バーに全面的に頼る時もある!


 バーレッスンをしていると『バーに掴まらないで!』と必ず注意されるのでバーには絶対に頼っては駄目だと思う方も多いと思います。

 勿論それはその通りなのですが、バーに頼らなければならない場合もあると云う事を今日はお伝えしたいと思います。



 ではバーに頼る時とはどんな時なのでしょうか?



 例えば、両手バーで“シャンジュマンドゥピエ”等の跳躍系のテクニックを練習する時や“バランス”の練習等の時です。


 何故バーに頼るのかと云うと腕を正しく使ってバーを押す事で体幹側の筋肉、特に前鋸筋付近を働かせて体幹を引き伸ばして強く保つ為と腰を持ち上げる感覚や空中で静止する感覚を養う為です。

 この練習により跳躍では脚をどんなに動かしても体幹が崩れる事無く安定しますし、“アラベスクやアティテュード”等のバランスでも安定感が増します。


 しかし勘違いしないで下さい。 ここで言う『頼る』は体重をバーに掛けると云う事ではありません。 あくまでも『正しくバーを持ち、腕の筋肉を使う』と云う事なので体幹を崩す様な体重の掛け方は厳禁です。 つまり正しいバーの持ち方と腕の筋肉の使い方と云うのがあるのです。


 この様な手のひらと腕の使い方は“パドゥドゥ”では必須の技術で男女共に身に付けている事が好ましいですが、男性が技術に秀でていると基礎が不安定な女性の足りない部分を補って、ある程度踊らせて上げる事が出来るので女性側が『一人では踊れないけどパドゥドゥなら踊れる!』と云う勘違いを生む事にもなり兼ねないのです。

 でも、それは錯覚ですので、本当に踊りが上手くなりたかったら支えて貰うのでは無く自分自身が正しく動く為のロジックを理解して練習しなければならないのです。 女性が正しく出来た上で男性の助けがあれば相乗効果で本当に美しいパドゥドゥが踊れる様になります。

 男性だけが上手では一方通行のサポートになり介護の様な踊りになるので気を付けたいですね。 またプロの男性もサポートが未熟な人はとても多いので自分のテクニックを過信せずに常に上手な人から学んで行く姿勢を見せて下さい。 その姿勢があれば必ず教えてくれる人が現れて自分の技術を高めて行けますから。

 





バーの押し方はプリエで床を押すのと一緒!


 さて『バーに頼る』と言っても闇雲に荷重を掛ける訳ではありません。 先程も書いた通り先ず大切なのはバーの持ち方と腕の使い方です。


 バーは手のひらで優しく包み込む様に密着させて隙間が出来ない様にします。 これは“プリエ”の足の裏で床を掴むのと全く同じ事ですよね。 力任せにバーを掴むと手のひらがバーに密着せず力が有効に使えませんし繊細なコントロールも出来ません。



 次にバーには常に一定の力を掛け続ける事が基本です。 身体を押し上げる時も降りて来る時も床で静止している時もバーに掛かる圧力は一定のままにします。

 『降りて来る時はバーを押さなくても良い』と考える人も居るかも知れませんが、降りて来る時にバーを押す事が身体を引き上げて、柔らかく着地する為のコントロールとなり次の動きへの準備ともなるので、重力に任せて落ちて来る自由落下をしては次の動きに繋がらずスムースな踊りにはならなくなるのです。

 また静止している時もバーを押しているのは、何時でもバーを押せる様に準備して置く為です。 脱力状態から急にバーを押して身体を持ち上げるのは絶対に無理なので、予め備えて置かねばならないのです。

(ですからリフトが上手く出来ないと云うのは男女共にこれが出来ていないからです)


 これらを全て正しく行うと『これ(腕の使い方)はプリエだ!』と云う事が理解出来る筈です。 床を押す時の脚の使い方とバーを押す時の腕の使い方が全く同じで、引き伸ばし方だけでなく動かし方でも脚と腕は同じ感覚なのでレッスンの時に腕の意識が希薄なダンサーは脚の使い方も正しくは無いと言えるのではないかと思います。




 『バーに頼らないで!』と云う注意は自立が出来ていないダンサーへの物で『バーに頼って!』と云う注意は自立した上で更に身体を引き上げ体幹を強くする為の物だと思って下さい。


 正しいバーへの頼り方を身に付けてバーに寄り掛かるリハビリ状態にならない様なイメージで毎回レッスンしましょうね(^_-)-☆







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