ADV市場の現状分析 2013年版 | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【ADV市場ノ現状分析 2013年版】

- 3DS -

逆転裁判5レイトン教授と超文明Aの遺産

主なパッケージソフト:『逆転裁判5』『レイトン教授と超文明Aの遺産』など

 制作費の高騰と家庭用市場の縮小に伴った各社タイトルの厳選化もあって、シリーズもののリリースが顕著だった2013年。ご多分に漏れずADVもブランドものが話題を占めたわけだけども、目玉だった『逆転裁判5』はシリーズ最高の初動(25万本。『4』は24.2万本)を記録したものの、以降の販売曲線は『4』を下回りランキングは40万本に届かず(34.2万本。『4』は43.7万本で)フェードアウト。『レイトン教授』シリーズの完結編として投入され、ロンチで発売された前作より好条件だったはずの『超文明Aの遺産』は初動こそ若干上回ったものの伸び悩み、推移としては前作割れほぼ間違いなし。…という状況が示す通り、かつてDSで浮動層として「伸びしろ」になっていた(量販店などで購入するであろう、もっとはっきり言えば『DS西村サスペンス』を買っていたであろう)ライトユーザーの絶対数が減少した影響をモロに受けているのが見て取れる。

 これはDS向けADVブームが「脳トレ」層と操作上のテクニックを必要としないADV需要が迎合して生まれたというバックボーンと、中小メーカーが支配的なジャンルの特性から考慮しても不利なのは疑う余地がなく、今後予定されている3DS向けのオリジナルADVはスマートフォン市場での実績がある『おさわり探偵 小沢里奈3』くらいしか見当たらない状況からもパッケージでの展開が閉塞感に包まれていることを示している。この辺りの話題は、単価の低いスマホにニーズを吸い上げられた云々の議論になるところなんだろうけど、肝心のスマホはまだ移植市場の色合いが強く流行ってるADVソフトもDSブーム時のそれとはかけ離れていて家庭用の代替になっているとは言いづらいので判断は難しい。いや、『ガールフレンド(仮)』や『吉祥寺恋色デイズ』がADVニーズか、物語ニーズか。そもそもDS自体ADVニーズだったのかは主張が別れるかもしれないケド。

 こういう現状(少なくともサードは『逆転裁判』『レイトン教授』の二枚看板を早期に投入して頑張った、のに先細っている)だからこそファーストの任天堂がもっと早い段階で『アナザーコード』『ウィッシュルーム』的な実験タイトルを定期投入し地盤を作っていれば市況もまた違っていたのかもと思っちゃうわけだけども、『モンハン』『ポケモン』で普及台数を伸ばした今でも話題になっているのは『ドラクエ』『カービィ』『ゼルダ』など毎度おなじみなメンツと来られた日にゃ、そりゃ私だって更新する意欲奪われちゃうよ。ってなー言い訳を(論旨捻じ曲げて)しちゃうわけですよ。


“成歩堂3部作”が高解像度グラフィック化! 『逆転裁判123 成歩堂セレクション』が2014年4月17日に発売決定
2世代またぎのリメイク移植が決定し、減少傾向(コア化している)とはいえ『逆転裁判』ブランドそのものは磐石。つまり言えばDS期のような『逆転裁判』を旗手としたADVの再ブレイク、なんて筋書きは夢のまた夢。というのがはっきりした年だったのでは、と。


 と、脱線しかけているので話題を3DSへ戻すと、ことパッケージでとなると実績のあるシリーズ以外は期待できないのは間違いない。じゃあ3DSでADVはもうないのかと言うとそうでもなく、単価の低いDL市場のほうでオリジナルタイトルがそろそろ芽を出しそうな雰囲気ではある。3DSのDLゲームといえば開始当初から脱出ゲームを親の敵の如くリリースされていたわけだし、実際今もそうなんだけど、流石にこのジャンルも飽和を極め始めている関係でアークシステムワークスは青春ミステリ風味の『脱出アドベンチャー』シリーズ、D3パブリッシャーはデス・ゲーム調を若干付け足した『THE脱出ゲーム』シリーズを展開しており、パブリッシャーが違うだけで漏れなくインテンス開発というウルトラCを決めている実態から目を背ければ一時期よりオリジナル性を付与し易くはなっているってなワケ。

 相変わらず脱出ゲーム以外は取り立ててなにかがあるわけでもないし、DLタイトルにパッケージへ迫るパフォーマンスができているか、今後出てくるのか、という点は発展途上の市場なだけに疑問は残るけど、DS時代に中小メーカーから発売された4~5時間でクリアできてしまう様なアレ系の受け皿になれるポテンシャルはあるはずなので、オリジナルソフトの投入できる土壌が築かれれば面白くなって来るはず(願望込み)。3DSは周期的に収穫期へ差し掛かってきているだけに、2014年の飛躍に期待したい。

- PS3・PSV -

BEYOND : Two Souls (初回生産限定版) (初回封入特典 追加シーン・オリジナルサウンドトラックなど豪華ダウンロードコンテンツ 同梱)解放少女 SIN (通常版)

主なパッケージソフト:『BEYOND : Two Souls』『解放少女SIN』など

 ADVのリリース数自体は安定しているのがPS3。ただし国産タイトルは概ねアニメを原作とした「キャラゲー」の類であり、扱いもアドベンチャーゲームというよりも“メディアミックス媒体のひとつ”という立ち位置にすぎない。あえて挙げれば5pb.などノベルゲーム畑から少数ながらオリジナル作品をリリースしているものの、残念ながら興業的に成功しておらず、2014年は科学ADVシリーズの新作を出すとは言えそれ以外に期待できるかといえば厳しい(据置き機でリッチに2DのADVを遊ぶという需要自体が10年くらい前からほぼ失われている)のでは。
 PSVitaもだいたい同じ状況で、マルチプラットフォームのひとつとして機能しているにすぎず、3DSと同じくオリジナル新作には期待しづらい。状況的には初期のPSPと似ている(PS2からの移植ソフトが殆どだった)が、『モンスターハンター』による大型普及、ライバル機のADVブームなど好条件が揃っていた当時とオリジナルの企画数が同じ曲線を描くことはまず有り得ず、今の所は移植を含むノベルゲームの受け皿以上の役割を望むのは酷だろう。

 PS3は海外産のADVもパッケージで幾つか投入されているが、『BEYOND:TwoSouls』『THE WALKING DEAD』はネームバリューの割には苦戦しており、特に『BEYOND:TwoSouls』は本国でも微妙な雲行き(NPDの発売月ランキングにはTOP10入りならず。年明けに100万本到達。)なことを考えると、資金をリッチに注ぎ込んだ大作ADVのリリース数が上向いてくる…ということはなさそう。DLタイトルならポイント&クリックの雄であるTelltale Gamesが怒涛のリリースラッシュを行っているが、ニッチでありローカライズに手間のかかるジャンルなので国内に輸入される可能性はかなり低い(なんせ最も知名度のあったのが『THE WALKING DEAD』)かと思われる。

- XBOX360 -

 国内ではXBOX360市場そのものが壊滅。海外産のADVが発売されるとしてもXBOXOneが普及した数年後かと。

- スマートフォン -

ガールフレンド(仮)

主なソフト:『ガールフレンド(仮)』『ミステリールーム』など

 単価の低さ、インターフェースとの親和性、ゲーム層以外にも浸透している普及傾向などの相性の良さから近年ADVのプラットフォームとして無視できないところまで成長して来ているのがスマートフォン市場。なのは間違いないんだけども、その単価の低さが災いしてリッチなオリジナルコンテンツが配信される環境がイマイチ整っていない印象が強く、まず目に付くのは脱出ゲームで、次にフィーチャーフォン時代の遺産や家庭用の移植、あるいは基本プレイ無料の乙女ゲーム、更に調べると海外ソフトのローカライズや零細・インディーズメーカーのオリジナルソフトが見つかる…という感じで、目立つ場所に(脱出ゲーム以外で)「スマートフォンのために作られたADV」がない。逆に言えば、移植市場としてはかなり高い発言力が有しているかと思われ、今後は家庭用で発売されるソフトはスマートフォンへの展開を前提にしたものが増えるかと。まあ、家庭用のADVで当初からクロスプラットフォームを仕掛けるほどの大作がどれだけ発売されるかというのは不透明だけども。

 一応アドベンチャーと名乗っているものも多いのでソーシャルゲーム系の方にも言及させてもらうと、殆ど遊んでいないので実態がわかりません。教えてください、富野です。

【コメント】
あけましておめでとうございます。(一ヶ月の時間差)



Twitterボタン