苦手な方はご注意くださいませ
「うまっ」
俺の作った夕飯をうまそうに頬張る大野さんを見ていると、幸せな気持ちになった。
「よかった。今日の、初めて作ったから」
「カズのメシうまいよ…弁当だって、今日もひやかされちゃった」
思い出したのか、大野さんはふふっと笑う。
「相葉さんでしょ」
「そう。あのニノがこんなの作るなんてね〜って」
幼なじみの相葉さんは大野さんの同僚だ。俺も一ヶ月前まで同じ職場で働いていたから、光景はすぐ目に浮かぶ。
「そういや、翔くんが異動してくんだって」
「え…しょ…櫻井さんが?」
久しぶりに聞く名前にドキドキした。
櫻井翔。
心の中で呟くと、まだ甘い響きになって戸惑う。
俺の新入社員のときの教育係。
そんで、
俺の…初めての…
でも、それは大野さんには秘密だ。
「翔くんね、出世しちゃって部長になんだよな」
「じゃあ、大野さんの上司になんの?」
大野さんは頷いて、ふふっと笑った。
ますます、翔ちゃんのことは黙っておかなくちゃ…
「変な感じだよな」
「それは…」
大野さんは年次的には翔ちゃんの1個上だ。
年下上司かあ…
「やりづらいね」
「ううん。翔くんのがつらいよ。おいら、昔の翔くんも知ってるし、やりづらいんじゃね?」
大野さんは苦笑いを漏らした。翔ちゃんは数年前まで大野さんと同じ部署で働いていたけれど、あるとき支社のある東北に転勤になった。
「そう…」
大野さんは優しい。
自分が年下上司の下で働くことよりも、年上部下を持つ翔ちゃんのことを考えてる。
というか、大野さん自身はそういうの気にしない人なんだよね…
無欲なのに課長になったのは、そのスキルの高さによるところが大きいんだろうな…
「大丈夫だよ?だっておいらにはさ」
大野さんは一旦持ち上げたビールのグラスをテーブルに置いて俺を見た。
「カズがついてるからね」
ふわっと微笑まれて、どきん、となる。
「ね、味噌汁ある?」
「あ…あるよ」
大野さんの笑顔に見惚れていたから、俺は慌てて椅子から立ち上がった。
というか、大野さん自身はそういうの気にしない人なんだよね…
無欲なのに課長になったのは、そのスキルの高さによるところが大きいんだろうな…
「大丈夫だよ?だっておいらにはさ」
大野さんは一旦持ち上げたビールのグラスをテーブルに置いて俺を見た。
「カズがついてるからね」
ふわっと微笑まれて、どきん、となる。
「ね、味噌汁ある?」
「あ…あるよ」
大野さんの笑顔に見惚れていたから、俺は慌てて椅子から立ち上がった。