昨年から格闘技ブロガーでもあるので、格闘技関連の書籍の感想文も書いていきます。

 

 

 

 

突然ですが、まずは本書の前に読んだ『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』(著:岡田尊司、光文社新書)に触れたいと思います。

 

われわれは、日々の対人関係や家族との生活、性生活や子育てといった親密さを前提とする関係において、ストレスや困難を抱えやすくなっている。結婚率や出生率の低下は、主に経済問題の側面から論じられることが多いのだが、実際には、今よりはるかに貧しい、食うや食わずの時代でも、高い結婚率と出生率を維持してきた。飢餓ラインぎりぎりで暮らしていても、家庭を持ち、子どもをつくり続けてきたのである。ところが、今では、多くの人が、自分一人で過ごす時間や自分のために使うお金を削ってまで、家族をもちたいとは思わなくなっている。
それは経済問題とは別のところに原因がある。そこには愛着が稀薄になり、回避型愛着が浸透していることが関わっている。われわれの身には、人間から別の“種” へと分枝していると言えるほどの、生物学的変化が生じているのである。

『回避性愛着障害 絆が希薄な人たち』より

 

回避性愛着「障害」と書くとショッキングな見た目ですが、実際には回避型の愛着スタイルというものが、一見“ふつう”に暮らしているように見える人々も含めて、現代に蔓延っているというのが岡田氏の主張です。その原因となるのは明確な虐待やネグレクトだけでなく、親から強い支配を受けるなど、一般的な家庭でも普通に起こりうるものも含みます。回避型の愛着スタイルは性生活や仕事生活にも影響を及ぼし、「パートナーと親密な関係を築けない」「子育てや介護に消極的」「自分の人生や仕事に対して無関心」といった傾向を示すことがあるのだそうです。

 

何か特定の原因があるわけではないですが、私自身もあろうことか自分の人生に対して無関心になってしまうことがままあり、そもそも人と関わらずに過ごす休日が異常に好きなので、断定はできませんが、回避型の傾向があるなと思いました。そうしたなかで、同じく回避型であると岡田氏が分析する、種田山頭火やJ・K・ローリング、エリック・ホッファーの事例を知れたことは心強かったです。本記事では触れきれないので、興味のある方は読んでみてください。

 

 

なぜこの本に触れたかというと、『覚醒』(著:那須川天心、クラーケン)を読んでいて、彼の幼少期のエピソードを知ったとき、安定した愛着スタイルを築くうえでマイナスにしか作用しなそうなことが書かれてあったからです。

 

 父親は、叱る時はグーだった。手加減はされているが、グーでガツン、と殴られる。僕は動体視力が良いので、グーが飛んでくる軌道は見えているけど、完璧に避けると余計に怒られてしまう。

『覚醒』より

 

母 私も何度階段の下で涙したことか。かわいそうで「なんでここまでやんなきゃいけないの?」と思いましたね。

『覚醒』より

 

私はなにもここで那須川家の教育方針を批判したいわけではありません。天心くんのプライベートがどうかは知りませんが、少なくとも我々の知る彼は「自分の人生や仕事に対して無関心」とは程遠く、誰もが納得せざるをえない結果を残しています。上述のような、いわば回避型の愛着スタイルを植えつけられかねない環境で育った彼が、なぜ?と思ったのです。

 

答えはシンプルでした。

 

 

信念を持って動くことが大事かなと思いますね。《略》いろんな人が否定すると思うんですよ。僕も否定されたし。中学校で「僕は格闘家になって、その道で食っていきます」とか先生に相談しても「解るけど、就職してからでもいいんじゃない?」とか。《略》それに負けたらダメだなっていう。

—那須川天心(RIZIN.33 五味隆典戦後インタビューにて)

 

そうか、この人には迷いが無いんだな、と。初めはやらされていた格闘技にも、今では心から納得して取り組んでいる。回避型愛着スタイルの克服には「人生に主体性を取り戻すこと」が必要だと岡田氏は述べていましたが、まさにその「主体性」が彼にはある。今さらなに当たり前のことを…と思われるかもしれませんが。

 

そう、五味戦後に天心くんが涙ながらにコメントしていた言葉も、実は僕にめちゃくちゃ刺さりました。

 

 

「常識を変える奴は非常識な奴」—いや、僕はなにも常識を変えたいなんていう高い志を持っているわけではないのですが、人生に真の意味で主体性を持ったとき、はたして「常識」という要素がどれだけ重要かという疑問は確かにありますね。うん。

 

 

『覚醒』に直接関係ないことばかり書いてしまいましたが、この本、普通に面白いです。那須川天心という格闘家がどんなことを考えて日々の練習や試合に臨んでいるのかが分かり、勉強になります。興味のある方は読んでみてください。

 

 

 

 

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年末年始に公開された記事の告知です。

 

TURNさんの2021年ベスト・アルバム記事にて1作品について、個人別ベスト曲記事にて4曲について書いております✍️

 

 

 

ぜひ読んでみてください!