「働くこと」と「愛すること」こと、大人にできることであり人生そのもの | 幸せな家庭の作り方〜Happy Family〜

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東京下町で暮らす5人の子沢山ママです。結婚27年目。
長男25歳(社会人・一人暮らし)長女15歳・次男14歳・三男9歳・四男6歳。
非常勤保育士として働きながら、オリジナル家計簿を販売中。

こんにちは!


3連休ですね。


わが家はインフル三男と、ひきこもりの連休です。


さて、先日、この本を読み終えました。



東畑開人さんの本はこれで5冊目です。

『居るのはつらいよ』
『野の医者は笑う』


『心はどこへ消えた』
『聞く技術聞いてもらう技術』





『なんでも見つかる夜にこころだけが見つからない』



東畑開人(とうはたかいと)さんは、京都大学大学院卒の臨床心理士さんです。


この本は、2022年3月に発行された比較的最近のご著書です。


子どもの頃からマンガ好きな私。


東畑さんを知った、最初のきっかけは例に漏れず『居るのはつらいよ』のマンガでした。



「この原作を読んでみたい」と思って読んだのが最初。


東畑さんは、経歴だけ見てもわかるように、とっても頭のいい方です。


でも中学受験で第一志望が叶わなかったこともよく書かれていて、学歴を鼻にかける感じはないんです。


そんなことも何となく親近感を持てる一因かも知れません。


『居るのはつらいよ』には、卒業して就職先に困り、職を見つけて沖縄まで行った数年の経験が書かれています。


それから、大学の准教授になったり、ベストセラーを出して書店の賞も受賞されてたり、ご著書も人気の方です。


頭が良くてちょっとシャイな感じもあり、そんな東畑さんが「こころ」について綴る言葉はとても多角的。


繊細かつわかりやすい言葉を尽くして、人の心理について多面的に分析されています。


一方から決めつける感じがなくて、安心して読めるのです。

 

この「安心して読める」という感覚が、彼の本を読み続ける要因なのかも知れません。


この本は、人を小舟に、人生を航海に例えて、東畑さんはその小舟に寄り添う「補助船」として書かれています。


この世界観を理解したら、後はスイスイ読めました。


複雑な心理を、できるだけわかりやすい言葉で、でもちゃんとその複雑さは残したまま、説明してくれています。


おすすめは、3章に出てくる不眠症の女性ミキさんのストーリーです。


親の望むように勉強して学歴を得て、外資系コンサルになったミキさん。


この女性、PDCAサイクルを回すことが命!」みたいな女性で


相談しに来た理由も「睡眠が改善したら私の生産性はもっとあがる」と言うほど。


自分の生産性のために眠りたいってアセアセ


ミキさんは、「働くこと」に飲み込まれ、人生から「愛すること」を失っていました。


そんな彼女が、自分の感情や人生を取り戻していきます。


それは決してスイスイ順調な道ではなくて、その紆余曲折の様子や、途中で出会った彼(タツヤさん)との出会いやいざこざ、さらに、彼から見たアナザーストーリーまで書かれています。




大人にできなくてはならないものとは何か​?



本文より引用↓


“「大人にできなくてはならないものとは何か」というようなことを問われたときに、フロイトは「働くことと愛すること」と答えました。”(p84)


ここは思わず、ボールペンを手に取りメモした一文。


「ワークライフバランス」みたいな言葉ではなく、人の生活に根付いた「働くこと」「愛すること」となのが、他に足がついていて、とてもしっくりきます。


そして、この言葉についての解説が続きます。


(以下要約)


「働く」には労働以上の意味を含みます。


それは例えば、親の手伝いをする子どもが「働きもの」と言われるように、お金が発生するか否かとはまったく関係がない。


しかし「働く」には「目的」がある。なんらかの目的を達成するために「する」のが「働くこと」。


これに対して「愛すること」の目的は「愛すること」そのもの。恋人と会うのは会うためで、用もないのに待ち合わせをし、必要性もないのにメッセージのやりとりをするのが恋人。目的を達成するためではなく、それ自体が「目的」となるもの。


そしてここからは、私がうるうるしつつ、心に刺さった文章です。


また引用しますね。


死者との関係は「愛すること」の最たるものですね。亡くなった大事な人のことを偲ぶのは「願いを叶えてもらう」とか「厄を追い払う」という目的があってのことではありません。その人を思うことで心が慰められる。それで十分。死者を思うことの報酬は死者を思たことにある。”(p85)


“愛することの本質は、何かを「する」ことではなく何かと共に「いる」ことにあるのです。

「働くこと」と「愛すること」。人生の二つのモードが絡み合いながら、僕らの人生はできている。”

(p86)


この「働くこと」と「愛すること」を、こんなに明確に、しかもわかりやすく説明できるのは、本当にお見事!と感心している私もいつつ。


一方では、父を思って涙腺崩壊しながら読みました。


昨日は、父の月命日でした。


実家の母は午後は小学校の放課後見守りのボランティアに行くので、お墓参りは午前中に行くとのこと。


たまたま昨日は夫が休みだったので三男の看病をまかせて私はパートへ行って、終わってから、四男とお墓参りにいきました。


母がすでに、キレイなお花に替えてくれていました。


“死者を思うことの報酬は死者を思えたことにある”


この本の言葉が心に残っていて


「お父さん、私にできることって、それだけでいいのかな?」


「たまに思い出すだけだよ?それしかできないよ?」


「でも、それだけでいいらしいよ」


なんて、父に語りかけてしまいました。


亡くなってもなお、こころに思う人がいる。

亡くなってからも、何かにつけて思い出す人がいる。


働くことと愛すること。


それが人が生きる営みで、人生そのものなのでしょうね。