リーマンショック後少しは落ち着いた投機資金が規制の隙間を潜って蠢いている。
オバマ政権下である程度の投機資金への流出を食い止める施策も殆ど意味を持たなかった。

流動性の罠という言葉は聞いた事が有ると思いますが、掻い摘んで解説しましょう。

例えばデフレ下では金融緩和や政策金利の引き下げで民間の調達欲に訴えようとするが、どんなに市場に資金を供給しても実需が伴わない実体経済では借り手はいない。

すると実質的に0%に近い金利になると国債や他の債券を持つ意味がなくなり、機関投資家やヘッジファンドなどの投機筋は低金利通貨を調達して貨幣として何かに投資する行動に出る。

例えば、円やスイスフランの金利は0.2%前後で借り入れが出来る。その資金を調達して新興国の株式や債券に投資する。また、比較的安定した米国株にも資金が回っている。

これが、所謂 円carry-trade:スイスフランcarry-tradeと言われる投機資金だ。

詰まり、実体経済が伴わない(担保の裏づけのない)資金の供給なので信用乗数が伴わずに投資家同士のマネーゲームになっている。
ゼロサムゲームではないがそれに近い鞘取り合戦が空虚に行われている訳だ。
こうなってくるとハイパワードマネーの役割は殆ど機能せずにマネーサプライも増加しない。

ところが、この様な投機資金が原油先物や商品先物に流れると実体経済にまで悪影響を与える。詰まり、この様なギャンブリングが一般人の生活にも圧し掛かってくる。

また、現在は欧州危機で世界経済に暗雲が立ち込めてきている…欧州が炎上すれば世界株式市場や債券市場からcarry-tradeの資金が撒き戻る…詰まり、ユーロや高金利通貨の大暴落も招く事になり、全通貨に対して一時的には超円高になるだろう。

然しながら、日本国債は一時避難場所としてバブルに近い高値だが、1000兆円を越す借金大国の国債にこんな値打ちがある訳はない。
よく「日本の国債は国内で消化されているから大丈夫」といった本末転倒の議論がなされている。一見、正しいように思えるが、裏を返せば信用がないから外国機関投資家や政府は購入しない訳だ。魅力があるならもっと外人保有比率が上がる筈…単純に日銀圧力で金融機関が買い支えているだけなのは業界人なら誰でも知っている。
金利が低いから魅力がないというが、金利平価を理解していればヘッジする事でプレミアムがつくからこの議論は成立しない。

勝間和代とか森永卓郎とかインフレターゲット論を浅墓な俄か知識で論じているのには興醒めする…流石にマスコミにも干されつつある。

そんな個人批判はさて置き、日本の国債市場は鎖国状態だった訳だがTPP参加によって、国債先物市場の規制はオープンになる。
これには深い意味があってアルゴリズムによる大量の取引が可能になるわけだ。詰まり、欧州国債が暴落した後には日本が標的になる可能性は極めて高い。
此処10年位はヘッジファンドが日本国債を暴落させようとしたが、日本の金融機関の買い圧力で跳ね返された。

           参照    2013年大暴落後の日本経済

然しながら、これ以上の買い上げ余力はない。最終的には日銀の国債買い上げという御法度の行為が敢行されるだろうが、こうなれば日本国債の信用は一気に失墜するし、投機筋はレバレッジを効かせた天文学的金額で売りを浴びせる。

その時にはやはり基軸通貨である米ドルが本領を発揮するだろう…超円安の到来だ。
スタグフレーションになれば1ドル500円~1000円なんて事も有りうる。
こうなりゃ、輸出企業が儲かると言う次元は通り越し輸入コストで経営は立ち行かなくなる。

今、投資するなら金でもプラチナでもなく米ドル…然も、キャッシュで持つ必要性もあるだろう。
詰まり、銀行や証券会社、郵貯に預けていても凍結されれば流動性が失われる…凍結解除後はハイパーインフレで円の価値は軍票のように紙切れ同然になるだろう。

PS:今更、投信を買うお人よしは居ないだろうし、個別株で儲けるなどと言うのは過去の話だ。
また、FXで多少(数百万~1000万)儲かっても円換算するなら円が暴落すれば紙切れになるのだから一時の夢である。
詰まり、経済の本質と乖離した金融資本主義はねずみ講と同じで必ず崩壊する。