EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫治療薬「タゼメトスタット」を国内承認申請 | 好奇心の扉

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エーザイ株式会社(本社:東京都文京区小石川)は7月8日、新規作用機序の抗がん剤/EZH2阻害剤「タゼメトスタット臭化水素酸塩(=一般名、開発コード:E7438)について、EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫に係る適応で、日本国内に於いて新薬の承認申請を行ったと発表しました。

「タゼメトスタット(tazemetostat)」は、米国マサチューセッツ州に本社を置くバイオ医薬品メーカーのEpizyme,Inc.(エピザイム社)が、独自の創薬プラットフォームから創製した『EZH2(Enhancer of zeste homolog 2)』を標的とするファースト・イン・クラス(画期的医薬品)の経口低分子阻害剤です。



濾胞性リンパ腫治療薬タゼメトスタット(TAZVERIK)
EZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫治療薬
EZH2阻害剤「タゼメトスタット臭化水素酸塩(一般名)」
米国FDA承認の商品名「TAZVERIKT」(承認日:2020年1月)



濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)は、非ホジキンリンパ腫の*10%~20%を占める低悪性度B細胞リンパ腫です。
濾胞性リンパ腫は一般的に進展が緩徐(かんじょ)であり、化学療法の感受性は良好とされますが、しかし、再発を繰り返す事が多く、再発した場合それまでの薬剤への反応が鈍くなるため、依然として治癒が困難な疾患で、新たな治療選択肢が求められています。

〔日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版では7~15%と記載〕
〔*日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2018年版で10%~20%と増加の記載〕



濾胞性リンパ腫のうち、7%~27%がEZH2遺伝子に、機能獲得型変異を有すると報告されている事から、国内の濾胞性リンパ腫患者のうち、約600~2400人が機能獲得型変異を有していると推定されています。


EZH2遺伝子の位置は第7染色体
EZH2遺伝子・第7染色体


EZH2(Enhancer of zeste homolog 2)は、*エピジェネティクス関連タンパク質群のうちヒストンメチル基転移酵素の一つで、ヒストンタンパクH3の27番目のリジン残基(H3K27)のメチル化を特異的に触媒することで種々の遺伝子発現をコントロールします。

EZH2遺伝子の機能獲得型変異や過剰発現、或いはEZH2抑制因子の機能不全によるH3K27のメチル化の亢進が、発がんプロセスに重要な役割を担っていると考えられています。


→*エピジェネティクス(epigenetics)とは、遺伝子機能の後天的な活性化・不活性化のための機構の一種で、DNAの塩基配列の変化を伴わずに細胞分裂後も継承される遺伝子機能の変化のしくみ、又はそれを研究する学問領域を指す。



遺伝子発現の制御につながる修飾として、DNAのメチル化や、ヒストンタンパクの修飾(メチル化、アセチル化、リン酸化等)が挙げられます。





濾胞性リンパ腫治療薬タゼメトスタット(TAZVERIK)の作用機序
濾胞性リンパ腫治療薬「タゼメトスタット(TAZVERIK)」の作用機序
H3K27のメチル化(me化)を阻害する。

「タゼメトスタット(tazemetostat/開発コード:E7438)」は、米Epizyme,Inc.(エピザイム社)が、独自創製したEZH2を標的とする画期的医薬の経口低分子阻害剤です。
本剤はEZH2を選択的に、尚且つ、S-アデノシルメチオニン(メチル基供与体)と競合的に阻害することでH3K27のメチル化を抑制し、がん関連遺伝子の発現を制御します。


タゼメトスタットの臨床試験結果

米国では2020年1月、手術不適応の成人、又は16歳以上の小児の局所進行性類上皮肉腫に係る適応で迅速承認を取得。
更に、2020年6月には、「少なくも2レジメン(薬剤の用法用量を記した治療計画)以上の前治療歴があり、FDA(米国食品医薬品局)が承認したEZH2遺伝子変異の検査で、陽性と診断された成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」、及び「他に治療手段が無い成人の再発・難治性の濾胞性リンパ腫」の適応で迅速承認を受けています。








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