ヘラクレス幼虫と黒彊病菌 | ヘラブリログ

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5歳の息子をもつパパ、乙ノジです。D.H.ヘラクレスをきっかけに国内外のカブクワ飼育を始めました。
飼育記録やその他集めた情報を掲載しています。今のところ写真はすべてiPhoneの限界に挑戦して撮影しています。

乙ノジっす

うちのヘラヘラ(DHH-A-007 )が☆になってしまいました。何もしてやれなかったのが悔しくて感染していたと思われる黒彊病菌(こっきょうびょうきん)について学術的な視点からも少し調べてみました。黒い斑点がでる病気を黒点病と言う人もいますが、黒点病は植物の病気であり昆虫の場合はまた別のようですね。昆虫類に出た黒い斑点はどうやら黒彊病の起因菌が関係しているようですが、はたしてどうなんでしょう。

一見健康そうにもみえますがなんとなく薄く緑がかっていて黒い斑点があります。写真はあまり見た目が良くないのでせめてモノクロにしました。

黒彊病菌(こっきょうびょうきん)の説明>
硬化病菌類の一種。Metarhizium 属は8種が記載されているが、本種が最も普通種である。本菌は Beauveria bassiana と同様に病原力も強く、寄主範囲も広い。寄主の体表に黒緑色の分生子を形成するので、黒きょう病菌と呼ばれる。本菌には2つの変種があり、var. anisopliae は各種昆虫から見い出される普通種で、分生子は円筒形(5~8×2~2.5μm)であり、var. majus はシロテンハナムグリやタイワンカブトムシの幼虫から分離されるが、var. anisopliae より見い出される頻度が低く、分生子の形は同様だが、大きい(10~14×3~5μm)。本菌は各国で害虫の微生物的防除に用いられている。

この黒彊病、色が違う白彊病や緑彊病など様々な種類があるもよう。しかし硬化病の一種らしく、黒斑点が出るものとはなんとなく症状が違うような気がします。単純に黒彊病菌が起因しているだけで黒彊病自体になっているわけではないのかな。いずれにせよ私には何の細菌に感染したのかを調べる術がないのでどうしようもないのだけど。

うちの会社はメディカル寄りな事をやる会社なのでここで最近仕事柄調べていて辿りついた情報にカブトムシディフェンシン(細菌感染したカブトムシの幼虫が体内で生成する抗菌性ペプチド)の話が出てきたのを思い出した。
カブトムシの幼虫は体内に細菌が侵入してきた場合に自分で抗菌性のタンパク質を作り出して攻撃するのだそうです。
このカブトムシディフェンシンが細菌の細胞膜に穴をあけて滅菌することに注目してヒトの血液系の癌治療に抗がん剤として使う研究が進んでいます。
なんでもカブトムシの幼虫をあえて細菌感染させて、抗菌性のタンパク質を作りだしたタイミングで脚などを切断して抽出し、(HPLC/高速液体クロマトグラフィーで)精製して製剤化するのだとか。

かなり強い抗菌作用を持ったペプチドなのだそうですが、自分で作ったカブトムシディフェンシンでは黒彊病は消滅させられないのでしょうか。私が妄想をしながら思ったことですが、金魚によくある黒斑病、あれも症状的には似ていて黒い斑点が出てきますが白雲病が治った跡が黒く残るようです。と、いうことはこの幼虫の黒い斑点ももしかすると何か別の細菌が悪さをした際に体内で作られたペプチドが攻撃を繰り返し、治癒した部分が黒く残りそれを繰り返すイタチゴッコの痕跡なのでは・・・とか見ているだけじゃかわいそうで素人の妄想も尽きません。

クワを育てているときに調べて知ったのですが昆虫の世界にも親から子への防御策の伝授があるようです。クワガタの親はアゴで産卵木に穴を掘りますが、掘った木くずと唾液を混ぜ合わせて卵の周りに木くずを埋め戻しますよね。カブトムシのも同じように卵を守るためにマットで卵室を作りそこに卵を産み付けます。孵化した幼虫は卵の周りにあるマット(クワは木くず)をはじめに食べます。そこでヒトやその他の哺乳類の赤ちゃんがママの初乳で抗体をもらうように幼虫も親から子への抗体移行が行われ、無菌状態で生まれた初令幼虫の身体に周りにやまほどいる細菌が感染しないよう抑制する効果があると言われています。
日大による研究の研究概要には、“カブトムシ幼虫の腸内細菌叢は、1齢から2齢の間に腸内に定着し、その菌叢は、飼料に含まれる多糖類の種類によって変化し、特異的な菌叢が定着することが推定された。カブトムシ幼虫腸内や糞からは、キシランを分解する細菌が単離された。”とあります。
幼虫はこれらの細菌を栄養素の吸収に必要な腸内の分解係として使用したり身体を守るための防御うとして使います。このことを考えると「なるほど、たしかに親から子への有用な細菌の受け渡しがあるのであれば抗体の移行もあり得るのかも」と納得させられる気がしますよね。


今回のDHH-A-007 は3令後期まで元気に育っているわけですから抗体移行があるのであればそれ自体はうまくいっているはずなんです。たまたまカブトムシディフェンシンの生成が細菌の繁殖に追いつかなかったのか、ヒトが構成物質を長期間服用したときのように細菌自体が耐性菌になっていてカブトムシディフェンシンが効かなくなっているのか、、、なんにしても自分で良くなってくれたらよかったのですが、もう何か月も微動だにせずマットも食べてない状態で居ましたし元気になる様子はありませんでした。上の写真の位置は2月1日のマット交換の際、様子がわかるようにと私が軽く埋めた位置ですが、この写真のようにそのままそこから移動していません。体重はの三令後期なのに30g強と小さく、強烈に痩せている。これでよく数か月も生きていたと思う。幼虫の生命力はすごいです。なんとかしてやりたかったですね。

だいぶ話が脱線したりもしましたが、今の段階ではやはりカブトムシ幼虫の細菌感染に対する治療方法は確立されておらず、私には調べることしかできないようです。これを生成して幼虫の治療ができる製品を作ってくれる会社が出てくることを祈ります。

【出典】
・Weblio 辞書「森林生物図鑑」黒きょう病菌の意味・解説(http://www.weblio.jp/content/%E9%BB%92%E3%81%8D%E3%82%87%E3%81%86%E7%97%85%E8%8F%8C
・カブトムシディフェンシン由来改変ペプチドの多機能解析
http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010814401
・カブトムシ幼虫の腸内細菌叢
(http://kaken.nii.ac.jp/pdf/2010/seika/jsps/42686/20580164seika.pdf)



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