ガラスの梨 | じゅげむのブログ

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『ガラスの梨 ちいやんの戦争』越水利江子(ポプラ社2018/7)

 

ガラスの梨。そんな夏らしく、どこか郷愁を誘う題名を持った本のご紹介です。

 

最近、伯父から、曾祖父が戦争中室蘭の大叔父のところに身を寄せていたときに米軍の艦砲射撃に遭い、赤い布団を背負って逃げたところ(目立ってしょうがない!)、艦載機の機銃掃射の的になって危ないところだったという話を聞きました。日本のだれもが戦争の記憶と関わっているのだと、改めて思いました。

 

この本は、作者の母をモデルとした子が主人公の、作者へとつながる戦争の話です。
大阪に住むひとつの家族が、否応なく戦争に巻きこまれ、どん底にたたき落とされます。
ことさらにドラマチックというわけではなく、ストーリーはたんたんと進むように見えますが、描写はとぎすまされていてリアルで、目を覆いたくなる場面もあります。
そんな中でも、自分を失わず自分なりに考え続ける主人公や家族に、引きつけられます。
自分がそのような目に遭ったときに自分を保てるか。そのような状況になるまえに、避ける努力ができるのか。改めて考えさせられました。

 

戦争はどのようなものだったか、知るために。そして、自分の今生きている世界とどうつながっているか考えるために。何度も読み返したい一冊です。