歩き方が汚いのは何故?


 最近見たいくつかの舞台での感想なのですが『走る姿がガニ股で汚い!』と云うのを先ず最初に感じてしまいました。


 跳ぶ、回転すると云ったテクニックは一生懸命練習しているのでしょうが“歩く・走る”や“着地する”と云った所謂“繋ぎのパ”の練習が疎かなのです。 指導者の意識がその辺りには注がれないのか、ダンサー達が指導者の言う事を聞かないのか、とにかく舞台に出て来て踊り出す前に、その後の踊りのクオリティが伺い知れてしまうのが非常に残念でなりません。 実際に踊り出すと歩き方の汚いダンサーは確りと身体が使えなくて踊りも酷いのです。


 “歩く・走る”が出来ていないと云う事は第5ポジションが出来ていないと云う事なのでバレエの基礎を根底から甘いレベルでしか練習して居ないと云う事が分かってしまいます。

 どんなにテクニックに秀でて居ようとも、歩き方は付け焼き刃では直りません。 基礎力と想像力が問われます。 これは脚が太いとか身体が筋肉質でゴツゴツして見えると云った事にも同じ事が言えます。 本当に正しく基礎を練習していれば筋肉ムキムキには成らない筈なのです。 逆に言えば筋肉ムキムキのダンサーとは力で抑え込む様な踊りをしていて基礎からは外れていると云う事なのです。


 踊る時には脚を“アンドゥオール”させたままで居る事を一生懸命練習しますよね? それは歩く・走る時でも同じですし、テクニック前のプレパラシオンやパの終わりでも同じなのです。 脚のプリエ・タンデュ・アンドゥオールを一歩一歩、前脚も後脚も脳天からつま先まで全てに意識を持って動かなければ簡単に“ウチマタ・ガニ股”になってしまいます。


 跳躍等でも空中で脚がタンデュ出来て居ない、踏み切り脚が足の裏まで使われていない、体幹が保てて居ない等、山程の問題を抱えたまま舞台に立っているダンサーを見ると『もっと正しい指導を受けるべき』だと思ってしまいます。 勿論、作品を作る為には時間的な制約から基礎訓練に割く時間が限られていると云う事情もあるでしょうが、指導者の指導力に問題がある場合も屡々だと思うのです。





細かい所まで見落とさない集中力!


 美しい踊りとは教科書通りの動きをベースに観客にアピール出来る様にポジション等を整えて、それを滑らかに正確に行う事です。

 ですから基本的に左右を対象動かせる様に意識していますが、多くのダンサーは『つま先を伸ばして!』と云う注意に対して右足は反応しても左足は伸びていないと云う様な左右非対称に全く気が付かずに踊っているいるのです。

 指導者でさえ右足が伸びているのを見たら『全て伸びている』と思い込んで左足が曲がっていても気付かない人が多いので、その様な見落としをしていると踊り(または指導)のクオリティは下がり、テクニックも雑になるか全然出来なくなります。

 “アッサンブレ”や“ジェッテ”では振り上げる脚は伸びても踏み切り足が確りと働いている日本人ダンサーを見る事の方が私は少ないのですが、それでも私が注意すると皆出来るので、これは意識の問題なのです。

 これらはバレエ教室で普段から確りと意識すべき事を教えられて訓練されて居れば起こり得ない事だと思います。 要するに指導者達がこう云う事を見落としているか、若しくは全然見えていない事が生徒達の踊りを駄目にしているのです。



 踊りの全ての場面において指導者、ダンサーは見落とし、若しくは見えていない事が多過ぎるので、もっと細かい所まで全てを把握出来る様に見る目を養う訓練をすべきです。

 特にパドゥドゥは見ただけで問題点が解らなければ指導出来ない筈なのですが、そのレベルに達して居ないのに間違った指導をする指導者が多いので、もっと勉強して欲しいですね。

 完璧でなくとも完璧を目指して常に意識を高く持って踊る姿勢のダンサーはとても力強く、そしてエレガントに見えます。 それはコンテンポラリーを踊る時だって同じです。 その様な踊り手になる、育てられる為に頑張りましょう。








 5月25日㈯に『めるもバレエスタジオ』で私の特別講習会が開催されます。 この機会に是非ご参加下さい。 遠方の方も会員登録の上でライブ配信にご参加頂けます。 今回も質問タイムがありますのでお楽しみに(^_-)-☆

 詳しくは下記のサイトから↓