『The Power of Now』のときも書きましたが、前提として、こういう系の本は、必要としない人はたぶん一生必要としないだろうし、そうでなくともしっくりくるものを1冊くらい見つけられたらそれでいいと思います。じっさい、本著で述べられている内容も『The Power of Now』で述べられていたことと重複する部分が多く、ほぼ同じことが言い方を変えて繰り返されている印象を受けました(それでもその言い方によって絶妙に刺さるタイミングがあったりするので、馬鹿にできないのですが)。




そうしたなかで、この『A New Earth』と『The Power of Now』の最大の相違点を挙げるならば、前者のほうがよりプラクティカルな面、いわば「どう生きるべきか」に言及している点でしょうか。この手のスピリチュアル系自己啓発本で「何をやるかは関係ない」「外的なものは本質でない」などと読むと、「じゃあ日々やってることも、それ自体は無意味なわけ?」と考えてしまいます(し、究極的にはそうみたいなのです)が、本著では外的なパーパスをいかに真の目的(〈在る〉こと)と結びつけるか、という点にも触れられていました。


ちょっと脱線します。よく「○○になりたい」ではなくやりたいことの本質で職業を考えなさい(e.g. 「医者になりたい」じゃなくて「人の役に立ちたい」)などと言われますが、それとて即物のレベルを出ていないなと感じることがあるんですよね、個人的に。だから、そういう次元の話が世の中にもっと増えればいいな、と思ったりします。まぁ、エックハルト・トール(Eckhart Tolle)に言わせれば、そうやって現実と違う状況を望んでいる状態はpresentとはいえないわけなんですが。


あと、そう、本著で気に入った点を一つ。優しいんです。最終章の最後から2番目の節だったかな? 何者かになるプレッシャーが常にかけられ、何者かになろうと希求してしまう現代に生きる人々にとって、伝え方はうさんくさいかもしれないけれども、「自分はこれでいいんだ」と思わせてくれる部分があります。ペインボディの存在を認めているあたりも、原因論を否定する『嫌われる勇気』とかよりもずっと優しいですよね、態度として。自己啓発本の著者なんてたくさんいるなか、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が『Mr. Morale & The Big Steppers』でエックハルト・トールを援用したのも、そういう背景からなのかなと思いました。