚の写真で、世界は変わる。
またか…
写真は、見たくない、目を背けたい現実をあぶり出すように思えた。
ニノは…マルのこと、好き…なのかな…
その可能性を、内心言葉にすることでさえ、もう、辛くてたまらない。
そっか…相葉ちゃん、すごいな…
ニノが他の奴のことを好きなんだという考えは俺の心をきりきりと締め付けた。
これが…恋…なんだよね…
やっと、わかったのに…
おいら、ニノんこと…好きって…
わかった途端の…この爆弾。
俺はため息をついて、もう、寝てしまおうと、ベッドへ潜り込んだ。
今まで、どうしてきたっけ…こういうとき…
失恋して辛い時…仕事に行ったら、なぜか心が解れた。
いつも寄り添ってくれて、その体温で安心感をくれたのは…
俺はもう一度ため息をついた。
どうしよう…ニノだ。
じゃあ、ニノに失恋した時は…
どうすりゃいいんだろ…
寝返りを打つと、まだ温まっていないシーツがひんやりと頰に触れる。
あー…ニノに…会いてぇ。
ニノに失恋して、
ニノに会いたいって…
アホすぎんだろ…
冬の予感がする秋の夜は、試練かと思われるほど、長く、寒い。