報道媒体としてのインターネット(※追記あり) | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

あくまで一作家の一意見であることをご了承ください。
お問い合わせは、角川・幻冬舎・講談社各窓口へ。
Twitterアカウントはhttps://twitter.com/arikawahiro0609
悪意ある無断リンク・無断引用、ネットニュース等報道の無断引用は固くお断り致します。

※長文読むのめんどくさい!という方用。要するにこういうことです。
https://twitter.com/arikawahiro0609/status/720199417144299521
https://twitter.com/arikawahiro0609/status/720199499348508673
https://twitter.com/arikawahiro0609/status/720199625089556480
おまけ
https://twitter.com/arikawahiro0609/status/720472991423991808

TBSドラマ『重版出来!』、昨日が第一回放送でしたね。
脚本が野木亜紀子さん、監督が土井裕泰さん、プロデューサーが那須田淳さん、編成に磯山晶さんなど、『図書館戦争』や『空飛ぶ広報室』でお世話になった方々の強力なチームで制作されているこのドラマ、題材の興味深さもあって初回から注目し、少しでも応援になればとTwitterでコメントを発信しておりました。

ですが、そのコメントが、無断でこちらのネットニュースに引用されました。
http://news.ameba.jp/20160413-62/
(リンクは敢えて張っておりません)

実はこうしたことはTwitterを始めてから何度かありました。
blogやTwitterで発信したことをネットニュースで引用されたり、ニュースソースとして使われるようなことです。
度重なって見過ごせなくなってまいりましたので、blogとTwitterの注意書きを改めました。
(上記ニュースについては、今後は無断引用を慎んで頂きたい旨を出版社から正式に申し入れ致します。アメーバブログは利用させていただいておりますが、利用の登録に当たり、あなたが著名人である場合Twitterの発言をニュースサイトに無断引用してもいいかという質問項目はありませんでしたし、その項目があれば「いいえ」と答えます)

blogとTwitterは、あくまで個人利用の範疇で責任を取れることしか発信しておらず、それをニュースの素材にされても、責任を負うことはできません。
ですから、たとえポジティブな発言であっても、無断で引用することは固くお断り致します。

TVも新聞も雑誌も、ニュースソースとしての作家のコメントが必要な場合は、取材をするかコメントの利用許諾を求めます(以前、ネット上で発表した意見がTVで取り上げられた際も、出版社経由で利用許諾についての問い合わせが来ました)。
インターネットだけがそれを省いて著名人の私的発言を無断引用してニュースにしてもいい、というのは、報道媒体としての信用性を自ら貶めることにしかなりません。

また、「引用」に許可は必要ない、というご意見に対しては、ネット上の発言は、出版物や電波に載ったものと違って、いつでも削除・改訂・改竄が可能なものである、ということを指摘させて頂きます。
出版物や録画記録が残った「加工が不可能な発言」と同列に扱えるものではありません。
(素材の恣意的な編集については、また別の話になるのでここでは論じません)
引用した発言の内容がころころ変わるということも、ネット上ではあり得るのです。
それはネットニュースが誠実な意図・社会的使命感によって書かれたものであればあるほど、致命傷となります。

例えば、私がニュースの素材にされた後に、発言を削除したらどうなりますか?
スクリーンショットを撮って発言の根拠としますか?
そのスクリーンショットが捏造でないという証拠はどう提示しますか?
スクリーンショットが捏造でないと証明できたとしましょう、Twitterで発信し、この文章を書いている私が間違いなく「有川浩」本人であるという証明は、誰ができますか?
プロバイダー契約した会社にまで当たらないと、「この文章を書いている私」の本人証明さえできないのです。
いえ、プロバイダーの個人情報が確認できたとしても、私は本名を開示していませんから、「有川浩」の本人証明にはなりません。
更には、プロバイダー契約者が「有川浩」本人だと証明できたとしても、blogやTwitterの執筆者が「有川浩」である証明は誰ができますか?
有志のスタッフや友人が代理もしくは持ち回りで発信していないと誰が証明できますか?
ネット上では、究極的には、真偽を証明できないのです。

私がTwitterを始めた当初、「本当にご本人ですか?」と尋ねてこられた方が少なからずおられました。
私は、「私の発信を見て、ご自身でご判断ください」とお答えしました。
インターネット上で、本人証明をすることはできないからです。
私が「はい」と答えたところで、何の保証になるでしょうか?
企業の公式アカウントなら、実在する会社に問い合わせれば証明ができるでしょう。
しかし、私は、個人です。
連絡先は、当然公開していません。
一般のインターネットを利用している個人の皆さんと同じように。
私の言動を非常によく研究したなりすましでないとは、誰も証明できません。
上記のニュースを書いた方は、Twitterの私が本人であることを、どう証明しますか?
私本人ですら、ネット上で私が私であると証明はできないのに?
そして、そんなあやふやな場所での発言をニュースに仕立てることについて、読者にどのようなご説明をなさいますか?
「多分有川浩本人だと思います、だからこのニュースを信用してください」ですか?
そんなことでは、ネットニュースは捏造し放題です。
既に捏造で小銭稼ぎをしているネット媒体があるのに、更にインターネットの信用性を失わせるのですか?

インターネットというものは、基本的に「信用」の世界だと思います。
そして、保証(同時に保障)というものがない恐い世界でもあります。
誰も真偽は証明してくれず、自分の目で見て、考えて、判断するしかないのです。
たとえ真実が証明されたような気がしても、それはあくまで状況証拠でしかありません。
そしてまた、信用を獲得するためには、誠実な言葉を積み重ねていくしかないのです。
射程が延びても言葉は言葉。人は人。
その言葉の中に真実があるかどうかは各自の目で判断するしかなく、自分の信用もまた、自分の言葉で獲得していくしかないのです。
(度重なるサイゾーの誹謗中傷も、信用と信用の戦いだと心得ております。私は誹謗中傷について「否定」を表明することしかできず、それが信用されるかどうかは、私自身の言動にかかっています。私は完全無欠な人間ではなく、清廉潔白な人間ではありません。間違いも犯すし、揚げ足を取られることも多々あります。だから、私とサイゾーのライターと、どちらが「人間としてより信用できるか」ということに第三者の判断を委ねるしかないのです。ですから私は、自分が清廉潔白であるとは申し上げません。それは虚偽になるからです)

私は、インターネットというツールの将来性と有用性を信じています。
だからこそ、「ネット上の有川浩」などという証明不可能なものをニュースの素材として引用されることを拒否します。
ネット上での私の発言を本物だと証明するためには、作家としての窓口である出版社に発言の引用許諾を取るしかありません。
出版社経由で許可を出した発言だけが、「ネット上で報道素材としての本人証明が成立した」私の発言です。
それまでは、blogの発言もTwitterの発言も、「有川浩と覚しき」人物の発言でしかありません。

個人対個人であれば、「信用」が成立すれば、関係性は成り立ちます。
ですから、読者さんと私の関係は、読者さんが私の発信を自分の目で見て判断し、本人だと信用してくださった時点で、個人的な「信用」を担保としたある程度までは成立します。
しかし、「報道」は、「ニュース」はそれではいけません。
本人の発言を使いたいなら、本人の発言であるという裏取りをせねばならないのです。
ネットで楽にインパクトのある「著名人と覚しき人の発言」を拾い集めて記事に仕立てようとする限り、ネットニュースは決して一次情報にはなれないのです。
ネット上の発言を根拠とした記事は、その発言を発信者が削除するだけで、記事そのものが「捏造」の疑惑をかけられることもあり得ます。
ネットニュースサイトの中の方は、その危険性を考えたことはおありですか?

冒頭にも書きましたが、私がTwitterを始めてから、企業が運営する大手とされるネットニュースサイトに発言が引用されたことは何度かありました。
しかし、残念ながら、どのサイトも、私のTwitterの発言について窓口である出版社を当たり、本人確認をし、引用許諾を取ってくださったことはありませんでした。
ネットニュースを運営している皆さんに問います。
ご自分の媒体を、新聞や雑誌、TVのように、社会的に一定の信用がある媒体と並び立てる報道媒体に育てますか?
それとも、所詮はネットと軽んじられ、もし真実を訴えたとしても信用されない媒体に貶めますか?

今どき新聞や雑誌、TVも当てにならない、と思われるかもしれません。
しかし、それでもそれらの媒体は、誤報や捏造が発生した場合は、社会的責任を問える位置にあります。
それだけで信用性があるのです。
インターネットは、一般市民が「社会の公器」としてのマスコミの正当性を監視できるツールでもあります。
その有用性は、市民にとって計り知れません。
だからこそ、信用性を育ててほしいのです。
もし、公器たるマスコミが道を踏み外した場合、市民がそれを指摘できるように。
市民が公器の不当性を訴えたときに、「所詮ネット住民の言うことでしょ」と一蹴されないために。

インターネットは現代、信用性を永遠に失うかどうかの岐路に立たされていると思います。
どこが分水嶺になるかは分かりません。
分かっていることは、今のまま無軌道なネット報道を続けていたら、信用なき匿名者の言葉の痰壺になってしまうということだけです。
あそこが分水嶺だった、と後の世から糾弾されることがないように、今、ネット上の報道のあり方を考えていただきたいと思います。

インターネットの使い方は人それぞれです。ルールとマナーは守られるべきですが、そこにどの程度まで自分を仮託するかは、個人の自由です。
中には、100%仮託します、という方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、私は、個人の信用のみで成立しているインターネット上の発言を、どのような媒体であれ許諾なしに「有川浩」の報道素材として利用されることは、固くお断りします。

有川浩と覚しき人物より。
 
追記(2020/12/17)
報道媒体の雑なSNS引用にはこたつ記事という名前がついたようですが、従来メディアが品下ってこたつ記事化するとはこのblog書いた時点では思いませんでしたなー。
記事中、コロナ禍のせいで取材ができずついつい的なコメントありますが、従来メディアがコタツ記事化したのはコロナ禍より前からのような記憶があります。何でもコロナのせいにしたらあかん。
 

 

 
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