アドベンチャーゲームの値打ち:カプコン(逆転裁判)篇 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

カプコン

平均:65.3

 今や『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』以上に国内ゲーム市場への影響力を持つ『モンスターハンター』シリーズを擁し、家庭用のパワーバランスが崩壊しつつある中、国内サードメーカーでは最右翼に位置し続ける大阪の老舗企業。看板ブランドは『モンスターハンター』のほか『バイオハザード』『ストリートファイター』『デビルメイクライ』などアクションゲームが主。アドベンチャーゲーム的には言わずもがなだが、オタク方向へ傾倒しがちなこのジャンルにおける最大の良心とも言えるミステリゲーム・『逆転裁判』シリーズを保有しており、ADV冬の時代である現在でも定期的にソフトをリリースし数十万クラスのヒットを継続している。

 本来なら『ふしぎ刑事』『バウンティハンターサラ』『株トレイダー瞬』『えどたん』などのオリジナルソフトも取り上げるべきなのだが、歴史の長いメーカーとあって取り上げるには範囲が広すぎるので今回は『逆転裁判』シリーズに絞ってのレビュー。




逆転裁判 蘇る逆転 NEW Best Price!2000

『逆転裁判』 80

 再プレイしすぎて大まかな進行フラグを体が暗記してしまったため、今はもう純粋にゲームとして楽しめないので評価不能でも良かったのだけども、企画趣旨からしてこれをスルーするのは許されそうにないので一応。基盤としているシステムは「オールドスクール」とされているものだが、推理に対立軸を置くことでアウトプットと展開に同期性を持たせている点が当時も今も評価された部分。その辺の魅力をシリーズで最もシンプルに表現しているのが『1』なのは間違いないし、今見ても掛け値なしの傑作。尺不足+『蘇る逆転』の追加で作風に偏りがあるのは気になるけれど、そこは『3』へ繋ぐ壮大なチュートリアルと捉えるしか。

逆転裁判2 NEW Best Price!2000

『逆転裁判2』 67

 はっきり言えば、GBA三作では中だるみの回。バランス面が難ありで裁判・探偵パートともに(裁判パートは全ツッコミ、探偵パートはサイコロジックで)フラグ立て感があり、試行錯誤がアウトプットやテンポの障壁になってしまっている感が他より強め。「逆転サーカス」は確かに好きだし、プロレス的なやり取りは巧節の極みみたいなもんなんだけど、ゲームとして単体で『1』と『3』に比べると見劣りする。

逆転裁判3 NEW Best Price!2000

『逆転裁判3』 85

 恐らくパッケージとして最も完成した『逆転裁判』。的確に積み上げられたテキスト、象徴的なライバルキャラクター、キッチリとハマり込んだギミック…どれも下敷きとするものは『1』と同じだが、どれも平均値で上回っているきっちりとした正統進化もの。ゴリ押しロジックやオカルト化など巧舟色が強すぎる嫌いがあるのは事実だけど、集大成と呼ぶに相応しい構成の上手さもテイストも巧舟にしか出せないそれ。現状では間違いなくシリーズ最高傑作。

逆転裁判4 NEW Best Price!2000

『逆転裁判4』 40

 ファンからは鬼子のように嫌われる本作をどう評価するかがある種の試金石なのは解っているけど、それでもゲーム単体でならこのくらいの点数が妥当。異常に遅いテンポと回りくどいテキスト、破綻している過去作との関係性、不愉快なキャラクターの言動など減点対象とされている部分は今更語るまでもなく、駄作であることに疑う余地は一切ないが、ゲーム的な短所とする場所は『2』の時点で見られたもので、単に主人公交代だけが不評の原因ではないのでは。

逆転裁判5

『逆転裁判5』 51

 確かに『逆転裁判』は「キャラクターありき」と批判を受けるシリーズだけども、アレは議論の色付けという言い訳が前提にあるわけで、本当にキャラクターありきにしちゃダメだよね。と突っ込みたくなるくらいパズラー的な推理の筋書き・討論の展開が行き当たりばったりで、ミステリーゲームとしての底が浅い。そりゃビジュアルはケチのつけようがないし、旧作の人気キャラが出ればファンは喜ぶかもしれないけれど、テキストで構成されたADVの出来栄えを左右するのはそこではないでしょ。ただまあ『5』内で一番出来が良かったシナリオがDLCで収録されている上に、構成的に本来あったものが中抜きされたとしか思えない(これが原因で本編内では成歩堂と主要キャラの関係性が希薄に)あたり、『4』以上に大人の事情を感じさせるナンバーではある。ということで、DLCシナリオを3話目に遊ぶなら+5点で。

逆転検事 NEW Best Price ! 2000

『逆転検事』 53

 原作の巧舟の手から離れてギコチナイのは仕方ないにしろ、やっぱりテンポ感だったり証明する楽しさだったりのゲームとしての深みは本家には力負けしている。特に3話以前がボロボロ。ファンサービス面で頑張ってるのは解るけどもキャラクターアイテムの域を脱していない。

逆転検事2 NEW Best Price!2000

『逆転検事2』 72

 非・巧舟の中でどれかと言われれば、やっぱりこれ。シナリオ構成そのものは凝っているので、ゲームではなく本格ミステリものとしてみれば『逆転』シリーズではお話的に最も練られているかも。相変わらずテキストはクドいし討論ゲームとして見るとかなりやっつけ感と味気なさが漂っているが、初代で問題点だったテンポや難易度のムラは(ゲームの平坦化というカタチで)解消され、キャラクターも地に足がついたものになっており、『逆転』シリーズと名乗っても遜色のないところまで持ってきたスタッフには素直に拍手。

レイトン教授VS逆転裁判

『レイトン教授VS逆転裁判』 65

 後半、討論ゲームとしては目に見えて盛り返すのでクリア後の印象こそ良いものの、『逆転裁判』の探偵パートをそっくりそのまま『レイトン教授』へ組み替えてしまっている関係で、「ラビリンスシティ」の設定説明に裁判パートへ費やすべき描写量が奪われ、事件に対する情報不足から議論やトリックの底が浅くなっている上に、世界観を膨らませすぎて舞台やキャラクターの掘り下げもしきれていないため、どうにも前中盤で食い足りなさを覚える。批判の多いメインストーリーは例えご都合主義あってもナゾへの具体的な説明がなされている時点で『レイトン教授』本編より良心的だと思えるし、『逆転裁判』がトリック証明ゲームである限り許されないであろう内容でもあるので、利点がなかったとまでは言わないが、クロスオーバーの旨味が分散しすぎて「どちらかのパートが邪魔」に映ってしまうのは、この無茶かつゴリ押しな企画への嫌悪感抜きにしても残念。

ゴースト トリック NEW Best Price! 2000

『ゴーストトリック』 70

 このビジュアルありきなゲームシステムにしても、溢れんばかりな犬猫おやじへの情愛にしてもそうだが、恐らく巧舟の趣味性が最も出た作品。全面2Dポリゴンなんて大掛かりなことをしてる割に内容は純粋にパズルをしてるぶん、ストーリーとゲームに密接性は認められないので、お話勝負なのは間違いないけども、(ファンとしては言いにくいところではあるが)10数時間引っ張るにはトリックが大したものじゃないのがネック。それだけに世界観なりキャラクターなりゲームの試みなりが好みと合うか、つまり巧舟への親和性によって作品との距離感が決まる。



(基準)

商品レベルに達していない:0~24点
限られた人間にしか楽しめない:25~39点


発売10年内に忘れられる:40~54点
それでもファンは覚えている:55~69点


ジャンルを代表する傑作:70~85点
ゲームを代表する傑作:86~100点


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