近年遊んだゲームの感想(1口メモ) | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】

今年はやります。

 

【近年遊んだゲームの感想(1口メモ)】

 

『デトロイト ビカムヒューマン』 78

販売:SIE 開発:QuanticDream

 

QuanticDreamってゲームというより映像とインタラクティブの融合を目指してるスタジオだと思うんだけど、今回で『HeavyRain』から評価を受けていたアプローチ、つまりフォトリアルなグラフィックスに裏付けされたQTEによる没入感表現は臨界点に達したかなと。ストーリー的には「ロボットに自意識が~」と言い始めた時点で「それって手垢つきまくってますよ」以外の感想は持ちえなかったし、実際展開も見たことあるものなんだけど、あくまで話としての面白さは二の次でインタラクティブであること。プレイヤーがドラマへ参加することを最重視してデザインされている印象で、『HeavyRain』『Beyond』以上に雑音が少なくなったそれは非常に純度が高かったと思う。まあ逆に言うと分岐はゲーム的なお約束として入れてるだけでいらないし、軽視しているからこそ再プレイ性の低さが海外で減点されてしまったんだろうけど、正直このソフトが魅力としている部分に対してそこの因果性は少ないんだよね。日米で評価が割れたのも、日本はゲーム的でないことへ対しては寛容なのかなと思ったり思わなかったり。

 

『EVE rebirth terror』 68

販売:エルディア

 

『the lost one』がコケて以降、このシリーズが『burst error』の劣化クローンで摩耗していったのは誰もが認めるところだったので、正直「またか」としか思っていなかったし、今回もやりたいことは『burst error』のリバイバルであり90年代の再現なのは間違いないと思うんだけど、これまで以上に「『burst error』ってこういうところが面白かったんだよね」という再確認に対して丁寧にそして熱心に作りこまれていて、元ネタのゲームとして面白かった部分を上手くなぞれている。いやむしろ、「表面的に『burst error』的なものをなぞっているところが邪魔。」と感じるところまで持ってこれており、『EVE』抜きでもコマンド総当たり系の探偵ゲームとしてフルプライスに相応しいものになっているんじゃないかな。ストーリー表現がテキストに偏重しすぎてたり、演出ベースが90年代中盤で止まっているのは自分のイデオロギーに引っかかるけど、このジャンルでは久しぶりに傑作水準だと思います。

 

『十三機兵防衛圏』 評価不能

販売:アトラス 開発:バニラウェア

 

時系列をちらした群像劇をデータベース消費へ偏重させた、かなりマーケティング的なものを突き詰めているストーリー表現は素直に面白い。んだけど、分岐性もコマンド総当たり的なシステムも「データベース消費をゲームというお題目でさせるための言い訳」という印象で、ADVとしての没入感は少ないかな。突っ込んで言えば話もゲームも「あらすじ」の連続で、これって地続きなものとして見るとストーリーとゲームの融合みたいなの実は薄いんじゃないの、と。

遊んだ感想としては「ストーリー表現を限界まで高めたSLG」で、ゲームとプレイヤーが参加するドラマとして合致していくジャンル的な感情移入への高まりは(話の構造的な見せ方は文句なしで良いんだけど)あまり感じれなかったかな。ということで、ジャンル違い扱いで評価不能。普通にゲームとして出来は良いし、無理やりADVとして見ても高得点なんだろうけど…性癖の問題です。

 

『大逆転裁判2 成歩堂龍ノ介の覺悟』 72

販売・開発:カプコン

 

このシリーズの魅力ってどこかと言えば、やはり推理をアウトプットする中でのキャラクターとのコミュニケーションの楽しさが一番に来ると思うんだけど、それって技術的な部分での継承や発展がかなり難しいものだから『4』以降の迷走を招いていたわけで。原作の巧舟がディレクターを担った『レイトンVS』『大逆転裁判』ともに画面はリッチでもコミュニケーションは雑音ばかり増えていったんだど、この『大逆転2』は演出のゴージャス化とコミュニケーションのボリューム感がようやく調整できていて、久しぶりにトリックを解いて検事と討論して話が発展していく…という従来のやり取りにゲーム的な楽しさを取り戻せたんじゃないかなと思う。ストーリー面で見れば(おそらく初代の作品・商業的な不振が原因だろうけど)よく言えば構想やトリックの出し惜しみが少ない、わるく言えば尻切れトンボなので、この「大逆転裁判」というシリーズ自体プロデュース方針に振り回されてしまっている印象が否めないのは、出来が良いだけに残念。

 

『AI ソムニウムファイル』 未定

開発・販売:チュンソフト

 

2000年代前半のノベルゲーム文法を翻訳した『極限脱出』シリーズも『ZERO ESCAPE』でいい加減食傷だったわけで、シリーズを仕切りなおすうえでどういう方向性で来るのかなと思ってたらまさかの90年代エロゲーの再翻訳だったのがこの作品。画面作りはリッチだし、ゲームプレイ的には平均的なところではあるんだけど、どこかで見たキャラクターがどこかで見た展開をいつかやった操作性で織りなしてる風景はどこかノスタルジックかな。おそらく中盤くらいまで進めてるんだけど、興味がかなり減退して積んでるので、クリアしたら加筆する。かも?

 

 

『ダイダロス ジアウェイクニングオブゴールデンジャズ』 18

販売:アークシステムワークス 開発:Neilo

 

ゲーム的な特徴だった舞台の実在性や演出のリッチ性が摩耗し、結局残ったのは設定だけ。というのが神宮寺三郎シリーズの現状だと思うので、その打破を担っていたであろうこの作品は結構期待していたんだけどね。まったく活かされない舞台性、ぽっと出のキャラが表面だけ信頼関係を築いたのちにバタバタ死んでいくドラマ性、せっかくリッチへ舵を切ってるのに見栄えだけで特に没入感にはつながっていないゲーム性…どれも「こうしたかった」という構想は見えるけど肉付けは全くできていない思い付きの発表会的な何か。話や世界観に矛盾があるとか、シリーズの文脈外とかそういう小さな問題じゃなくシンプルに物の出来として商品未満かな。

 

『探偵 神宮寺三郎 Ghost of the Dusk』 55

販売・開発:アークシステムワークス/オレンジ

 

じゃあ結局、アークシステムワークス以降のDS神宮寺って何がいけないかっていうとアプリパック(新作も家庭用特化ではなく、アプリの拡張版的な立ち位置だと思う)にしかなっていなくて、今回のナンバリングはこういう話が軸でこういう演出的な特徴がありますよというパッケージ性が『灰とダイヤモンド』以外は確保できていなかったことにあるんじゃないかなと。

待望の復活を遂げた今回も、話のスケールやプレイ感覚を中編規模できっちりまとめて来ていて熟練された再放送テクニックではあるんだけど、本編を特徴づける要素は廃墟ものというプロットへ偏重してしまっていて、演出やゲームプレイなどのパッケージングの面でほかのDSシリーズと同じくパンチが弱い。短編もDSの中では一番没個性という印象なんだけど、『愛ゆえに』だけが異彩を放っているので怖いものみたさで行ってみてもいいかも。

 

『探偵 神宮寺三郎 Prisme of Eyes』 44

販売・開発:アークシステムワークス/オレンジ

 

これもGotDと同じくアプリを解析度の高いものに作り直しただけで、前提として家庭用ゲームとしては画面の情報量が少ないよねと。

アプリはアプリで演出性が弱いのを強烈なキャラクター性を持ったゲストやライターの作家性を優先することで特徴づけようという路線が『キトの夜』以降は見られていて『イヌと呼ばれた男』『果断の一手』『連鎖する呪い』あたりは成功しているんだけど、収録されている短編はその文法は用いられていなくて、ヒキの為に無茶な描写が連なって最終的に破綻している印象。かといってゲームの楽しさとか、新宿の舞台性を感じさせる演出とか、キャラクターの生活感とか、そういうのにも無頓着だから、神宮寺三郎の年齢設定に反して対象年齢が低い印象は否めないかな。

リメイクのラインナップ自体は出来が良いものをチョイスしているので、未プレイなら短編のおいしいとこどりができるかも。というか、それ以外に商品価値はあるんだろうか。

 

『シルバー2425』 65

販売:日本一ソフトウェア 開発:グラスホッパーマニファクチュア

 

須田剛一って今となったら「反モラルな言動をサブカル加工してプロレス的なワリキリでやる」ことが作風として受け止められてると思うんだけど、本質的にはそのワリキリ含めてかなり冷淡なモノの見方をしてる人なんじゃないかな、という印象が初期作にはあって、それが一番理解できるものとして作品に土着しているのが初代『シルバー事件』。できてないのが『ムーンライトシンドローム』。土着させた仕掛けは設定やビジュアルもあるけど、状況把握できないながら事件の輪郭をなぞっていく「Transmitter」と実質的な種明かしとなる「Placebo」のマルチサイト構造の効果が強くあって、作品内で説明されない部分と説明されている部分そして説明されきっていない部分のバランスが興味を削がれるギリギリ手前ぐらいで調整されているのが、初代を傑作水準へ押し上げていた…というのが自分の評価。

逆に『シルバー事件25区』は全シナリオ中盤くらいになるとプレイヤー置いてきぼりでストーリーが勝手に進んでいっちゃっていて、理解できる奴だけついてこい的な独りよがりが色濃い印象で、前作での魅力だったギリギリ許せる感は崩壊。追加シナリオやビジュアル・UI面で作り直しを図った今回のリメイクも、残念だけど本質的な問題の解決には至ってない。近年の須田作品はプロジェクトの巨大化に迎合してトンガっていた部分が丸く加工されていった印象はあるけど、それでも一般に理解してもらうためにはある程度メジャーな供給には乗ってないといけないんだろうな。というのがパッケージ全体の感想。

 

『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』 53

販売・開発:ハッピーミール

 

いや、ファミコン期のADVってこんなにテンポよくなかったでしょ。というのが触りの感想なんだけど、それでも現代のゲームとしてちゃんと加工されていて予定調和なトコロも含めて「レトロなゲームの再現」ではなく「レトロっぽいゲーム」として安心感を持って遊べたかな。結局ステロタイプなのでゲームとしての特徴はかなり弱いから、何度も楽しめるというわけでもないのが痛いところか。

 

『VA-11 Hall-A』 未定

 

本質的には女性バーテンダーの私生活を覗くのが目的で、物語進行の障壁としてシステム的なのはあるけど内容的にバーテンとかコミュニケーションとかそういうのをテーマにした作品ではない。じゃあこのレトロなビジュアルとか、サイバーパンクって何なのって考えたら、趣味以上の意味はないんじゃないの。というのが所感で、それ以上の感情が生まれなかった。中盤で積んだので、評価の高さから考えて終盤なにか変わりがあるんだろうか。

 

『WILL:素晴らしき世界』 42

 

4Gamerで『街』『428』と合わせて対談が出たから、ちょっと期待しすぎたかな、申し訳ない面白くなかったです。ゲームの目指すところは『街』的なプレイヤーの想像力を増幅させるタイプの横のつながりなんだけど、それを演出するゲームデザイン・システムづくりはできていない印象。メインの恋愛系シナリオも、超人系のシナリオも、刑事系のシナリオも、「どうこれドラマチックで感動的でしょ?」という主訴のみでふた昔前のケータイ小説的な古臭さを感じる。確かに仕掛け的に面白い部分はあったけど、じゃあそれが没入感になるのというと。ねぇ?

 

【コメント】

今年のレビューはありますか?と聞かれたので頑張って書きました。文章の感じもかなり変わってしまいましたね。