題名に曳かれ読み始めました。
「他人の心は存在するか」金沢創著 金子書房 1999年
金沢は著者略歴によると、現在三菱化学生命科学研究所特別研究員、だそうです。
題名は実に面白そうです。が、内容は、
「「他人の心を知ること」が、論理的に不可能であるという事と、現実には可能であるかのように我々が振る舞うということ。この手品の種を探すことが、「他者」の問題を自然科学的に考えるということだろう。」を切り口に、他者の心とのコミニュケーション理論を、多くの識者の説から引用しまとめています。
いわゆる、コミニュケーション論でしょうか。
で、その具体的内容は、有名なシャノンの通信理論から、相手の気持ちを慮る深読みにいたるまでのコミニュケーション理論を整理して、
「相手に何かを伝えたり、出し抜いたりするために、他個体の意図を深くよみとるようになったヒトという生物は、他者の心という論理的に矛盾した観念を持つようになった。そしてその結果、無意味な記号に意味を見出し、石ころにさえ心を見いだすようになったと考えられる。」と結論付けています。
「ヒトは過剰に他者の意図を推論しようとする存在である」のです。
ここまでに至るさまざまな理論には、残念ながら著者のオリジナルな主張は見つけられませんでした。でも、多くの学者の説を分かり易くまとめた、教科書的解説としてはすばらしいできばえです。
そして、このようなコミニュケーション理論が終ると、最終章には「「私」の起源」の章があり、
「この宇宙には、物質からなる物理的世界と、唯一私のみが知りうる主観的世界とが並列して存在し、この両者は協約不能なものである・・・・唯一私だけが知りうる主観的世界とは、いったいどのような場所なのだろうか。」
を問題とし、検討して行きます。
この詳細の批判は次回に。