本日のブログは「脳はいかにして心を創るか」の

第3章「ニューロンおよびニューロン集団のダイナミックス」について読んでいきます。


前回、前々回とで、提起された問題が具体的にどう処理されるのか、

「誰が私をあやつっているのだろうか」

つまり「選択という生物学的能力を説明すること」です。

それに関連して気付きの本性「私」とは何か。心脳問題です。


そして、

「脳が環境の無限の複雑さにどう対応しているのか」そこから意味、表象が理解されていき、その結果外界にどのように働きかけるのか?」


の2点を問題とされました。


それで、今日はニューロンとニューロン集団の活動について。

脳がどのようにして心を形成するかを知りたいと願う人々は、脳を構成するニューロンが有する性質に注意を向けなければなりません。」と、まず宣言されます。

ということで、単独のニューロン説明に入りますが、

単独のニューロンの活動は、多くの方がご存知だとおもいますので省略します。

でも、知っていない人は、以下・その他を参照して下さい。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E


次に、著者はニューロン活動・状態につき、ダイナミックスの概念で記述していきます。この概念を理解しないと、著者の言っている事がわかりませんので。具体的には、

ニューロンの状態は、静止状態、さまざまな程度の興奮、ないし抑制状態や学習によって変化した状態などの間で多様に変化します。全ての可能な状態を一まとめにして、ニューロンの状態空間と呼んでいます。状態空間とは、実際の物理空間ではなく、例えばさまざまな度合いの覚醒・疲労・満足・失意などを経験する個人の心理変動のような、状態の可能な変動を意味します」として、まずニューロンの活動の種類を状態空間という言葉で区別します。そして、

ニューロンの状態変化は軌道と呼ばれる状態空間の通り道を形成しますが、それは休止から興奮へ、それから抑制を経て再び休止に至るというようなことを意味します」と。


ここで、ニューロンの状態変化を表すのに軌道と呼ばれる状態空間の通り道が必要になってきます。それはニューロンの活動を二つの変数を用い、2次元グラフ上に表現します。

一つ目の変数は、樹状突起内で起こっている電位の変動

もう一つは、軸策内のパルスレート(頻度)の変化。

これらの変化は、

シナプス結合、樹状突起内の電位変化、電位変化が軸策の入り口に到着、そこで電位の閾値を越えたときにパルスが発生、シナプス結合端に伝播、・・と言う事が繰り返されておこりますから、ニューロンの状態を把握するのに適しているようです。

この時に特有のパターン・状態空間が出来上がるのです。


しかし、単独のニューロンだけに焦点を当てているといけないと著者は言います

実際のところ、ニューロンは途方もない密度で詰め込まれているために、そのどの一つ、あるいはどの小集団をなすニューロンも、それら単独で他のニューロンを発射させたり発射させなかったりすることは出来ないのです。

つまりは単独ニューロン・ミクロスコピックな基盤では情報の意味、機能が見えてこないのを、メゾスコピック・ニューロン集団で情報を見ようということです。

つまりはニューロンの相互作用の結果が意識に繋がるのですからね。


具体的には「脳局所におけるニューロンの集団的活動は、パルス頻度ではなくパルス密度によって記述することが出来ます。パルス密度とは、周辺に存在する多数のニューロンの同時的発射を細胞の外側で記録さてたものです。

と、

一方波モード(電位の変動)において、波の振幅は、皮質の表面と深部における電位差として計測されます。」と、

二つの変数は変わりますが、単独ニューロンと同様に状態空間を概念できます。

ここで同期的発射とは、通常「40Hz」と誤って呼ばれているものも含まれます。


そして

メゾスコピックな状態の形成は、ニューロンがその集団的な活動によって細胞レベルを超えた生命体のレベルに近づく為の最初の段階です。」と、いうわけです。


このニューロン集団の状態空間における状態変化・状態遷移が、脳の働きの変化に相当しているのです。

皮質は、ある点アトラクターからリミット・サイクル・アトラクターへ、さらに次ぎのアトラクターへと飛び移ることによって次々と仕事をしていきます。」とあります。


ここで、アトラクターとはカオス状態での落ち着き点・ある落ち着いた一つの状態です。このアトラクターには何種類もあって、点アトラクターとかリミット・サイクル・アトラクターがあって、それらの間を遷移するというのです。

脳の活動がカオスだ、と理解し、そこにアトラクター概念を導入するわけです。

アトラクターは落ち着き点ですが、活動は活発で、ノイズ状態は変わりません。


そして、当然これらのアトラクターには違いがあって、

感覚皮質の各々は、静止状態の点アトラクターと活動状態にある点アトラクターのみならず、学習によって獲得されたリミット・サイクル・アトラクターの集合を有しています

こうして皮質の状態空間は、学習された刺激のクラスのそれぞれに対応するベイスンが複数個並置されているような、アトラクター地形を有しています。

と。

ここでベイスンとはアトラクターの存在場所のようなイメージです。


これらのアトラクターを遷移する事が。意識が変化していく事に相当しています。


そして

志向性の基本的性質は、刺激に対して受動的に応答するだけでなくて、脳の内部から行動を生み出す事にあります。瞬間ごとに新しい行動を創造していくこの能力の源泉は、神経集団における正負のフィードバック・ループにあります。アトラクター間の状態遷移によって生み出される脳の遍歴的軌道は、われわれの経験における習慣的行動を支配しています。学習によって形成されたアトラクター地形が、目標を目指す行動の信頼できる継起を生み出します。

と書いてあります。

冒頭に書かれた問題をニューロン集団の機能で解決を試みようとしているのでしょうか。



さて

現在、単独のニューロン機能が判明しかけています。グリア細胞も研究が進んでいます。そしてこれらの集合体であるメゾスコピックな回路の解析が待たれているのです。

この回路はいわゆる、電子回路の中の機能デバイスのような感じでしょうか。モジュール概念の回路です。一つの機能をこなすのです。


この著者の解析方法では「この方法によって個々のニューロンの働きは知る事はできませんが、それを知る必要もないのです。」と言っています。モジュール内はブラックボックスでいいと。いわゆる切捨てです。

が、違うグループでは、個々のニューロン活動の積み重ねからのアプローチもやっているのでしょうね。モジュール内の構成要素までをも含めての解析。

それぞれ独自の方法での追究がんばって欲しいものです。


http://www.meso-neurocircuitry.jp/

参考まで。