今日も「量子進化」ジョンジョー・マクファデンの12章の量子進化について。


前回までのブログで、著者の量子力学に対する考え方が、なんとなく判ってきました。


まず、量子現象というものがあり、古典的現象とは異なる。

量子現象は量子現象の重ね合わせがあり、細胞内分子レベルで起こる現象である。

量子現象の重ね合わせは、量子コンピュータのように同時並列処理が可能である。

量子現象は連続的に起これば、方向性を持つ事ができる。逆量子ゼノン効果。

量子現象が古典的現象として現われる時と言うのは、たとえば酵素タンパク質が実際酵素として働いた場合などである。この時、量子測定が行なわれる、デコヒーレンスにかわる、重ね合わせがなくなる、量子的世界から古典的世界に移行する。


今までは、これらを組み合わせ、生命の誕生、細胞の機能説明を行なってきたようです。

それで今日は、遺伝子を絡めた進化を上の量子現象でもって説明します。DNAがどう変化するか。


まず、出だしの文章

生物がその作用に方向性を与える能力に量子測定が伴っているとしても、量子測定の影響を識別することはむずかしい。なぜなら、量子測定はほとんどの場合、ある特定の作用の方向に対して、ほんのかすかな、時には決定的な刺激を与えているだけだからだ。その影響をもっとはっきりさせるためには、このかすかな刺激、あるいは方向性のある作用を何らかの方法で固定しなければならない。もし、ある作用が細胞内の遺伝性の物質を変化させたとしたら、その変化は細胞内に固定される。これが量子進化の基本である。

と書かれているのですが、この文をよんで理解できる人がどれだけいるでしょう。

私は鈍だからでしょうか、何度読んでも理解できませんでした。それとも、もともとの著者の原文が悪いのか、訳が悪いのか?何が言いたいのか?


よく分かりませんが、多分著者の言いたい事を忖度すると、

“進化の方向性に量子測定が影響を与える。”でしょうか。

量子測定が実行される時とは、酵素タンパク質が酵素として働いた時だそうです。真偽の程は確かではありません。


この理屈、“方向性を与える”は、私にはよく分かりませんが、著者はそう信じているようです。逆量子ゼノン効果です。


私の考えでは、

量子測定を実行すれば、量子の重ね合わせがなくなり、その時点以降の量子の重ね合わせは新たな状態から始まります。リセットをかけられたようになるのです。

方向性が有るとすれば、そこからの再スタートとして考慮しないといけません。これは古典的考え方になります。

量子測定以前に、つまり重ね合わせ状態で方向性をつけようとすれば、量子コンピュータのように、何かアルゴリズムを見つけ出し、量子状態を壊さずに処理をして測定しなければなりません。

だから、方向性は著者の考え方では起こらないと思うのですが。


でも、私の読み間違い、もしくは量子力学の知識が及ばないのかも知れませんので、以下を読んでいきます。



まず著者は、DNAに異常をもった大腸菌の話から入ります。この大腸菌はDNAに異常があり、正常な酵素タンパク質を作る事が出来ないのです。作ることの出来るタンパク質は酵素の働きをしないタンパク質です。でもこのタンパク質は、内部にある陽子1個が別の位置に移動できれば、正常な機能を果たせるというタンパク質なのです。そしてこの1個の陽子の位置が、異常と正常の位置の重ね合わせ状態になっていると言うのです。


つまり、前回でもありましたように、量子の重ね合わせ状態がDNA遺伝子に存在し、

それは正常な機能の状態と、異常な機能の状態が重なっており、

このDNAからRNAに情報が移行しリボソームがそのメッセージを読み、タンパク質を合成する。このタンパク質は、異常と正常の重ね合わせになっている。

しかし、このタンパク質の酵素機能が実行されれば重なりがなくなる、

つまり、ラクトースが存在し、そのラクトースが加水分解されてグルコースとガラクトースに分解されたときに、量子測定がされ・重なりがなくなるという物です。

ラクトースが存在しないときは、何も起こらない。



そこで大事なのが、

もしラクトースが存在すれば、細胞自身がコード陽子に密集した一連の測定を行なうことが出来る。このラクトース存在下での測定は、陽子が互変異性の位置に留まる可能性を高くする事によって、変異の起こる割合を高めるかもしれない。

と言う事です。


つまり、ラクトースが存在すれば(環境中に大腸菌の食物が存在すれば)、

その大腸菌が、異常な大腸菌で、ラクトースを分解できない、食事が出来ない場合でも、

量子現象による、重ね合わせの可能性のある場合、

そしてその重ね合わせの中にラクトースが分解できる可能性のある場合、

次に、

実際その可能性がたまたますごく確率が低くても、

その可能性が生起すれば、

その確率が高まる、(大腸菌は食事が出来る確率が高まる)

という主張です。


情報の流れ(量子の重ね合わせ状態)は

DNARNA→リボソーム→(酵素)タンパク質→加水分解(ラクトースがある場合)

となりますが、

加水分解が実際に起こると、デコーヒーレンスになるのは

加水分解→酵素タンパク質→リボソーム→RNADNA

と矢印の方向に瞬時にDNAまで至ります。

この流れが特異的に、変化を促すという主張です。


そして著者はこのように考えると、環境が突然変異の確率を高めるという、適応変異を説明出来ると言うのです。


適応変異とは、例えば、

“ラクトースを分解できない、つまり食事を取れない、遺伝子異常のある大腸菌を、ラクトースの豊富な環境におくと、突然変異でラクトースの分解できる大腸菌に変化し、

この変化がランダムな変化に比べ際立って大きいと言う事が観察で明らかになっている、“

と言う事です。

ラクトースの豊富な環境が、異常大腸菌を正常大腸菌に特異的に変化させた、と言うもの。


でも私が思うに、著者は都合の言い事を、つまみ食い的に使い説明しています。

一番重要なのは、量子の重ね合わせが何時どの様な場合に細胞内で起こり、いつ重ね合わせがなくなる・デコーヒーレンスになるのか、ということが全くわかっていない事だと思いますし、


次は、逆量子ゼノン効果、

細胞内の量子の重ね合わせ現象が連続的に生起し、その後デコーヒーレンスが起こる場合、この方向性の確率が高まるとは考えられないのです。


前にも書きましたように、デコーヒーレンスが起こるまでは、方向性などありません。すべてが平等に変化し、デコーヒーレンスの起こった時点での結果は、見てみないとわかりません。それは、全ての可能性の中の一つが現れてくるだけで、古典的世界の結果と同じとなるのです。自然任せでコントロールできません。


しかし、デコーヒーレンスの起こった時点の影響が、起こる前(DNA)にまで瞬時に及びます。すると細胞環境が細胞内のDNAに何らかの影響を与えるという考え方は正しいかも知れません。

フィードバック効果があるかも知れません、でもこれは方向性を決めるとかの問題ではないのです。


ということで、私は著者の説を信じませんが、細胞内の量子現象は必ず起こっているので、これとは違った説が出てくると信じています。