「くっつくの、やめて」だなんて、つい言ってしまった日の後も、ニノは今までどおり接してくれた。
楽屋で会えば、目を合わせて笑ってくれる。他愛のない話もしてくれる。2人の時も、気まずさを感じないように、心を砕いてくれているのは俺にもわかった。
ただ、収録の時やライブ以外では、俺に触れなくなった。
先に俺が楽屋に入っていると、今までは隣に座っていたのに、少し離れたところに座る。
その距離が、あの日見たマルとの画像を思い起こさせて、俺の心をかき乱した。
ニノにマルがいるなら、今の俺との距離も仕方がない、と自分に言い聞かせた。
…なのに、収録中やライブ中は、今まで通り、俺に触れる。
仕事が終わった後、帰りの車で、ぼうっとその日のことを思い出す。ニノが触れてくれた瞬間を、アメ玉を口の中で転がすみたいに、思い出して何度も脳裏で再生するような日々が続いた。
触りたい。
抱きしめたい。
ついこないだ、キスしたなんて…嘘みたい。
帰りの車からは高層ビルの光のきらめきが見える。
キレイだけど、いつもと変わんない風景。
東京だったらどこにでもある、いつもと同じ風景。
だけど、お前に恋してるってわかったときから、もうなんだって、一緒に見たいって思ってる。
同じ風景を、同じ気持ちで見られたらどんなにいいんだろ。
恋した時、どうすればいいかって聞いた時、相葉ちゃんは最後にこう言った。
「想いが抑えらんなくなったらぶつかって」
おいらはまだ…ぶつかってない。
同じグループ、
同じ男、
この先も、ずっと一緒。
…だけど、もう…
この想いを封印したまま、ずっと一緒にいることの方がつらいんじゃないかと俺は思い始めていた。
同じ風景を見て、その後同じように同じことを感じたいなんて思ってない。
ただただ、同じ風景を…ニノと一緒に、同じ気持ちで見たいんだって…
おいらがそう思ってるんだって、
ニノにわかってもらいたい。
俺はきらめく高層ビル群を見つめながら、ぎゅっと拳を握りしめた。