お客さんがセリフをよく聴いている。

役者が相手のセリフをよく聞いている。

「面白かった〜デュラスは昔読んだだけだったけど、もう一回読んでみる」
という劇場スタッフの感想を演出クリスティーヌが嬉しそうに話していた。

明かにフランス語話者ではない私のセリフにもみんな耳を傾ける。

セリフの意味はわかっているが、日本語のセリフをしゃべる時のような勝算が持てないので、圧力とニュアンスと方向性と音の高低と間を稽古で探り続け、でも最後は

「セリフよ届け!」

という強い願いとともに発する。

これが、実際当たった時が本当に嬉しい😃

当たったかどうかも、かなりわかりやすい。そこがこっちで芝居をする時の面白さでもある。

日本で芝居するときよりダイレクトな感じがしている。

当たったとき、相手の演技も当たり前のように変わるが、そのあと、袖に入った時にその場ですぐ誉めてくる。

でもそれは、私がちゃんとセリフを言えたことを喜ぶ、上からの視点ではなく、今、正に、舞台上で俺たち生き生きしたねという喜びの顔なんだと思う。

自分が喋るために必要なのはしゃべる相手で、だからしゃべってるだけに見えて実は、「よく聴いている」。

生き生きできないことをなんとかしようとするのより、生き生きできたことを広げ続ける。

そこだな。

そのベースは、どうすれば固定できるのだろうか。

そこがまだ、未発見。