お待ちかね!? 執筆中の物語の続きです。
前田と轟の立ち上げたマネキンが展示会を通じて爆発的に売れます。(言っちゃった・・・)
しかし・・・
さて今日も前田と株式会社凄い展示会 谷田との打ち合わせは続きます。物語的には面白くないくだりですが、展示会成功の為のリアルを詰め込んでます。
どうぞよろしくお願いします。
前のお話は↓
http://s.ameblo.jp/zensin/entry-11994265526.html
初めから読む方は↓
http://s.ameblo.jp/zensin/entry-11981618309.html
^^^^^^^^^^^^^^^^^
口惜しいが、前田としては返す言葉もない。
じっと押し黙っていると、唐突に、パン、と乾いた音がした。谷田が手を叩いたのだ。驚いて机を睨みつけていた視線を上げる。すると、谷田は不敵な笑みを浮かべた。
「よし。今回は、凄い展示会スペシャルプランでいこう」
「スペシャルプラン……?」
前田は首をひねる。その口調にも違和感があったが、なにより、そばを通った社員の一人が、
「谷田さん、また始まったよ……」と呟いたのを、前田の耳は聞き逃さなかった。
またとはどういうことなのだ。
そんなことはお構いなしとばかり、谷田はにこにこと機嫌のよさそうな笑みを浮かべる。
「うちの凄い展示会というサービス、知ってるよね」
「は、はあ……あの冊子に書いてあった内容くらいは」
「よし、それなら話が早い。TMさんの件は、そのスペシャルプランで行きたいなと思ってね」
「スペシャル……と言われましても、すいません。予算は展示会ブースの25万円しか用意してないんです」
たじたじとなる。正直、ぼったくろうとでもしているのではないか。そんな不安さえよぎった。
「オーケイ」
うんうん、と谷田は頷いて、指を折る。調子よく鼻歌でも歌い出しそうな様子だ。
「今回は35万で凄い展示会スペシャルプランでいこう!」
まるで他人の話を聞いていない。むっとして言い返した。
「ですから、25万円が予算なんです」
すると谷田は、ふむ、と天井を見やったかと思うと、今度は声音を変えた。先ほどよりは真面目な調子である。
「モノが売れない原因はなんだと思う?」
「……価格が高いから、ですかねえ」
まるで関係のない問いに聞こえたが、それでも聞かれると、つい答えを考えてしまう。
「そうだね。価格に見合うだけの価値を感じければ買わないよねえ。他には?」
「買う理由がないから……でしょうか」
「そうだね。価格相応の価値があっても、要らないものは買わない。いいじゃない、前田くん。他は?」
ついに前田くんときた。
先ほどから敬語すら使わなくなっているし、ずいぶんと馴れ馴れしい。
なんとしても完璧な答えを提示してやる、と前田はむきになった。
だが、二つまではさらりと思いついても、三つ目となるとそうもいかない。口を開いては閉じる。言葉に詰まっていると、谷田は助け舟を出すように言い継いだ。
「前田くんのところのマネキンは高いかい? お客様が感じる価値は低いかい?」
「いや、価格に自信はあります。売り場において着せ替えが楽であるということは大きな価値です」
轟の作ったマネキンの価値が低いなどと言われれば、黙ってはいられない。
考える間もなく、ぽんぽんと言葉が口から飛び出した。次第に熱を帯びて、早口になる。
「なにより、売り場においてマネキンは売り上げを上げることに貢献します。
マネキンは、ただのディスプレイじゃありません。
いわば、話さない販売員なんです。それも、うちの商品は特別に優秀な販売員、その価値が低いなんて——」
「はいはい、そこまで」
ひらひらと手を振って、谷田は前田の言葉を制した。苦笑を見せる。
「わかったよ、前田くんのところのマネキンがどれだけいいものかということは。
あとは、展示会でやってね。それじゃあ、そんな素晴らしいモノがなぜ売れないの?」
一拍の間を置いて、彼はすこし表情を緩めた。
それは、小馬鹿にしたものではなく、可笑しがるものでもなく、ただ温かい笑みだった。
「それはね、お客様が知らないからなんだよ」
「知らないから……」
「ああ。前田さんのところのマネキンは素晴らしいと思う。
僕はマネキンには詳しくないけれど、話を聞いていればそれはよくわかる。
しかし、いまはただそれだけ。
芸術品ではなく、商品として意義のあるものにするには、その存在を、その価値を伝えなければならない」
谷田はひどく真面目な目をしていた。
へらへらした男だと思っていたのに、こんな顔もするのか。驚いてまじまじ見つめていると、視線が遭った。
「——よね? だから、展示会にでるんだよね。だから、ここに来たんだよね」
「はい」
「応援するよ」
その言葉に背を押されるようにして、前田は思わずこう返していた。躊躇いはなかった。
「スペシャルプランでお願いします」
後から思えば、谷田が体の良い詐欺師であればすっかり鴨となっていただろう。
だが、これが前田の会社を日本一のマネキンメーカーに、そして株式市場に上場する快進撃の始まりとなる。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^
本日はここまで、
「25万円の予算」に対して「じゃあ35万円でいこう」
社員のひとりが「谷田さん・・ またはじまったよ・・・」という意味深なセリフの意味が今後わかります。
谷田って面白いですね!
しかも実際にゼンシンに、こんなキャラがいるなんて^^
ここだけの話・・・ 谷田は 弊社株式会社ゼンシン関東営業所を仕切っている谷 、そして私前田の性格や考え方をミックスしてできたキャラです。
ドラゴンボ-ルの”Fusion(フュージョン)”を思い出します^_^;
では続きは来週末かな・・・
不定期にボチボチ更新していきます!
おやすみなさい。
^^^^^^^^^^^^^^^^^
口惜しいが、前田としては返す言葉もない。
じっと押し黙っていると、唐突に、パン、と乾いた音がした。谷田が手を叩いたのだ。驚いて机を睨みつけていた視線を上げる。すると、谷田は不敵な笑みを浮かべた。
「よし。今回は、凄い展示会スペシャルプランでいこう」
「スペシャルプラン……?」
前田は首をひねる。その口調にも違和感があったが、なにより、そばを通った社員の一人が、
「谷田さん、また始まったよ……」と呟いたのを、前田の耳は聞き逃さなかった。
またとはどういうことなのだ。
そんなことはお構いなしとばかり、谷田はにこにこと機嫌のよさそうな笑みを浮かべる。
「うちの凄い展示会というサービス、知ってるよね」
「は、はあ……あの冊子に書いてあった内容くらいは」
「よし、それなら話が早い。TMさんの件は、そのスペシャルプランで行きたいなと思ってね」
「スペシャル……と言われましても、すいません。予算は展示会ブースの25万円しか用意してないんです」
たじたじとなる。正直、ぼったくろうとでもしているのではないか。そんな不安さえよぎった。
「オーケイ」
うんうん、と谷田は頷いて、指を折る。調子よく鼻歌でも歌い出しそうな様子だ。
「今回は35万で凄い展示会スペシャルプランでいこう!」
まるで他人の話を聞いていない。むっとして言い返した。
「ですから、25万円が予算なんです」
すると谷田は、ふむ、と天井を見やったかと思うと、今度は声音を変えた。先ほどよりは真面目な調子である。
「モノが売れない原因はなんだと思う?」
「……価格が高いから、ですかねえ」
まるで関係のない問いに聞こえたが、それでも聞かれると、つい答えを考えてしまう。
「そうだね。価格に見合うだけの価値を感じければ買わないよねえ。他には?」
「買う理由がないから……でしょうか」
「そうだね。価格相応の価値があっても、要らないものは買わない。いいじゃない、前田くん。他は?」
ついに前田くんときた。
先ほどから敬語すら使わなくなっているし、ずいぶんと馴れ馴れしい。
なんとしても完璧な答えを提示してやる、と前田はむきになった。
だが、二つまではさらりと思いついても、三つ目となるとそうもいかない。口を開いては閉じる。言葉に詰まっていると、谷田は助け舟を出すように言い継いだ。
「前田くんのところのマネキンは高いかい? お客様が感じる価値は低いかい?」
「いや、価格に自信はあります。売り場において着せ替えが楽であるということは大きな価値です」
轟の作ったマネキンの価値が低いなどと言われれば、黙ってはいられない。
考える間もなく、ぽんぽんと言葉が口から飛び出した。次第に熱を帯びて、早口になる。
「なにより、売り場においてマネキンは売り上げを上げることに貢献します。
マネキンは、ただのディスプレイじゃありません。
いわば、話さない販売員なんです。それも、うちの商品は特別に優秀な販売員、その価値が低いなんて——」
「はいはい、そこまで」
ひらひらと手を振って、谷田は前田の言葉を制した。苦笑を見せる。
「わかったよ、前田くんのところのマネキンがどれだけいいものかということは。
あとは、展示会でやってね。それじゃあ、そんな素晴らしいモノがなぜ売れないの?」
一拍の間を置いて、彼はすこし表情を緩めた。
それは、小馬鹿にしたものではなく、可笑しがるものでもなく、ただ温かい笑みだった。
「それはね、お客様が知らないからなんだよ」
「知らないから……」
「ああ。前田さんのところのマネキンは素晴らしいと思う。
僕はマネキンには詳しくないけれど、話を聞いていればそれはよくわかる。
しかし、いまはただそれだけ。
芸術品ではなく、商品として意義のあるものにするには、その存在を、その価値を伝えなければならない」
谷田はひどく真面目な目をしていた。
へらへらした男だと思っていたのに、こんな顔もするのか。驚いてまじまじ見つめていると、視線が遭った。
「——よね? だから、展示会にでるんだよね。だから、ここに来たんだよね」
「はい」
「応援するよ」
その言葉に背を押されるようにして、前田は思わずこう返していた。躊躇いはなかった。
「スペシャルプランでお願いします」
後から思えば、谷田が体の良い詐欺師であればすっかり鴨となっていただろう。
だが、これが前田の会社を日本一のマネキンメーカーに、そして株式市場に上場する快進撃の始まりとなる。しかし、その道のりは決して平坦なものではなかった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^
本日はここまで、
「25万円の予算」に対して「じゃあ35万円でいこう」
社員のひとりが「谷田さん・・ またはじまったよ・・・」という意味深なセリフの意味が今後わかります。
谷田って面白いですね!
しかも実際にゼンシンに、こんなキャラがいるなんて^^
ここだけの話・・・ 谷田は 弊社株式会社ゼンシン関東営業所を仕切っている谷 、そして私前田の性格や考え方をミックスしてできたキャラです。
ドラゴンボ-ルの”Fusion(フュージョン)”を思い出します^_^;
では続きは来週末かな・・・
不定期にボチボチ更新していきます!
おやすみなさい。
あっ物語にでてくる「凄い展示会ノート」は実在します。
「凄い展示会」をプロデュースする株式会社ゼンシン 前田雄一