まだまだ最近遊んだADVの感想 | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【まだまだ最近遊んだADVの感想】
 
グノーシア - Switch

開発:プチデポット

 

2010年代以降、人狼モチーフの作品が氾濫して新鮮味もなんもなくなっちゃったんだけど、自分の遊んだ中ではストーリー表現と人狼のツール的な表現のバランスがかなり優れた作品だった印象。ストーリー表現はイベントであって地続きなものではないけど、そのイベントとイベントをつなげるゲームプレイがしっかりと骨組みされていて、プレイヤー感覚の現在地とストーリーの深度調整がキッチリ当てはまっており人狼ごっこをするだけのソフトに留まっていないのが偉い。トークではないので結局は条件推理にしかなっていなかったり、デザイン的に後半に入るとイベント探しが主で人狼がルーチンワーク気味になるのは残念だったけど、しっかりとシステム的な狙いとドラマ的な狙いが合致した丁重な仕上がりの作品だと思う。

 

『Return of the Obra Dinn』  53

開発:ルーカス・ホープ(個人制作)

 

未解決事件の資料を辿りながら実際に起きた事象を推理するというプロットをゲームプレイへ落とし込む過程は素晴らしいけど、新出情報のページを埋めたのちのデザインは(意図的なんだろうけど)未整備が過ぎる状況で、推理するための情報へアクセスするのが死ぬほど手間で意欲減→攻略Wikiとか見ながら埋めていく姿が容易に想像できる。ワンアイデアをドラマとしては適切な量で詰め込んでいた前半の過程はよくできているだけに、後半は展開のなさを含め洗練化とドラマ両面でもう一押し欲しかったかな。

 
バディミッション BOND -Switch

『バディミッションBOND』 70

開発:コーエーテクモゲームス(ルビーパーティ) 販売:任天堂

 

明らかにつかみに失敗したまま中盤まで走っちゃってるし、ゲームデザインがテンポやインタラクティブの阻害をしている印象ではあるんだけど、バディとのコミュニケーションを重視したテキスト、今どき珍しいリッチを尊重した演出、なによりフルプライス規模のストーリーをきっちりまとめているパッケージ感が非常に優れていて、ご都合主義がすぎるのも含めて大衆向けエンタメとしてのサービス精神の高さを評価してこの点数でよろしくお願いします。DSの頃に流行ったレイトン教授文脈のカジュアル&レジャー系統の総決算という雰囲気もあり、ロケーションと紐づけたキャラの魅せ方もしっかりしていてクリア後に愛着が持てるのもテキストの丁重さがなせる業かな。SwitchのオリジナルADVでは後年代表作として語られるポテンシャルはある作品だと思いますよ。

 

CLOSED NIGHTMARE - Switch

『クローズドナイトメア』 34

販売・開発:日本一ソフトウェア

 

現代に蘇った『THE呪いのゲーム』。トータルで言えばチープさを愛すべき駄作、そんなものはパッケージ裏見た時点で誰でもわかることなわけで。こういう他社ではまず通らないであろう企画が予想通りの出来で世に出せるのも日本一ソフトウェアの味だから。

 

NG(エヌジー) -Switch

『NG』 52

販売・開発:エクスペリエンス 

 

00年代の角川ホラー文庫みたいな作品で、売れ筋には乗ってみるけどホラーの題材とはミスマッチで地に足ついてない感を愛せるかがポイント。ゲームプレイ含めて予定調和すぎてホラーとしてどうなのとは思うけど、仲間のキャラクター描写に深みを持たせようとしたり、シナリオにちゃんと盛り上がりを作ったり、前作『死印』の反省点をしっかり踏襲した結果、凡庸なものに陥っているのが自己矛盾を孕んでいる。

 

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO - Switch

『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』 75

販売・開発:MAGES.

 

 A.D.M.S.のルート開拓を肝としたデザイン性は今プレイしても楽しめると思う。とはいえシステムとしての面白さに到達するまで6~7時間は必要で、このリメイク自体あの立ち上がりの遅さをどこまで弄れるかが焦点なんだけど、やっぱり怖くて触らなかったかというのが感想。ストーリーで追うと異世界編が尻切れトンボだったり、現代編も当時のステロタイプに寄っていて倫理的に受け入れがたい部分が多い…というか蛭田→剣乃ラインなセクハラコミュニケーションは、それが男のファンタジーと割り切るにしてもちょっとキツい。ゲーム業界全体のスケールアップにより物語の受け皿以上の表現を追い求めていた90年代の時代背景もあって、フィクションの受容体としてのゲーム媒体の沸点を(尻すぼみであったとしても)A.D.M.S.という基盤で超えようとしていたYU-NOは今やり返しても偉大だというのが自分の評価。

 

Death Come True(デスカムトゥルー)

『デスカムトゥルー』 44

販売:イザナギゲームズ

 

分かりやすく言えば「やるドラ」。あえて言えば有名キャストを揃えたのが特徴だけど、結局ゲームプレイに大きな変わりはない。同一の選択肢に文脈的な意味を持たせた仕掛けとか面白かった部分はあれど、その演出にドラマとしての肉付けはできていないので猫だましどまりという印象。映画として見ても時間の省略と圧縮ができていなくて、感情移入する前に話が進んでいってしまっていて、真の狙いだと思われるインタラクティブへの融合も粗雑なままフィニッシュしている。全体的に振り切れていないソフト。

 

ライフ イズ ストレンジ 2 - PS4

『ライフイズストレンジ2』 44

開発:Dontnod Entertainment 販売:スクウェア・エニックス

 

相変わらずゆったりとしたカメラワークとゲームテンポが自分には合わないシリーズ。モラトリアムこそ据え置いたものの題材は逃避行のロードムービー路線に舵を切った今回は、社会への繋がりを切り捨てながらも着実に資源が枯渇していく流れが描かれた序盤は素直に楽しめた。んだけど、中盤から終盤にかけて主人公兄弟の自意識が社会を捻じ曲げていくような展開は最早セカイ系のそれで、狙いに対してかなりミスマッチなものを感じる。ゲームとして見て相変わらずインタラクティブがテンポに殺されていて、ストーリー以外で感想が出てこないし、深度も浅いからドライなものしか出てこないかなぁ。

 

『秋田男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』 40

開発:ハッピーミール

 

値段から考えると過剰なくらい前作よりスケールアップしてるんだけど、その結果ゲームバランス・トーク・ボリューム感どれを取っても「クドい」という感想に集約されてしまっていて、意気込みがはっきりと裏目に出た印象。FC当時のテンポでテキストを展開させる以上、ゲームプレイのシャープ化は避けて通れない部分なだけに、無意味な増量化(作り手としてはファンサービスだったんだろうけど)が「レトロゲームの現代語訳」として失敗を招いたという解釈で良いと思う。

 

TOKYO CHRONOS (PSVR専用)- PS4

『東京クロノス』 42

開発:Mydearest

 

ノベルゲームとして見れば凡庸以外のなにものでもないし、ストーリーも演出もチープすぎるんだけど、やっぱりVRありきで作られている分、演出の基準を見せたベンチテストという側面はあるわけで、そこを抜いたらどうなのよというのもわかる話。ただこれが10年代後半当時のVR表現という点以外で何か語られることがあるのかというと、まったく想像できない。

 

【PS4】Déraciné(デラシネ) Value Selection(VR専用)

『Déraciné』 60

開発:フロムソフトウェア・SIE 販売:SIE

 

いやー流石にVR+Move2本必須はハードルが高すぎるでしょう。ポイント&クリックをVRへ上手く落とし込みながらのナラティブなシナリオ構造は平均的に高いレベルでシンプルにまとめてられていて好印象。ではあるんだけど、VRという新しい媒体にチャレンジしている反面新しい表現とかそういう期待には応えられないのがジレンマで、高すぎる初期投資に対して返ってくるリターンはすべてが想定内。秀作ではあるけどね。

 

【コメント】

皆さん、そうですね。そう…バレンタインデーのチョコはもらえましたか?

『アクダマドライブ』の感想は、デスゲーム版俺たちに明日はないだったで。