帰ってきたADV関連作品の感想 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
昨年公開予定だった記事です。

【感想】



3DS『-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~』 評価不能

 元CING組の金崎泰輔氏(ウィッシュルーム等でキャラクターデザイン・ディレクターを兼任)が参加するサスペンスADV。シナリオは咲良まゆ氏。CINGといえば鈴木理香氏が手がけるテキストも醍醐味だったので、そのハードルは高いと思うけども、新しくスタートを切るだけに独自色の伝わる作品に期待した…ものの、ご存知のとおり2時間くらいで終わるボリュームで全4~5話の1話目みたいな内容だったため、作品として所感が述べれるほどの要素が見当たらない。ほぼ体験版みたいなものを売ってしまった感は否めないだけに、もうちょっとまとまった形で世に出すべきだったのではというのは、誰もが思うであろうところではあるけど。



3DS『クリーピング・テラー』 50

 日活ゲーム業界参入第二弾。という漢字の字面で占められた概要説明。ゲーム内容は簡易『クロックタワー』以上でも以下でもなく、つまり若い女がシリアルキラーに襲われ続ける例のあれ。如何にライトユーザー向けと言えど難易度が平坦すぎる嫌いはあるといえ、雰囲気作りは意外にしっかりしており、3DSで遊ぶADVがない際の選択肢としてはあり。



PC『Her Story』 45

 データベース検索を通して、断片的に見ることのできる事情聴取の映像からストーリーの全体像を想像させるという意欲的な試みが世界的に評価されたインディーゲーム。テキスト入力の手探り感を現代に翻訳したアイデア勝負に見える作品だけども、主要ワードの検索範囲内に必ず「とっかかり」を用意しているデザインの丁重さもそれなりに評価できる。「想像で補完する」ことが主題であるとはいえ、ストーリーの骨組みを把握した後の〝ヤマ”のなさは正直きついところがあり、中盤以降はゲーム的にも話的にも尻すぼみ。アイデアを出して形にしたところで息切れしちゃったか感みたいなものは漂う。

ウォーキング・デッド シーズン 2 【CEROレーティング「Z」】 - PS4

PS4/PC『THE WALKING DEAD Season2』 54

 近年のゾンビ界では価値基準の一つとなっている大ヒットドラマ『ウォーキングデッド』を題材とし、海外の賞レース等で絶賛を受けたゲーム版の第二弾が、当初ローカライズを行ったサイバーフロントの撤退からのスクウェアエニックスへの権利移動など紆余曲折を経て、初出より2年半よーやく日本上陸。発売とあわせてSeason1のPS4版が廉価でリリースされ、パイの小ささから高価格帯がデフォルトなこの手の作品では珍しく優遇されており、『Life is Strange』から続けて攻めた商業戦略が行われた。
 ゲーム的には変化はほぼなく、「あの世界の続き」を見たい人向けの作品なんだけども、お話的にはロメロ型に協調性が壊れていく様が如何にもゾンビで前作よりパワーダウンというのが所感。いや、前作はキワモノばかりのゾンビ界でも輪をかけてお話がしょっぱいゲームジャンルでは屈指の出色だったので、超えるのは相当難しい話だったんだけども。ということで、国内も対抗して『アイアムアヒーロー THE GAME』だしてください。

逆転裁判6 - 3DS

3DS『逆転裁判6』 53

 スタートラインが『4』という修羅の道を歩んでしまった王泥喜編の完結編だったわけだけど、その舞台となるクライン王国の法廷に当初立っていたのは成歩堂龍一だったのがこのナンバリング最大の矛盾。W主人公体制は視点の分散にしかなっておらず、誰に感情移入させたいのか、クラインの革命も主要キャラクターも何が見せたいのかボンヤリとしたものにしかなってないあたりパッケージとしては失敗作。唐突に盛り返し始める最終話の後半は山崎剛らしい手の込んだ作りでシリーズでも上の方の出来だった(相手検事のキャラクタデザインはどうにかして欲しかったケド)ので、近年のナンバリングでは一番惜しい感じの漂う作品ではあったのかも。もう少し作品世界に自由度があったら…と思わずにはいられないけど、それが『大逆転裁判』なのを考えるとこのシリーズ袋小路に入っているとしか言いようが。

ZERO ESCAPE 刻のジレンマ

3DS/PSVita/PC『ZERO ESCAPE 刻のジレンマ』 60

 オーソドックスなトゥルーエンド型だった初代、簡易『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』だった前作と来て、今作。やってたことは時系列(縦軸)とルート概念(横軸)の分解だったわけで、売りはトリックへの落とし込みだったわけなんだけど、試み自体は成功していてシリーズ内では最もシナリオとゲームプレイ(なんとオールドチュンソフトなバッドエンド探し!)を一致させたゲーム的な没入感があった。ただ海外へのチャレンジでムービー主導になったのは、悲しいかな低予算なので映像としてチープ。観ていてかなり、かなり厳しい。伏線回収へ比重の置かれ、展開一つ一つを覚えるタイプの作品ではないとはいえ、シーンとして残るものはほぼなかった。CSが極寒の時代でなければもうちょっとリッチに挑戦できたのか、はたまた画やテンポをリッチにしたらしたで『タイムトラベラーズ』みたいになっていたのかは神のみぞ知るなんだろうけど、やるにしてもそれは据置きなのではとは思う。国内メーカーでそれは予算的に無理なのも知ってる。

ダンガンロンパ3 −The End of 希望ヶ峰学園− Blu−ray BOX I 〈イベント優先販売申込券付き初回生産限定版〉 [Blu-ray]

Animation『ダンガンロンパ3 The End of 希望ヶ峰学園』 視聴済み

 このシリーズは人狼ゲームを下敷きに、あくまで「絶望」や「希望」は設定か状況として描かれていて、決して個々のエピソードや人物造形ではなかったと思うんだけど、人狼要素をほぼ捨てた(デス・ゲームも『バトルロワイヤル』型でしょこれ)本作では、わざわざそこを踏み込んで描こうとして、端から「ない」ものを描いている感がある。つまりアニメで絶望をキャラクターで描こうとすればするほど、対立軸として記号化されていた部分の、具体性のなさ、内実のなさが露呈しちゃっていて、過激なことをしよう、俺たちはトンガってるんだ、みたいな集団暴走を延々と見させられてるようで観ていて痛々しい。その割に、ファンの願望を叶える=希望だった。としか受け取り用のない着地点になってしまっているのには、ファン向けと言うよりファン感情に取り込まれてるとしか言いようが。読者からの批判で主人公が殺された『続・白い巨塔』と同パターンですな。

ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期 - PS4

PS4/PSVita『ダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』 65

 このパッケージの評価って、結局最終話のあれをどう受け止めるかなんだろうけど、デス・ゲームをメタ的に捉えるテーマ自体『バトルランナー』とかの時代からネタにされたベタな主張なわけで、叩かれるようなことではない。じゃあなにが悪かったかと言えば作家が「フィクションに依存せず現実へ帰れ」という正論へヒステリックに依存してしまった(非常に小さい規模で『Air/まごころを君に』と同じ過ちを繰り返してしまった)点につきると思う。少なくとも、ラムちゃんに「責任とってね」と言わせていた『ビューティフルドリーマー』※のような、大人の伝え方をすべきだっただろう。
 トリックを紐解くミステリーゲームとして見れば展開はよく練られており、世間から既に下されている評価のとおり話の本筋は手垢がつききったこのジャンルでも頭ひとつ抜きに出ている。相変わらずミニゲームはつまらないし、キャラ造形がいい加減食傷だし、フィールド広大すぎてタルイのは確かだけど、ゲームの出来としては決して酷評されるようなものではない。それだけに、『逆転裁判4』のような扱いを受けるのは流石に不当評価だろう。

うる星やつら2  ビューティフル・ドリーマー [デジタルリマスター版] [Blu-ray]劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に [DVD]
※『うる星やつら ビューティフルドリーマー』終盤での、ヒロインのラムが夢(=視聴者にとって居心地の良いフィクション)から覚める直前に主人公諸星あたるへ言ったセリフ。ちなみに『AIR/まごころを君に』の場合は「現実へ帰れ」とばかりに実写の客席を映し、フィクションから覚めたら女に「気持ち悪い」と言われる。

オカルティック・ナイン 1(完全生産限定版) [Blu-ray]

Animation『Occultic;Nine』 視聴済み

 志倉千代丸が原作小説を先行して発表していた科学シリーズの第5弾。アニメと同時にマンガ版も展開しており、ついにゲームが最後発となってしまったこともあって、XBOXONE先行だった『カオスチャイルド』以上に地味な立ち位置となってしまった。話の構造としては恐らくシリーズで最も手が込んでいるし、オカルト要素もちゃんとギミックとして機能していて面白かった。んだけども、構想が12話で収まりきる内容ではなかったのか、映像に乗せているものが情報過多にもほどがあって、ヒジョーに見苦しい。例えばノートにビッシリと、しかも小さい文字が書かれていたとして、文章内容を論ずる前に「え、これ超読みにくいんだけど」と、思うじゃん?このブログも、文字ビッシリでとっても読みにくいじゃん?



PS4/PSVita/App『レイジングループ』 61

 フィーチャーフォン時代から細々と続くケムコのデス・ゲーム路線の最新作。オリジナルタイトルは単価が低めに設定されがちな買い切りアプリでは珍しく強気な価格設定と、それに見合うスケール感を実現した点でリリース時から話題となっていた。人狼ゲームがモチーフとなっているが、内容的にはループものの手法をこれほどかとガチガチに引用した手堅いものとなっており、テキスト・造形面では90年代のアダルトゲームを土台にしていることからも、「ひぐらしのなく頃に」ブームから10年以上経過した2010年代も後半のこのご時世に遊ぶにしてはノスタルジックが過ぎるかも。完成度が高いわりに作家性は貧弱という意味では『DUNAMIS15』と似たような病状を患っている。

【コメント】
神宮寺三郎復活に乗じて復活する、そう思ってた時期も僕にはありました。

ダンガンロンパ霧切 1 (星海社FICTIONS)

Novel『ダンガンロンパ霧切』 51

 「ダンガンロンパ」要素を全撤廃しても普通に読み物として成立するであろうフツーの本格ミステリ。ちゃんと起承転結整っているし、トリックはヘタをすれば本編より凝っているため、ホンの出来は同じレーベルから発売された『ダンガンロンパ・ゼロ』より上なんだけど、「ダンガンロンパ」としては『ゼロ』の方が優れているという、ファン商売ゆえの矛盾を抱えているのがメディアミックス作品の難しいところ。まーでも単品として見ると一冊ごとのプロットは弱いし、「ダンガン」層を狙ったであろう描写は若干の気恥ずかしさが漂っているし、原作ではまず出てこないであろうミステリ作品陣への言及が微笑ましい(「ダンガン」ファンが島田荘司読むかは知らんけど)しで、点数とすればこんなもんではと。



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