ふわふわとした迷宮『ハルナガニ』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。


あぁ、この劇場だよなぁ、と感じることがあるのです。



都内を中心にいくつかの劇場に訪れる機会が多いわけですが、

作品と劇場のサイズ感がピッタリくるなぁ~と思うことがあります。

その逆もあって、この作品はあの劇場で観たかったなぁというのもたまにはあります。


三軒茶屋のシアタートラムという劇場は、そんなサイズ感をよくよく感じる場所の一つです。


薬師丸ひろ子、渡辺いっけい、菅原大吉ほか全部で5名が出演する舞台『ハルナガニ』は、

そのシアタートラムで上演されています。


一年前に妻、久里子を亡くした夫の春生は、深い悲しみの底にいた。

それは息子、亜土夢を妙に冷静に、しっかり者にさせるほどの深さだ。

二人が暮らす家に、久里子が帰ってくる。

亜土夢にはその姿が見えるが、父・母には互いの姿が見えないらしい。

本当に亡くなってしまったのは、母なのか、父なのか、それとも・・・・・・。

やがて二人を知る友人・西沢と春生の部下・三浦を加えた5人が、一室に集まりって・・・・・・。


すぐ隣にいるのに互いの存在に気づかない、そんな二人の間にいる息子は

ケンカした二人の間に入っているみたいだ。

「○○って言ってるよ」「××って言っておいて」みたいに、わざわざ伝言調にするみたいに。

そうかと思えば、二人は互いの存在に気づいているようにぶつかりあう。


リアルとあの世とのやりとりではない?

少しずつ迷宮みたいなゾーンに連れて行かれてしまう。


いわゆるスリリングな展開というのではなく、ふわふわとした迷宮。

それはシアタートラムのサイズ感ととてもリンクしていて、

両手で抱えられる分だけの人が特別に入ることになる場所のような。

(実際には220席ちょいの劇場ですから両手では抱えられませんけどね)


ただ一つだけ、サイズ感と合っていないものがありました。

渡辺いっけいさんの声の大きさ。その声量は、大劇場と呼ばれるサイズでもお釣りが来るほどの大きさだったのです。


今思えば、そのボリュームのアンバランスささえもが迷宮の仕掛けの一つだったのかなぁとも

思っています。



harunagani
このキュートすぎる色合いとイラストは北村人さん

というイラストレーターによるものだそう。



<公演日程>

2014年4月7日(月) ~ 4月27日(日)

シアタートラム


2014年5月2日(金) ~ 5月4日(日)

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ