誤報のシステム | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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先日、講談社の現代ビジネスに当blogの第1回目の記事を引用させてほしいという打診があり、許可を出しました。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47847
この段階で、現代ビジネスがTwitterの告知に使った見出しは
エンタメの未来が危ない! 作家・有川浩が決意の緊急提言「新刊本を買う意味」
となっております。

ところが、これをYahoo!ニュースが引用した時点で、Twitterの告知に使った見出しは
【新刊本を買って 有川浩の提言】「お金を出して新刊を買わないと、好きな作家の次の本が出ない」と意識したら買ってくれるお客さんはいる。作家・有川浩の提言。
と変更されました。

更にこのYahoo!ニュースをまとめサイト?という媒体が引用した段階で、Twitter告知の見出しは
ベストセラー作家、有川浩「新刊を買ってください 中古や図書館で読んでも作家にお金は行きません」
と更なるねじれが発生しました。

私は当blogでも『図書館と本の売上げの関係』で書いたように、中古書店も図書館も否定しておりません。
現代ビジネスに引用許可したblogも、
「新刊を購入していただくことは未来の投資に繋がる、エンタメの未来を閉ざさないための投資にご理解をお願いします」
「いつも本を買ってくださっているお客様はありがとうございます」
という趣旨であり、その文面の中に図書館や中古書店の利用を否定する文言は一切入っていません。
しかし、私がそのような主張を行っていると誤解され、そのことを非難する方が一部発生しました。

Yahoo!ニュースが「よりアクセス数を稼げるようなキャッチーな見出し」を求めた結果、
「新刊本を買う意味」が「新刊本を買って」に歪曲され、
「新刊本を買って」が更に「図書館・中古書店否定」に歪曲されたという次第ではないかと思います。

A「新刊本を買う意味」
B「新刊本を買って」
ではニュアンスが変わります。
もちろんAにBが内包されてはいますが、それが全てではありません。
私は「新刊書店で本を買う」という行為の中に「未来への投資」という意味があることを出版業界がお客様にお知らせしてこなかったことの反省として、その事実をお伝えし、
更に投資への感謝も業界が怠ってきたことの反省として、感謝をお伝えしました。
その上で、「未来への投資」という意味に価値を見出してくださる方、書店を愛してくださる方、本を愛してくださる方に向けて、一作家として
「可能な範囲で新刊書店のご利用をご検討ください」という投げかけをした、というお話です。
(もちろん、こちらが価値を認めていただける商品を出す努力をすることは大前提です)

しかし、「新刊本を買って」という乱暴な見出しによって、
「新刊本を買え」→「中古や図書館を利用するなということか?」という理論のねじれが発生したものだと思います。
同じ文章を読んでも、見出しによって受け取る側には予断が入ります。
Yahoo!ニュースに私の発信の意図を歪める意図があったかどうかはここでは問いませんが、この見出しが読者の予断を誘う乱暴な見出しであったことは否定できないと思います。

誤報という現象は、こういった些細なことによるのだろうな、と思います。
図らずも誤報のシステムを自分で体験したという意味では、たいへん興味深い出来事でした。

ただ、Yahoo!ニュースのような影響力の大きいところに引用されるのであれば、当方の趣旨と違う受け止め方をされて無用な反発を招いてしまう形ではなく、出版業界・エンタメ業界の未来を考えていただくきっかけとしての前向きな発信となってほしかったです。
そのことが本当に残念です。
この発信については誤解されるがままに放っておくわけにはいかないと、自分で記事の引用を検索し、誤解しておられる方にこまめにお声がけをしておりましたが、焼け石に水程度の効果でしかなかっただろうと思います……

ちなみに、Yahoo!ニュースの後で引用・転載をしライブドアニュースは、Twitterの告知見出しが
【本を読もう】「図書館戦争」有川浩氏が語る、新刊本を買う意味
となっており、更に
ベストセラー作家の売り上げで、新人作家の本を出すことができる。本を一冊買うのは、未来の本への投資でもあるのだという。 
という、元記事の趣旨の誤解を防ぐ補足説明がついています。

たいへん丁寧な処置に心から感謝しております。


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