貴方はステアリングホイールを動かしますか?それともタイヤを直接動かそうとしますか?


 車や自転車等を運転していて車体の方向を変えたい(曲がりたい)時に、貴方ならどの様な動作をしますか?



 ・ステアリングホイールを手で回しますか?


 ・タイヤの方向を直接手で変えようとしますか?



 勿論全員が「ステアリングを手で回す」と答えるでしょう。 その位タイヤを直接手で動かして車体の向きを変えようとする事はかなりの力技であり現実的では無いと皆分かり切っているのです。

 でもどちらの方法でタイヤの向きが変わっても結果として車体の向きが変わると云う事には変わりがないので、結果だけを見るとどちらを選択してもいい様に感じてしまいますが、誰一人としてタイヤを直接動かそうと云う人は居ませんよね。

 だってステアリングを回せばタイヤは楽に動いてくれる事を皆知っているから。



 しかしバレエ教育の場では、タイヤを直接動かす様な不条理な方法で身体を動かせと指示する指導者が多いのです。


 例えば「内転筋を使って脚をアンドゥオールして!」と云う様な指導法です。 個々の筋肉に直接働き掛ける様な指導はタイヤを直接手で動かそうとする事と等しく荒唐無稽でしかありません。






視点が違う!


 何故この様な荒唐無稽な、方法論がまかり通ってしまうのでしょうか?

 それは動きを見る視点が異なるからです。


 異なる視点とは、例えば動く車を「運転席から見る」か「車外から眺めている」かの違いになります。


 運転席(車内)からの視点では、『ステアリングを回した結果として車体の向きが変わった』となりますが、車外からの視点だと『タイヤの向きが変わった結果車体の向きが変わった』と見えるのです。 同じ事象でも車内と車外で捉え方は大きく変わります。


 言うまでもなく車外からの視点しか持っていない人は車体の向きを変える為には「タイヤの向きを変えれば良い」と考えてしまいます。 何故ならステアリング操作が見えていないから外から見える事象しか分からないからなのです。


 逆に運転席からの視点を持っている人はタイヤの動きは見えませんが、ステアリング操作したら車体の向きを変わると知っていてステアリングを操作しています。 でも動きは見えずとも結果的にタイヤが動いて車体の向きを変えています。




 何故この様な話を長々としているのかと云うと身体のコントロールもこれと同じだからです。


 「ステアリングホイール=意識」「タイヤ=筋肉」「車体の動き=体の動き」と当てはめて考えてみて下さい。


 体を動かすには筋肉をコントロールする必要がありますが、筋肉そのものに直接働き掛けてもタイヤを直接動かす様な物で余計な力ばかり使うのです。 それどころか自分の意図した動きとは正反対の方向に筋肉が働いてしまう事が殆どです。


 しかし正しい意識を持って体を動かそうとすると筋肉の動きは認知していなくとも筋肉は正しい使い方になるのです。


 凄く矛盾している様ですが筋肉は使おうと意識すればする程正しく使えなくなります。 それは筋肉を正しく使う為には先ず正しく使える条件を整えてからでなければ思う様には動いてくれないからです。

 ですから解剖学で説明している様な筋肉の使い方と云うのは正しい意識で動いている身体の状態を説明したに過ぎず、筋肉の動かし方を教えてくれている訳ではありません。


 これが解剖学の知識がそのまま指導に使える訳では無いと云う理由になります。 それに解剖学で説明されている事柄自体がバレエ的には誤っている事もしばしば見受けられるので全てを鵜呑みにする事にも高いリスクがあると承知して置いて下さい。






指導するとは?


 踊りを教えるとはタイヤ(筋肉)そのものの動きを説明する事ではなく、ステアリングホイール(体を動かす意識)の操作法を生徒が発見出来る様に導く事です。


 視点が誤っているとその視点からはある程度の論理が成り立つので、誤った方法論が正しいと云う結論に達してしまい正しい指導が出来なくなるので気をつけたいですね。


 でも誤った方法論と云うのは必ず何処かで整合性が取れずに論理破綻していますので確りと見極めればそれが間違っている事は見破る事が出来ますので生徒側も習った事を直ぐに鵜呑みにせず論理を理解しようと努めて下さい。





 





 5月25日㈯に『めるもバレエスタジオ』で私の特別講習会が開催されます。 この機会に是非ご参加下さい。 遠方の方も会員登録の上でライブ配信にご参加頂けます。 今回も質問タイムがありますのでお楽しみに(^_-)-☆
 詳しくは下記のサイトから↓