いよいよ今日でこの「量子が変える情報の宇宙」を終わります。
この本のテーマの一つは、この世の根源と、それに関わる情報の位置付けをねらったものだと思われます。
それは、冒頭には著者の思いを代弁した、または著者がこの本を書くきっかけになった、アメリカの物理学者ウィーラーの「真のビッグ・クエスチョン」と、
最終章に出てくるウィーラーの言葉に、それが現れています。
まず、ビッグ・クエスチョンは
いかにして存在したか?
なぜ量子か?
参加型の宇宙か?
何が意味を与えたか?
ITはBITからなるか?
の5つです。最後のITはこの物理的宇宙でありBITは情報と解釈します。
そして、最終章の言葉は
「簡単に言えば、全ての物理的事象は、元をたどれば情報理論的な存在であり、それは「参加型宇宙」に存在しているのである。」
です。
つまり、量子の重ね合わせを解く・崩す(参加する事)のは、著者にとって「驚きの究極の源」であり、これがこの本の要点です。
量子の重ね合わせ、この物理的宇宙、そこから生まれる情報を紐解くのです。
おこがましいですが、これら結論に対しては、全ての物理的事象は量子力学的な存在であり、まあ、つまりはあたりまえの事が書かれている。そして真新しい事もなく、あまり感激はありませんでした。
でも、私には読み切れていない、深遠な考えがこの本にはあるのかもしれません。御興味があれば実本を読んで下さい。
実はこの本を読み始めた時に期待していたものがあったのです。それは、私の求めている、究極の問いで、ビッククエスチョンのもある「何が意味を与えたか?」つまり、意識のことです。
この問いに対する何らかのコメントを期待していたのですが、解答はありませんでした。楽しみにしていたんですが。
しかし、それ以外で、一つ面白い内容があります。コーリと言う人の「情報逓減の法則」です。
「中国語を知らないイギリス人が、中国語の新聞を評価する事にしたとしよう。彼にとって漢字は何の意味も持っていないので、彼はこの新聞の情報量をゼロと結論した。しかしその後、彼はこの新聞を訳してくれる人と出合った。
今やこのイギリス人は、同じ基準をもとに、この新聞に対して大きな情報量を割当てている。」、と言うよくある話なのですが。
この「情報逓減の法則」は
「情報を直接送受信するケースと較べた場合、中継者、すなわち2番目の通信経路は、情報をそのままの量で送り届けるか、あるいは情報量を減らしてしまうかのどちらかである。」というものなのです。
ですから、上の中国語新聞の情報定量法が間違っていると言えます。
そして著者は、情報が必ず減るのは、エントロピーが必ず増えるのとよく似ている、と言います。なにか関係がありそうだと言いますが、この論の発展はありません。
この「情報逓減の法則」は私には初耳で、またネットで調べても出てきません。
私なりに、この法則をよくよく考えて見れば、情報の意味をどうとらまえるかという事がポイントになると感じました。
つまり、情報の増減の根本が何に由来しているのかがポイントであると感じたのです。
情報とはそもそも、生命が作りだした概念で、人間が意味を与えます。
私はこの事が、情報の基本で、情報の根本だと考えます。
と言う事は、生命がこの物理世界に生存出来るという物理条件・物理環境が、
意味を与え・生存の可能性を引き上げる、という事実、
その事が裏にあるのです。
物理存在・環境が情報の根本にある。
それならば、この物理環境の受け手である生命体が情報を作り出している、と考えられますので、
私は、情報は逓減するだけなのではなく、作り出される、主体により変化する、というのが正解と考えます。
情報の基である物理パターンは変化しませんからね。
ですから、この物理環境・パターン(量子現象をも含む)をもとに、
「何が意味を与えたのか?」ではなく
“どうして意味と言うものが出来上がったのか”そしてその場合の“意味とは何なのか”を物理的にどう解釈すればいいのかを問わないといけないのです。
これが、情報を追究し、意識を求める手順です。
ですから著者の言う情報は、人間が与えた情報であり、情報の本質からは離れたものと考えられます。