短編 17.弟みたいなキミにときめくなんてありえない | 「蒼い月の本棚」~小説とハムスター(ハムちゃん日記はお休み中)~

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趣味で小説を書いています。絵を描いたり写真を撮ったり、工作をしたり書道をしたり、趣味たくさんです。古典で人生変わりました。戦国時代&お城好き。百人一首とにかく好き。2016年、夢叶って小説家デビューできました。のんびり更新ですが、どうぞよろしくお願いします。


第1話はこちら↓




私の心臓がドキンと跳ねた。見たことのないサトシの姿に鼓動が速くなる。
「どう…したいの」
質問に質問を返すのは卑怯だけれど、私はこんな状況でも、主導権を握ろうと必死だった。そうでもしないと、この得体の知れない感情の渦に飲み込まれてしまいそうだから。私が聞き返すと、サトシは声に出さずに口をパクパクさせた。聞こえない、何て言ったんだろう。私が首を傾げると、サトシは表情を固くして
「いいんだ、なんでもない」
と言って私からスッと離れた。びくともしなかったサトシの腕が、真夏の雪みたいに呆気なく溶けてしまった。立ち尽くす私に、サトシは着ていたシャツを脱ぎ、肩にかけてくれた。
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ポケットの中で、携帯が大きく震えている。取り出して画面を見ると「ファーストステージクリア」と表示されていた。



「やったぞ、クリアだ!」

サトシが、私の携帯を覗き込んで言った。

「よかった。ハルには全然効かないと思ったんだけど、いろいろ試してみてホントよかった。ねえ、何が一番ときめいた?教えてよ、次のステージでもそれを繰り出すから!」

…え?それってどう言う意味?
もしかして、今までのは全部、ゲームをクリアするために、意図的にやったことなの?

ちょっとでもサトシに揺らいだ心が恨めしい。無邪気に笑うサトシを見ると、無性に腹がたった。
「あんたって…最低」
私は、サトシのシャツを地面に叩きつけると、その場から走り去った。




つづく