驚愕する岩手県の違法対応― がれき広域化の根拠データの墨塗り&非開示 青木泰さんから | あんくら島田のブログ

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    ―驚愕する岩手県の違法対応―
がれき広域化の根拠データの墨塗り&非開示
         2013年4月1日  環境ジャーナリスト 青木泰


 1.概要

  がれきの広域化関連の情報を岩手県に情報開示請求(添付参照)で求めていたところ、岩手県が、調査委託業者からの受託した「報告データ」の開示を行わなかった。また開示された「広域化必要量の一覧表」については、墨塗りして(資料1:添付)提出するという前代未聞の対応があった。

  これらは、岩手県の情報公開条例に照らしても、違法な対応である。またこの「報告データ」は、調査委託業者から岩手県、そして岩手県から環境省へと報告され、環境省の「工程表」の広域化必要量の根拠となっていることが分かっている。(資料2:添付)

*注釈
(残存量)は、情報開示された中山さんの手書きです。
岩手県の表書きには、あいまいな記述になっています。
「災害廃棄物の残存量(容量)を測定し、種類ごとの発生推計量を精査結果をご報告します(別紙)1」となっています。
そこで手書きの残存量に()を付けて表しました。

環境省の「工程表」の根拠データが、情報非公開と言う違法な対応によって隠され、実測に基づく「報告データ」に基づくものでないとしたら、虚偽のデータに基づく「工程表」であり、その発表自体をすぐ取り消しする必要がある。
  現在も大阪、富山、秋田の3県他ににがれきを持ち込もうとしている岩手県。受け入れ自治体にがれきの広域化が本当に必要なのかと聞くと「岩手県が必要だといっている」と他人任せの回答が返ってきていた。そうした中で、住民自身が行った情報開示請求に対し、広域化の根拠となるデータを非公開する、つまり現在発表されている広域化必要量は、実質的な根拠を持たないことが、明らかになった。
  このままがれきの広域化を進めれば、その広域化は違法で且つ、虚偽の情報に基づき税金を投入する犯罪行為になる。被災自治体と受け入れ自治体が、この事実を知ってなおかつ広域化を進めれば、共犯行為になる。
  この問題を以下整理したい。


 2.経過

  今年1月10日 宮城県発のがれきの広域化は、今年度末(2013年3月31日)に終息が決定した。宮城県発のがれきは、昨年8月7日付けで16都府県のうち北九州市、東京都など(他2)を残して終息することを発表したが、その残っていた北九州と東京都、茨城県も終息すると1月10日には、宮城県から発表された。
  残る岩手県発も、埼玉県が、昨年12月25日で終息し、静岡県への持ち込みも1月22日静岡新聞が24年度末で終息することをスクープした。
  宮城県発、岩手県発の区別無く、がれきの広域化の予定を1年以上繰り上げて終息する理由は、がれきの再調査の結果、がれき量が大幅に削減されたということである。
  そこで筆者は、1月24日岩手県庁を訪ね、環境生活部廃棄物特別室に取材し、岩手県発の静岡県へのがれきが終息することの確認を取ると共に、がれきの調査をどこの事業者に業務委託しているかを聞き、「応用地質(株)」が調査していたことを確認した。
  一方岩手県発のがれきの広域化量が、静岡県、埼玉県で数ヶ月の間に1/7と1/10に下方修正される中で、岩手県が、他の自治体に広域化する分の再調査を行うつもりがないのか?見直しを行わないのか?を問うた。
  担当者は、被災県としての主体性を投げ出すように環境省と相談して決めると答え、実態を明らかにすることを拒み、現在調査中と話した。そこで岩手県で情報開示請求を行ってもらうことを市民団体に依頼し、県庁所在地の盛岡の「子どもたちの放射線被ばく低減化を推進する盛岡の会」世話人の中山一絵さんが情報開示してくれることになった。(「子どもたちの放射線被ばく低減化を推進する盛岡の会」の皆さんは、筆者の取材に同席していた。)
  中山氏は1月31日に情報開示請求を行い、「行政文書部分開示決定通知書」(資料3:添付)


が3月18日付で発送されてきた。請求内容10項目に対し、約200点の情報が開示(ごく一部非開示)と示されていたが、中山氏と3月20日相談し、中山氏が開示決定に基づき、21日に県庁の担当部署を訪れ書類を受け取った。
  開示された契約書他から分かった「応用地質(株)」の契約上の役割を踏まえ、今回の岩手県の非開示対応の意味を以下探ってゆく。


 3.明らかになった「応用地質(株)」の役割と疑問点

 1)開示された契約から見た「応用地質(株)」の役割
  岩手県は、「応用地質(株)」と2011年度、2012年度の両年度にわたり「岩手県災害等廃棄物処理事業に係わる施工監理業務委託」契約を結んでいた。開示された契約書を見ると、「応用地質(株)」が委託された「(施工監理業務)」として「岩手県災害廃棄物詳細計画の評価及び改訂」の業務がまず明記されていた。
  この「岩手県災害廃棄物詳細計画」は、岩手県のがれきの処理の方針を記載した詳細計画であり、2011年8月の発行のものとそれを改訂した2012年5月発行のものがある。「応用地質(株)」は、この「詳細計画」の作成に携わっていたことになる。
  また契約書に添付されている「岩手県災害等廃棄物処理事業に係わる監理者の役割」を見ると次の点も記載されていた。
【仮置場(一次、二次)】「搬入量及び搬出量の数量管理」
【数量管理】災害廃棄物処理に係わる数量管理(処理量の把握・整理・報告)
  要するにがれきの種別ごとの量や総量の測定や、県内での処理可能量、そして広域化必要量の作成に係わっていたことがわかる。
  震災直後から岩手県は、「応用地質(株)」との契約を結び、「応用地質(株)」は、がれき量や県内処理可能量、そして広域化必要量をそれぞれ測定・計算し岩手県に報告することになっていた。岩手県は、これをさらに環境省に報告していたことも分かった。環境省の「工程表」等で発表された公式データの出所は、「応用地質(株)」からの報告だったことが分かった。

 2) 報告データの大幅な修正は、同一測定事業者が行っていた!!
  これまで環境省のがれきの広域化必要量が、何度も下方修正されてきたことはこれまでも筆者は報告してきた。しかもその下方修正量は、5分の1や10分の1にも及び、再測定した値から言えば、最初に計った測定データは、殆ど「くず」に等しいデータであったことが分かっている。そして今回その環境省のデータが、岩手県が業務委託し、測定を年間契約で請け負っていた同一の測定事業者(「=応用地質(株)」)による測定データを根拠にしていたことが分かった。
  もしこの建前通りに「応用地質(株)」が岩手県に報告したデータ内容が、そのまま環境省の発表データになっていたとすると、専門の「測定業者」が、自ら測定した測定値を、測定のたびに5倍も10倍も間違っていたことになる。
  このようなことが実際起きるのであろうか?
  環境省が発表した「災害廃棄物推進量の見直し及びこれを踏まえた広域処理の推進について」(H24年5月21日)と「工程表」(H24年8月7日)そして埼玉県、静岡県の終息に際して岩手県が測定し発表したデータがどのように下方修正されてきたのかを振り返ってみる。

  具体的には、下記の表1にみるように
  A:環境省の「災害廃棄物推進量の見直し及びこれを踏まえた広域処理の推進について」(H24年5月21日)に示されたデータと
  B:「工程表」(H24年8月7日)で示されたデータとは大きく違っていた。

  岩手県野田村から埼玉県に運ぶ予定量で言うと下記表に見るように昨年のAの段階(5月21日)では、約5万トンだったものが、Bの段階(8月7日)では、約1万トンに減っている。そして最終的には、再調査して(12月25日)約千トンになっている。
  山田町と大槌町から運ぶ静岡県の場合は、A段階では、約7.7万トンだったものが、約2.35万トンになり、今年1月の再調査の結果3500トンになっている。
  本格的な受け入れ契約から言うと埼玉県で10分の1に、静岡県で7分の1に減り、元々のAの段階での発表から言うとそれぞれ50分の1、約20分の1になっている。
  これらが同じ測定事業者が測定していたというのである。これはもうミスで釈明できるレベルの問題ではない。

表1
被災自治体 受け入れ先 受け入れ予定量(トン) (縮小率)  終息時点(トン)                                                (A)   (B) 
   山田町  → 富山市  :5万 → 1万   (5分の1)
   宮古地区 → 大阪市  :18万→ 3.6万 (約6分の1)
○山田町・大槌町→静岡県 :7.7万→ 2.35万 (約3分の1)→ 3500(7分の1)
○野田村 →   埼玉県 : 5万 → 1万  (5分の1)  → 1065(10分の1)

 同一事業者が測定していたデータが、これだけ間違っていれば、その測定業者は「プロの看板」を下ろさなければならないような事態である。
 では事実はどうだったのか。
  そこで「応用地質(株)」が、岩手県に対して報告した「測定データ」を中山氏に情報開示請求していただいた。
  ところが、1月31日から条例で定められている開示決定期間を過ぎてもこの件で開示は行われなかった。岩手県は県として業務委託して、測定データを成果物として提出させることを契約しながら、その測定データの提出を拒んだのである。情報開示請求に対し「不作為」の開示拒否と言える。
  岩手県が、「応用地質(株)」のデータをそのまま環境省に報告し、環境省がそれをそのまま発表しているなら、拒否することはない。
  一方事業者「応用地質(株)」の報告が、岩手県、環境省と報告される途中で手を加え、改ざんされ、虚偽のデータが発表されていた可能性が疑われてきた。
  その場合、広域化必要量は、虚偽のデータになり、広域化の必要性は、法令的にもかき消されることになる。
(資料4:住民監査請求書) 
http://ameblo.jp/ankurashimada/entry-11504572454.html

(資料5:岩手日報住民監査請求報道)


4.仰天開示内容―墨塗りの意味は?

 今回の中山氏への情報開示決定通知すら条例違反である。1月31日に請求が行われ、開示期限だった2月15日には返事を寄越さず、開示決定通知があったのは、3月18日だった。請求から48日も経過していた。
  岩手県の情報開示条例では、情報開示の請求があった時には、例外事項を除き開示しなければならないことが明示され(第7条)、「開示決定等の期限」として、開示請求があった日から起算して15日以内に開示決定を行う必要があり、「事務処理上の困難その他の正当な理由があるときは」「30日以内に限り延長できる」とある。しかも延長にあたっては、その理由を記載したものを文書で請求人に送る必要がある。どれも行われていなかった。(15日以内が2月の14日であり、30日延長した時、3月16日になる。)
 そして条例上の規定すら守らず、情報開示した内容は次のようにひどい内容だった。行政が持つ情報は、市民が知ることは市民の正当な権利である。その市民の知る権利に背を向け、情報を隠す国は、先進国の資格すらない。

1) 岩手県のがれき広域化必要量「一覧表」黒塗りで開示(添付参照)
情報開示請求を行った経験のある人ならば、開示された契約書などの場合、契約印の印影を隠すためにその部分を墨塗りして隠したり、契約者自体の名前を隠すということはママにある。
  しかし一覧表に示しているのは、縦軸「受け入れ自治体名(都道府県&市町村)」、横軸「被災市町村」名を記載し、その交わるヵ所にがれき量の数値を示すという簡単な一覧表である。
  横軸には市町村名に加え、「当初計画(H24年4月)」「実績」「残り」「最新計画」「備考」と示されている。
  きわめてまっとうな表の作成の仕方である。
  それぞれの欄に記載したデ数値データを隠す必要はないし、その正当な理由はない。
  ところが岩手県の担当部署は、この情報を隠して請求者の中山氏に提出した。中山氏が、3月21日の午前中に情報開示の受け取りに県庁を訪れ、この墨塗りの理由を尋ねたところ、窓口担当者が分からず、昼休みを挟んで約2時間待たされた上での答えは「分からない」と言うことだったという。
  前代未聞のデータ隠しである。

2) 何を隠そうとしたか?
 この一覧表については、作成年月日が示されていないが、「最新計画H24年12~」と言う記載があり、昨年12月以降に作成されたデータと言える。又情報開示請求が1月31日に行なわれ、3月18日に開示決定がされていることから言って、岩手県が持っている最新データと言うことができる。
 同時期に岩手県が環境省に報告している報告データが「廃 655号(H25年1月24日)」(資料3)としてあり、ここには、災害廃棄物の残存(容量)量から発生推計量を別表1として記載し、「広域化処理を必要とする量(重量)」が別表2に記載されている。そして岩手県から環境省に報告されたこのデータに基づき、環境省の「東日本大震災に係わる災害廃棄物の処理工程表」(=「工程表」(改定H25年1月25日)が、作成されている。ところがここで示された数値が、「一覧表」で示された数値と合致しないのである。岩手県は、「一覧表」とは違うデータを環境省に送っていたのである。これでは環境省発表の工程表は、発表情報の根拠を失うことになる。そこで「一覧表」を墨塗りして、環境省及び岩手県の立場=面子の維持を図ろうとした。そのあたりが本音なのであろう。


5.まとめ

  状況としてがれきの広域化が昨年末から次々と終息に至る動きを見せた。宮城県発、岩手県発を問わず終息の理由は、がれき量の再調査の結果がれき量が大幅に削減されたということであった。
  少なくとも昨年4月には、がれきの大半は市町村管理の1次仮置き場から2次仮置き場に移動を終えたという発表が環境省からあった。その時点でがれきの量のほぼ正確な測定は出来ていたはずである。
  従ってその後のがれき量の測定の結果、数値が5分の1にも、10分の1にもなるということは、考えられない。
  そこで再測定や元々の測定をどこの測定業者が行ったのかを調べていたところ、何と岩手県が年間契約で業務委託した同一の測定業者(=「応用地質(株)」)が測定していたことが分かった。
  しかも環境省の発表データは、岩手県から報告されたものをそのまま発表していたことも分かった。
  環境省の発表データは、何度も下方修正し、当初発表からすると10分の1や20分の1、50分の1という酷い発表内容になっていた。本来なら昨年8月の工程表の発表時点で、がれきの広域化は幕引きをすべきだったが、国の権威(と金の力)の下、ほころびにツギ当ててきたと言える。
  絆キャンペーンの下大型予算枠を取った手前、簡単に収束する訳に行かないと判断したのであろう。
  しかし今回、その測定業者である「応用地質(株)」からどのような報告が上がっていたのかの情報開示をしたが、それには、YESともNOとも答えず、法定期限が来ても開示せず逃げている。
  これは不作為の拒否対応と言える。また「一覧表」は、環境省への報告データとも異なり、矛盾が噴出するので、墨塗りして提出した。これらは法律違反であるばかりか、虚偽公文書偽造は刑事罰の対象になる操作である。
  がれきの広域化に旗を振り、交付金100%の予算を付けてきたのは、環境省であるが、形の上では、被災自治体と受け入れ自治体の自由な協定、契約に基づく、事業として進められている。従ってがれきの広域化の根拠データが、情報開示されない中で広域化を進めることは、被災自治体の犯罪行為に受け入れ自治体も加担するということになる。
  がれきの広域化は、がれきの引き受けが被災地の復興を救うというキャンペーンの下に進められてきた。被災地自治体が処理できることは行い、それでも処理できない分を引き受けるということが建前として進められてきた。実態はその処理実態すら隠すという驚くべき状態にある。

追)
「子どもたちの放射線被ばく低減化を推進する盛岡の会」世話人の中山一絵さん、舘澤みゆきさんには、情報開示請求、住民監査請求、記者会見と大変お世話になりました。4月2日中山さんはこの件で情報非開示に異議を申立て、記者会見をする予定です。皆様ご注目ください。


資料1:広域化必要量の一覧表(岩手県情報開示資料)http://yahoo.jp/box/FpWe4l

資料2:岩手県から環境省への報告書(2013年1月24日 廃655号)      http://yahoo.jp/box/7IjCv6

資料3:行政文書部分開示決定通知書(2013年3月18日)

資料4:住民監査請求書(2013年3月22日) 
http://ameblo.jp/ankurashimada/entry-11504572454.html

資料5:岩手日報 住民監査請求報道(2013年3月23日)



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