温かくした俺の部屋で、いつも通り授業を始めた翔ちゃんは、俺のセンター試験の結果を見て、「よし」と言った。
「狙える?翔ちゃんのとこ?」
「うん、このまま頑張ろう。後は体調管理しっかりして」
入試本番まで3週間をきっている。
翔ちゃんは自分の受験を踏まえていろいろアドバイスをくれた後、いつもの授業に戻った。
「仮定法の使い所だよな…」
宿題になっていた英訳を見た翔ちゃんが呟いた。
「現実では絶対起こらないこととかを仮定して願望を表したいときに使うんだよ。If I were a bird…とか、鳥になることは現実ではあり得ないでしょ?ここは、『ヨーロッパに行ったら』ってなってるよね。これは予定、実現可能なことだから、普通にwhenとかifでいいよ」
現実では絶対起こらないこと…
思わず口をついて出た。
「If I were a girl, I could be your baby(女のコだったら、翔ちゃんの恋人になれるのに)…こっちは仮定法で…」
翔ちゃんは目を見開いて、俺の顔を見た。
英語の教師って…キライだな…
英語の意味、すぐわかっちゃう…
俺は自分の考えにくすっと笑って、さらに続けた。
「If I pass the university, I want to say how much I am thinking about you(大学に合格したら、俺が翔ちゃんのことどんなに思ってるか、伝えたいんだ)…これは、起こるかもしれないから、仮定法じゃなくてもいい?」
翔ちゃんは、目を見開いたまま、固まってこちらを見つめていたかと思うと、いきなり机に両肘をついて頭を抱えた。
「翔ちゃん…どうし」
「ニノ」
翔ちゃんは、閉じていた目を開けながら俺をまっすぐ見た。そのあと、ほうぅっと長いため息をついた。
「まずな、最初の仮定法ですけどっ」
「な、なんでですます調なの…」
「ど…動揺してんの!」
「え?」
真っ赤になって子供みたいに拗ねた口調の翔ちゃんが面白くて、俺は笑った。そんな俺を見て翔ちゃんは少しむすっとしたけれど、すぐにすうっと真面目な顔になった。
「最初の文は…後半、仮定法じゃなくても…いいから…」
「え…」
翔ちゃんの綺麗な二重の瞳がまっすぐ射抜くようにこっちを見つめていた。
後半…
後半って…
『 I could be your baby 』⁈
それって…
「現実では絶対起こらない…なんてことじゃないから…」
「翔ちゃ…」
「櫻井先生」
呼び方を咎める言葉を短く口にして、翔ちゃんは続けた。
「2つめの文の『回答』だけど…」
翔ちゃんは机に開いていたテキストの「解答」の文字をとんとんと指で叩いて言った。
「Don't say it(お前は言うな)」
マジで…
ひっでぇ、と口をつきそうになった瞬間、翔ちゃんは俺の手首をぎゅっと握った。つかまれている手首が温かくて、翔ちゃんの体温にもっと包まれたくてたまらなくなって、俺は堪えるために眉を寄せた。
「 Because I want do that first. OK?(なぜなら、俺が先にそうしたいから。いい?)」
「え…」
翔ちゃんは「I」の部分を強く発音して言った。
「I do wanna say how much I am thinking about you (俺が、お前のことどんなに思ってるか、言いたいんだ)」
翔ちゃん…
人のこと言えないけど…
それ、もう…
俺に、言ってない?
あっけにとられる俺を見て、翔ちゃんは照れくさそうに「強調のdoな」と呟いた。
英語、間違ってたらごめんなさい( ̄ー ̄;
「仮定法の使い所だよな…」
宿題になっていた英訳を見た翔ちゃんが呟いた。
「現実では絶対起こらないこととかを仮定して願望を表したいときに使うんだよ。If I were a bird…とか、鳥になることは現実ではあり得ないでしょ?ここは、『ヨーロッパに行ったら』ってなってるよね。これは予定、実現可能なことだから、普通にwhenとかifでいいよ」
現実では絶対起こらないこと…
思わず口をついて出た。
「If I were a girl, I could be your baby(女のコだったら、翔ちゃんの恋人になれるのに)…こっちは仮定法で…」
翔ちゃんは目を見開いて、俺の顔を見た。
英語の教師って…キライだな…
英語の意味、すぐわかっちゃう…
俺は自分の考えにくすっと笑って、さらに続けた。
「If I pass the university, I want to say how much I am thinking about you(大学に合格したら、俺が翔ちゃんのことどんなに思ってるか、伝えたいんだ)…これは、起こるかもしれないから、仮定法じゃなくてもいい?」
翔ちゃんは、目を見開いたまま、固まってこちらを見つめていたかと思うと、いきなり机に両肘をついて頭を抱えた。
「翔ちゃん…どうし」
「ニノ」
翔ちゃんは、閉じていた目を開けながら俺をまっすぐ見た。そのあと、ほうぅっと長いため息をついた。
「まずな、最初の仮定法ですけどっ」
「な、なんでですます調なの…」
「ど…動揺してんの!」
「え?」
真っ赤になって子供みたいに拗ねた口調の翔ちゃんが面白くて、俺は笑った。そんな俺を見て翔ちゃんは少しむすっとしたけれど、すぐにすうっと真面目な顔になった。
「最初の文は…後半、仮定法じゃなくても…いいから…」
「え…」
翔ちゃんの綺麗な二重の瞳がまっすぐ射抜くようにこっちを見つめていた。
後半…
後半って…
『 I could be your baby 』⁈
それって…
「現実では絶対起こらない…なんてことじゃないから…」
「翔ちゃ…」
「櫻井先生」
呼び方を咎める言葉を短く口にして、翔ちゃんは続けた。
「2つめの文の『回答』だけど…」
翔ちゃんは机に開いていたテキストの「解答」の文字をとんとんと指で叩いて言った。
「Don't say it(お前は言うな)」
マジで…
ひっでぇ、と口をつきそうになった瞬間、翔ちゃんは俺の手首をぎゅっと握った。つかまれている手首が温かくて、翔ちゃんの体温にもっと包まれたくてたまらなくなって、俺は堪えるために眉を寄せた。
「 Because I want do that first. OK?(なぜなら、俺が先にそうしたいから。いい?)」
「え…」
翔ちゃんは「I」の部分を強く発音して言った。
「I do wanna say how much I am thinking about you (俺が、お前のことどんなに思ってるか、言いたいんだ)」
翔ちゃん…
人のこと言えないけど…
それ、もう…
俺に、言ってない?
あっけにとられる俺を見て、翔ちゃんは照れくさそうに「強調のdoな」と呟いた。
英語、間違ってたらごめんなさい( ̄ー ̄;
↑自信ないのにやるなって感じですが…