Side N
固形物はダメって聞いていたので、ペットボトルを見せるとリーダーは頷いた。
蓋を開けて渡してやる。
そういや、前、俺が風邪引いたとき、いろいろしてくれたな…
ごくごくと飲み干す喉仏を見ながらぼんやりと思い出す。
「汗かいてない?体、前やってくれたみたいに拭こうか?」
大野さんは、ペットボトルを唇から離して、黙ったまま俺を見つめた。
やっぱ、触ってほしくないってことなんだろうか。
「あ…やだったら別に…」
大野さんは首を振って、かすかに微笑んだ。
「ううん…汗かいちゃったから、お願い」
俺は立ち上がってバスルームで熱湯にタオルを浸してきつく絞った。大野さんの着ていたホテルのパジャマを脱がせて背中を拭いてやる。
やっぱ、ちょっと、痩せたな…
肩甲骨の浮いた綺麗な背中のラインに見とれた。
体を拭き終わると、やることが無くなった。熱冷ましのシートは要らないと言われたし、薬はもうのんでると言われたから。
「じゃあ、俺…行くね。お大事に」
立ち上がって、にこっと微笑んでベッドサイドから離れようとしたら、大野さんに手首を急に掴まれた。
「…ニノ」
びっくりして大野さんの顔を見たら、ひどく苦しげに眉を寄せて、泣き出しそうな表情をしていた。
「どうした…」
俺が言い終わる前に、大野さんはぎゅっと俺の手首を握りながら小さな声で呟いた。
「…そばに…いて…」