バランスを取り易くする条件とは?!


 『バランスを取る』事がどの様な事なのか殆どのダンサーが、プロでさえも勘違いしています。 勿論多くの指導者でも誤った認識で指導していると思います。

 先ずは『バランスを取る』と云う事がどの様な事を指して居るのかが正しく理解出来ていなければ正しい理論など理解出来よう筈も無いので、その事から話して行きたいと思います。




 皆さんは子供の頃に手のひらや指先にどれだけ長い時間棒を立たせて置けるかと云う遊びをした事はありませんか? 手を上手く動かして棒が倒れない様にバランスを調節しながら誰が一番長く箒やバット等を倒さずに居られたかを競って遊んだ覚えは私にもあります。
 しかしどの様な棒でも立たせられる訳ではありませんよね。
 ①ゴム製など柔らかくてゆらゆら揺れてしまう様な物
 ②長さが短過ぎる物
 ③棒の重心位置が下方にある物
 ④軽過ぎる棒等は手の上で立たせる事が非常に難しいです。


 ですから上記の逆が手の上で立たせ易い棒と云う事になります。
 それは、
 ①剛性が高く確りと形を保っている事
 ②ある程度の長さがある事(より長い方が良い)
 ③高い位置に重心がある事(より高い位置が良い)
 ④ある程度の自重がある事
 以上が手の上で立たせ易い物となります。


 実は身体を上記の棒の様にする事がバランスが取り易い身体の条件なのです。




“引き上げ”が出来ていれば全てがOK!


 では、それを踏まえた上で身体をバランスが取り易い条件に変えて上げましょう!

 先ず④の自重に関しては風船の様に体重の軽い人は居ないので考えなくとも良いです。
 ③は頭が元々重いので初めから重心位置は高いのですが、もっと高い位置に頭を上げる事で更に重心位置を上げる事が出来て条件が良くなります。
 頭が高い位置に上がると身体が引き伸ばされて筋肉が張り身体が歪み難くなるので自然と①と②の条件が良くなって行きます。

 つまり正しく“引き上げ”が出来ていれば身体は既にバランスが取り易い状態になっているのです。 それでも中々バランスが取れないと云うのは“引き上げ”をやっている積りでも身体が伸び切らずに居て、その為に歪みが出ていると云う事に他なりません。

 “パッセ”でバランスを取る時に瞬時にバーを離して自立出来ない人は、それが海外の著名な国立バレエ団の団員であったとしても正しく“引き上げ”が出来ていないのです。




バレエレッスンとは崩さない様に動く!


 『バランスを探して!』と云う注意は良くない指導の典型と言えます。

 この注意は「腰や頭の位置を動かしてバランスを探る」と云う事ですが、これは身体が緩む事を意味しています。 正しい位置の周囲で身体が動く訳ですからゆらゆら揺れていると言っても良いかも知れません。

 つまり前項で上げた①の「身体の形を保つ」が崩れてしまうのです。 そして長さも最大ではありませんし、重心も最高の高さにありませんから②③の条件も悪化します。

 この様な状態でも極一部の感の良いダンサーならバランスを探すのに時間は掛かりますが普通に立ててしまいます。 しかし、この様なバランスの取り方は美しく見えないのでバレエ的には嫌われるのです。





 バレエでは『バランスは保持し続ける物』で探す物ではありません。 ですから最初から身体を正しく引き伸ばしてバランスを取ったら、それを崩さない様に動く訓練を積むのです。 それを本当のバレエのレッスンと言います。







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