2018年6月19日 桜桃忌 太宰治「人間失格〜朗読劇」その③ | おおともゆうのブログ

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こんにちは! シンガーソングライター、おおともゆうです。
このブログでは日々の生活の中で遭遇する摩訶不思議中で超常現象をご紹介致します。


東京に出てきた大庭葉蔵は
その後高等学校を抜け出し
洋画家である安田新太郎氏の画塾で
とある青年と出逢う。

その彼こそが
堀木正雄

東京の下町に生まれ
(おおともゆうじゃん)

人から金を借りておごり
(おおともゆうじゃん)

酒、タバコ、女、絵画を好み
(おおともゆうじゃん)

都会の本物の与太者である。
(おおともゆうやん!)

そんなカリスマ性に満ちた
The King of ダメ男 of 昭和男子 of Japan!

堀木正雄に教えられ
ただでさえ人間とうまく関わることのできない
大庭は、日に日にその快楽の渦に巻き込まれていく。

「5円、貸してくれないか」
「よし、飲もう。
おれが、お前におごるんだ。
よかチゴじゃのう」


最高に適当だ。
個人的に私はこの手の人種を好きである。

たしかにあとで返すということであれば
借りた金は自分のもの。
よって借りた本人にご馳走するということは
理にかなっている。

「前からお前に目をつけていたんだ。学校は、つまらん。
われらの教師は、自然の中にあり!自然に対するパアトス!」



「しかし、自分は、彼の言う事に一向に敬意を感じませんでした。馬鹿なひとだ、絵も下手にちがいない。しかし、遊ぶのには、いい相手かもしれないと考えました。」


堀木正雄は大庭より六つ年長だが、
完全に大庭葉蔵になめられている。

しかし堀木が自分の代わりに
自然に道化を演じてくれるので
大庭は人間との沈黙で死にそうな思いをせず
ただただ目の前にいる馬鹿を相手に
その快楽に身を任せていればよいのであるから
安楽である。

さうして
どんどんのめり込んでいく。
デカダン。

堀木正雄の影響で
非合法運動にも関わって行く大庭。

ものすごい時代だと思う。
時代のエネルギーが非常に感じられる小説だ。

普段大変おとなしいシンガーソングライター
laito
本来は
laitoが大庭で、私が堀木でも良かった。
リハーサルでもさう思った。

しかし本番ではその落ち着いた
薄く開いた口から発せられた掠れるような
頼りない声が、逆に堀木正雄の
与太者っぽさ、女々しさ、狡猾さを
見事に表現していた。


さうして
堀木正雄のテーマを歌うlaito。

甘く、ロマンチックな曲だ。
いかにもlaitoの曲調。
しかし堀木正雄が歌を歌ったら
案外こうなるかもしれない。と
横耳を立てながら思った始末である。

人生を甘い都合だけで生きている
いざとなったら何もかも裏切り
自分本位で生きて行く寄生虫
人を裏切り
次の寄生できる母体を探すだけ。ヒモ。


太宰治の短編「親友交歓」に出てくる
平田に似ている。
堀木の血縁者か?



やがて一人でも都会の遊郭を歩き回れるように
なった大庭葉蔵は、
銀座のとある大カフェで、ツネ子という女給と出逢う。

「十円しか無いんだからね、
そのつもりで」

「心配要りません」


ちなみに現代に換算すると
10円は約2万円程度。
ツネ子役の熊谷あすみさん

月の満ちかけという音楽グループのボーカル。

このナイスな椅子によって
一気にカフェのやうな空間演出が出来た。

このツネ子という女がまたなんとも言えぬ
艶を持った女なのである。
最初から大庭への奉仕の凄まじく
自分の家に泊まらせ
「侘しさ」をからだの外郭に、一寸くらいの幅の気流みたいに持っている大庭の初恋の女だ。

どちらかというと古風な純和風美人である
あすみさんにぴったりな役である。
声はものすごく可愛いのだが
眼の中に絶対にゆるがない強い意志を感じられる
素晴らしい歌い手さん。

ちなみに私おおともゆうも
人と五秒以上目線を合わせていられない。
沈黙も大嫌い。
本当は心底シャイなモボなのである。
ゆえに周囲には
明るくてうるさくチャキチャキな江戸っ子と
思われているが、
それはあくまでそうしなければ
人とのコミュニケィションを保っていられないからである。
本当は
大勢の場が苦手なのである。
一人が好きなのである。
しかしこのブログでは
そんなことは誰からも聞かれていないので
次に進むのである。





さうして
十一月の末、
神田の屋台で安酒を飲んだ
大庭と堀木は
銀座の大カフェにゆくことになる。

「よし、そんなら
夢の国に連れて行く。
おどろくな、酒池肉林もいう、......」堀木

「カフエか?」大庭

「そう」堀木

「行こう!」大庭



さうして
カフェに乗り込んだ二人のテーブルには
ツネ子ともう一人の若い女給が座った。

しかし堀木側に座ったツネ子は
堀木に、こんな貧乏くさい女。と一蹴され
それにより大庭は撃ちくだかれてしまう。

最悪だな堀木。

浴びるほど飲んでみたい気持ちになった大庭は
ツネ子に。


「お酒を。お金はない」


最悪だな大庭。

昭和という時代はこのような
やまとなでしこがいたのだがら羨ましい。

今だったら完全に黒服の怖いお兄さんが出てきて

You Get Outしちゃいなよ!

で終わりである。


これは大庭と堀木が調子に乗るのも仕方ない。
私も気をつけよう。


落ち着いたトーンで静かに
お前は貧乏くさい女だと言われたら
死にたくなるよな。

さうして
自分の貧困さやツネ子との関係の侘しさが
祟って、二人して鎌倉の海へ入水。


女の人は、死にました。
そうして、自分だけ助かりました。








第三の手記


九死に一生を得た大庭は
世話になっていた肩身の狭いヒラメの家を飛び出て、唯一の友人である堀木の家を訪ねる。

しかし自分の家族にも道化を演じ
妙によそよそしくなってしまった
堀木に嫌気がさし、不穏な空気が流れたところで

とある雑誌社に勤めるシヅ子という新聞記者と出逢う。


「お宅はどちらなのですか?」
シヅ子

「大久保です」大庭

「そんなら、社の近くですから」シヅ子


またしても不吉な恋の予感。



その④へ続く。。。


撮影は全て Nobuaki Saito 氏による。